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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
10章:『虹霓鏡宮の呪界』

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632:コントラクト-2

「すげぇ……すげぇけど、霧がヤバい……」

「こんな場所が……あったのか……」

「凄くいい匂いがするな……」

「おおっ、凄いな。豪華なのに調和が取れていて……」

「ラスダンだ。此処完全にラスダンだよ……」

 『虹霓鏡宮の呪界』に入ったプレイヤーたちは誰も彼もが呆然としていた。

 まあ、その気持ちは分からなくもない。

 豪華な東屋、火酒果香の葡萄呪と千支万香の灌木呪が醸し出す香り、これらが組み合わされば、この世ならざる光景の一つや二つは簡単に生じる。

 そこに呪詛の霧と危険な黒い土が組み合わされば……微かに聞こえて来たラスダンと言う評価も間違ってはいないだろう。


「何時か私もこんなダンジョンを持てるようになるのかな?」

「持てるよ。クカタチなら」

「グハァッ! 空気中の糖度が急に!?」

「この土、間違って触れたら死ぬじゃ済まなさそうだな」

「ああ、なんか空気が甘ったるい……いや、マジで甘くなってるな」

 さて、千支万香の灌木呪の力なのか、周囲の空気が本当に甘くなっているが、それは気にしないでおこう。

 ツッコミを入れたら面白くない。


「あ、もう一度言うけど、周囲のものには手を出さない方がいいわよ。この二つの植物、鑑定でレベル50と表示させるだけの力はあるから」

「レベル50……戦ってみたくはあるが、流石に危険すぎるか」

「と、表示させるって辺りに含みがありますね……」

「つまり本当のレベルはそれ以上の可能性も……」

「こわっ!? 呪限無こわっ!?」

 と言う訳で、私たちはタイルが敷き詰められた道を進んでいき、眼宮と称される場所へと向かって行く。

 なお、流石のブラクロもこの場で好き勝手するのは危険だと分かっているらしく、普段とは比べ物にならない程に慎重……と言うか、戦闘時に集中しているのと同じような状態になっている。

 それを見てか、他のプレイヤーたちも慎重になっている。


「さて着いたわね」

 やがて辿り着いたのは鏡のように正面の光景を映している深緑色の円。


「この鏡の扉を超えた先からは敵対的なカースが出現するけれど、その前に幾つか話しておくことがあるわ」

「「「……」」」

 では、幾つか話をするとしよう。


「まず、此処『虹霓鏡宮の呪界』は私の邪眼術の取得状況に応じて敵対的なカースが出現するエリアが解放されていくわ。今現在解放されているのは四つ。毒、灼熱、気絶、恐怖に対応するエリアよ。で、この深緑色の円の先には『毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』に対応するエリアが広がっているわ」

「他のエリアに行くためにはこの回廊を進んで、別の扉に入ればいいのですか? タル様」

「ええそうよ。ただ、私もまだここ以外の場所には踏み込んだことがないから、何が出現するかの予想は出来ても、実際にどうなっているかは分からないわ」

 一つ目は『虹霓鏡宮の呪界』の解放状況について。

 まあ、次のエリアが欲しければどうすればいいかを示すものでもある。

 ちなみに私自身、毒のエリアがほぼ未探索である事は言わないでおく。


「で、正直に言わせてもらうけど、ほぼ間違いなくこの先、毒のエリアが難易度としては一番低いわ」

「根拠はあるのか?」

「この先に出現するのは、開くために必要な邪眼術を習得した時に戦った竜呪と考えていいのよ。だから恐怖は多頭竜、気絶は虎ティラノ、灼熱は牛ドラゴン……超大型カースよりも大きい上に遅延戦闘に特化したドラゴンが出現する可能性が高いわ。それらとの戦闘は、竜呪と言う存在の強大さが分かっていない内に挑むのはほぼ自殺行為と言っていいわ」

「虎ティラノ……あいつは確かにひどかったな……。それに比べたら、まあ、鼠毒の竜呪の方が圧倒的に戦いやすいな」

「昨日ゲストで呼ばれて戦いましたけど、牛ドラゴンは酷かったですよ。相手の行動次第ですけど、一撃でこの集まりが壊滅するかも」

 二つ目は出現する敵について。

 私の言葉、イベントで公開された動画、実際に戦った私以外のプレイヤーの感想もあって、毒エリアに挑む事には納得してもらえたようだった。


「と言う訳で、この深緑色の円の先に進むわけだけど……この鏡の扉を抜ける際には、対応する私の邪眼術が目一つ分、照射されるわ。此処の場合は『毒の邪眼(タルウィベーノ)・3(プレイグ)』ね」

「つまり対策必須と言う事ですね」

「そういう事。呪術のチャージが強制キャンセルされることや、入った直後にやってくるカースを倒さないと脱出も出来ないと言う問題もあるけど、まず第一に問題になるのが邪眼術の強制照射よ」

 三つ目は鏡の扉の仕掛けについて。

 と言う訳で、私は『毒の邪眼・3』の性能をおおよそ……呪詛濃度に依存する事と、毒を治さないでいるとダメージの度に出血、灼熱、沈黙のいずれかが入る事を伝えておく。


「こういう事だったら私の出番ですね。回数制の状態異常無効化を付与する呪術がありますから、これを掛ければ最初のは防げると思います」

「おおっ」

「流石シロホワね」

「二回目以降は……まあ、一度目の探索で得た素材で対抗装備やアイテムを作ればいいか」

「そうだな。撃たれる状況が確定してるなら、制作難易度はそれだけ下げられると思う」

 どうやら問題なさそうだ。

 そんなわけでシロホワが私たち全員に一回だけ状態異常を無効化する状態を付与する呪術を使用する。

 ちなみにこの呪術、範囲対象なので、範囲内に詰め込めれば百人同時であってもかけられるらしい。

 実に便利な呪術である。


「準備は良さそうね。それじゃあ出発しましょうか」

「「「おうっ!」」」

 そうして私たちは深緑色の円の先へと進んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] > 632:コントラクト-2 文字通りラスダンや裏ダンジョン。そして千支万香の灌木呪も甘くなるラブコメ。砂糖吐いたのかあら〜なのかは不明。
[一言] >「何時か私もこんなダンジョンを持てるようになるのかな?」 >「持てるよ。クカタチなら」 たしかに台詞だけ見ると甘酸っぱいけど、場所が場所だけに「魔王候補生の会話」に見えて仕方ない……w …
[一言] ≫「ラスダンだ。此処完全にラスダンだよ……」 高異形度のプレイヤーの数だけ同じくらいの格のダンジョンが出来る可能性はあったり? 乱立するラスダン
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