629:タルウィスコド・3-7
「くくっ、辛勝。と言ったところか。『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル、『揺湯の不老不死呪』クカタチ」
「……。否定は出来ないわね」
「本当にギリギリだったー」
『悪創の偽神呪』が戦闘の評価をしつつ現れる。
まあ、辛勝、ギリギリだったと言う評価については同意する他ない。
最後の攻撃を防げなければ私は吹き飛んでいて試練は失敗、攻撃を防げたのも私の独力ではなくクカタチの助力があってこそのもの。
流石にこれで完勝でしたと誇れるような頭は持っていない。
「では、試練はこれで終了だ。『揺湯の不老不死呪』クカタチ、私から貴様への報酬については、この空間から元の世界に戻ったら届けよう。添付した説明書をよく読んでから、実体化させるようにな」
「分かりました、ありがとうございまーす!」
クカタチの報酬か。
マントデアの時と同じなら、牛ドラゴンの素材の良質版だろう。
「『揺湯の不老不死呪』クカタチ、私は今回最も活躍したものをお前と裁定する。故にこれを授けよう。今後も励むように」
「えっ? あっ、はい! ありがとうございます!」
そして仮称裁定の偽神呪から追加報酬、と。
私の時と同じなら、称号が変わったのだろう。
マントデアの時になかったのは……仮称裁定の偽神呪が居なかっただけで、他意はないか。
「どうなったの?」
「えーと、『揺湯の不老不死呪』が『揺湯渦の不老不死呪』になったみたいです」
「へぇ、そうなの」
クカタチ曰く効果はほぼ変わらず。
それにしても、仮称裁定の偽神呪とクカタチの仲の良さ、それに揺湯の読みが『ようとう』であり、『妖刀』に通じる事。
普段一緒に行動しているであろう相手がマナブ、スクナと刃物を扱う事に長けた面子である事。
今回の戦闘中に見せた多彩な変身能力。
これらを合わせて考えると……仮称裁定の偽神呪から、妖刀に変身して他のプレイヤーに使わせる禁忌の呪術とか貰っていてもおかしくはなさそうか。
何処かで試してみたいものである。
なお、クカタチが牛ドラゴンの肉を齧った結果として得た呪いは『劣竜熱』と言い、色々と強化される呪いだったらしい。
「では、そろそろ時間だな。此処までの苦戦が嫌ならば、『虹霓竜瞳の不老不死呪』タル、貴様はもう少し対策を立てる事だ」
「……」
対策か……今回で言えば、悪臭対策がまるで足りていなかったのは否定できない。
おかげで戦闘中に何度吐いた事だろうか。
伏呪に含まれる形でもいいから習得させしてしまえば、『路竜の包帯服』ジタツニの効果でかなりの耐性を得られるが、それでは習得時には無耐性で挑むことになる。
それだけでなく、伏呪に含められる状態異常の数にだって限界もあるのだから……確かにいい加減に考えるべき頃合いではあるか。
「次はもう少し期待させてもらうぞ」
「そう。だったら考えてみるわ」
状態異常対策、考えてみれば私にとっては殆ど未知の分野でもあるし、『虹霓鏡宮の呪界』探索と並行して、どうにかして準備してみようか。
そこにはきっと未知があるはずだ。
私にとって喜ばしく、『悪創の偽神呪』もそれなりに楽しめるような未知が。
「ではさらばだ」
「次もまた見に来るとしよう」
「お疲れさまでした。タルさん」
「助かったわ。クカタチ」
≪呪術『灼熱の邪眼・3』を習得しました≫
そうして私は元の世界に戻された。
それにしても……何となくだが、私の呪術習得の場だったのに、私よりもクカタチの方が強化されたような気がしなくもない。
活躍を考えたら妥当以外の何物でもないのだが。
「あ、戻ってきたでチュね」
「戻ってきたわ」
さて、戻ってきたところで、HPと満腹度を回復しつつ、早速強化されて第三位階になった『灼熱の邪眼・3』の詳細を確認するとしよう。
なお、悪臭と灼熱は勝手に治っていた。
△△△△△
『灼熱の邪眼・3』
レベル:35
干渉力:130
CT:20s-10s
トリガー:[詠唱キー][動作キー]
効果:対象に火炎属性ダメージ(大)+周囲の呪詛濃度×25の灼熱を与える
使用者周囲の呪詛濃度が高いほど、効果に上方修正がかかる。
伏呪
トリガー:[詠唱キー]
効果:この呪術の効果によって生じた灼熱が時間経過以外の理由でスタック値を減らした時、灼熱にかかっているものに悪臭(周囲の呪詛濃度)を与え、(減少したスタック値)メートル以内に異臭を生じさせる。
貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど堅い守りに身を包んでいても関係ない。
全ての守りは破れずとも、相手の守りの内に直接熱を生じさせるのだから。
そして、付けられた傷を癒そうとしても、周囲の捕食者がそれを見逃すことはない。
注意:使用する度にHPと満腹度が1減少し、周囲の呪詛濃度×1の灼熱を受ける。
注意:伏呪使用時には悪臭(3)を受ける。
▽▽▽▽▽
「何と言うか……強化された割には微妙な気がするでチュね」
「たぶんだけど戦闘評価の影響が出ているわね。特別ゲストがクカタチだったんだけど、私は補助がメインに近かったから」
「なるほど、そういう事でチュか」
メインの効果の上昇率については、ザリチュの言う通り微妙かもしれない。
ただ伏呪については予定通りだ。
これで、回復阻害をメインとするなら、その効果はより高まったと言えるだろう。
なお、伏呪使用時の詠唱は『灼熱の邪眼・3』である。
「さて、やるべきことはやったし、今日のところはこれでログアウトね」
「分かったでチュ。次来たら……『虹霓鏡宮の呪界』の探索でチュね」
「ええ、その通りよ。ザリアたちと一緒に少しずつ挑んでみるわ。ああそうだ。明日作り直すから、一度『化身』の解除はしておいて」
「分かったでチュ」
そうして化身ゴーレムの解除をしたところで、私はログアウトした。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル38
HP:4,110/4,110
満腹度:150/150
干渉力:137
異形度:26
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の達人』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・3』、『気絶の邪眼・3』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・2』、『深淵の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・2』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『風化-抑制』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『噴毒の華塔呪』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、鼠毒の竜呪の埋葬袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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牛ドラゴン。実は倒すだけならば、もっと簡単な方法がある模様。
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