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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』
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616:4thナイトメア5thデイ・タルウィスタン・3-3

「は……?」

 私に迫る虎ティラノの牙。

 何が起きたのかは……理解した。

 虎ティラノの目が光ると共に気絶を付与され、虎ティラノの口の前へとテレポートさせられたのだ。

 気絶は『気絶の邪眼・3』取得のための試練なのだから、相手が使ってくるのは当然。

 テレポートは……黒穴の磯巾着呪の目玉の持つ呪いが元か。


「アァ……」

 で、ここまで分かっても、この時点から虎ティラノの攻撃を避ける手段は今の私にはない。

 単純な身のこなしは間に合うはずもなく、『虚像の呪い(ラエルセルブ)』は昨日使ってしまったため再使用は出来ず、『気絶の邪眼・2』による対抗も虎ティラノの口の動きの速さからして無意味。

 走馬灯のように周囲の時間がゆっくりと進む中で虎ティラノの牙が私の体に触れて……


「させるかぁ!」

「アゴアッ!?」

「!?」

 その直後にマントデアの腕が私の体には触れず、けれど虎ティラノの口の中へと入っていき、殴り飛ばして、吹き飛ばす。

 世界の速度が元通りになる中でマントデアはさらに前進。

 私の姿が虎ティラノの視界へ入らないようにする。


「大丈夫か! タル!」

「助かったわ! マントデア!」

「ダイガアアァァ……」

 助かった。

 本当に助かった。

 どうやったのかは分からないが、マントデアの高速移動からの救出がなかったら、今の攻撃で試練は失敗に終わっていただろう。


「で、私は何をされたか、傍目にはどう見えてたか、教えて貰っていい?」

「どうと言われてもな……アイツの襟巻と目が光って、次の瞬間にはティラノの目の前にテレポートだ。俺が割込の灌木呪の素材から割り込み庇うの呪術を作ってなかったら、どうやっても間に合わなかっただろうな」

「その呪術、クールタイムは?」

「3分」

「つまり次はないのね」

 私はマントデアの陰に隠れたまま、情報を貰う。

 やはり私は転移させられていたらしい。


「ダイダイダイッ!」

「虎ティラノの様子は?」

「こっちを睨みつけつつ、襟巻を広げ、口を開け、という感じで威嚇してるな。何時でも動けるように小刻みなステップまで踏んでるな」

 マントデアは私を陰に隠しつつ、少しずつ虎ティラノに近づいていく。

 私は『毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』の準備をしつつ、音とマントデアの動きから、何時飛び出すかを探る。


「行くわよ!」

「おうっ!」

 チャージ完了。

 音の位置とマントデアの動きから虎ティラノの動きも推定。

 問題ないと判断したタイミングで『毒の邪眼・3』を撃ち込もうとした。

 そう、絶対に問題のない、確実に不意打ちが出来るタイミングで私は飛び出して、『毒の邪眼・3』を撃ち込もうとしたのだ。


「タ……」

「ダッ」

「「!?」」

 だが『毒の邪眼・3』は発動せず、一瞬の意識の喪失を経て、私の体は虎ティラノの強靭な前足の前に移動させられていた。

 そして既に虎ティラノの前足は振り上げられていた。


「どっせい!」

「ごふうっ!?」

「ドラッ!?」

 が、虎ティラノが攻撃する前にマントデアのタックルが入り、少しのダメージと引き換えに私は救出され、私は再びマントデアの背後に隠れる。


「おいおい、今のタイミングで割り込めるのかよ……身構えておいて良かった」

「たぶん、割込の灌木呪の素材を使った影響ね……ここまで理不尽な割り込みが来るとは思わなかったけど……ところでマントデア、二回攻撃した手応えは?」

「正直、カスダメも与えられている気がしないな。ノックバックはさせられても、ダメージにはなってない感じだ」

「そう……マントデア。早撃ち勝負を仕掛けるわ。上手くいっても行かなくても攻撃して。たぶん、それが向こうの要求だから」

「分かった」

 あー、うん、何となくだが虎ティラノの攻略法と言うか、要求されている事が分かった気がする。

 とりあえず普通の邪眼術を普通に撃ち込むのは駄目だ。

 割り込まれて、潰される。

 普段私が『気絶の邪眼・2(タルウィスタン)』でやっている事と同じだが。

 そしてマントデアの火力で何とかするのも無理だろう。

 鼠毒の竜呪や昨日の多頭竜よりも遥かに堅い。

 では、それが分かった上でやってみるとしようか。


「宣言する。虎ティラノ、アンタの邪眼よりも一瞬早く撃ち込んでやるわ」

「ダイガ?」

 『呪法(アドン)呪宣言(ロックオン)』と『呪法(アドン)極彩円(サークル)』を発動の上で私は『気絶の邪眼・2(タルウィスタン)』の構えを取る。

 虎ティラノの姿はマントデアの背中に隠れて見えないが……今度こそはと、私の姿が見える瞬間を待ってはいるだろう。

 しかも、今度はマントデアに妨害されないように距離を取りつつだ。


「行くぞ」

「ええっ」

 マントデアが動き出す。

 私と虎ティラノ、両方の視界を通すように、斜め前へと飛び出す。

 そして虎ティラノの姿が見えた瞬間。


「っ!」

「ー!?」

 私は指を鳴らした。

 それは虎ティラノの目が光るよりも一瞬早く、けれど襟巻が光っているタイミングだった。

 私の目はレモン色の輝きを放ち、虎ティラノの体から私に向けて電撃のエフェクトが生じ、虎ティラノの全身が硬直。


「うおらぁっ!」

「ダガアッ!?」

 そこへマントデアの攻撃が直撃。

 これまでと違い明確にダメージを与えたと分かる仰け反り方をし、血反吐を吐きながら、虎ティラノは吹き飛ばされ、たたらを踏む。


「ふぅ、まずは一撃ね」

「だな」

「ダイガアアァァ……」

 これで虎ティラノの攻略法は分かった。

 後は上手い事マントデアのラッシュを重ねたり、他の状態異常を乗せたりすることを狙って、戦闘時間の短縮を狙えばいいだろう。


「おい待てタル。何か妙だぞ?」

「……。そうね」

「ダッダッダッ……」

 そう思っていたのだが、虎ティラノの動きがどうにもおかしい。

 マントデアの陰から虎ティラノの姿を覗いてみたが、虎ティラノは左右に小刻みにステップを刻みつつ、こちらを睨みつけている。

 その全身は明確に帯電しており、口、前足、後足、尻尾には呪詛が集まっている。


「ダイ……」

「マントデア!」

「っ!」

 そうして虎ティラノの口の呪詛が十分に貯まった瞬間。


「ダイドラガアアァァ!!」

 私は左に、マントデアは右に跳び……私たちが居た場所を虎ティラノの口から放たれた巨大な稲妻が、轟音と衝撃波を伴って通り過ぎた。

08/05誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] マントデアのタンクとしての優秀さと竜呪の理不尽さがよく分かる戦闘ですね…… >恐竜型……電気……つまり荷◯粒子砲か!← (イビ○ジョー+ティ○レックス)÷2なイメージが一瞬でジェノ○ウラー…
[一言] 場合によってはこれと一人で戦っていた……? 勝てる気しねぇなぁ
[一言] ゲストがいるから普段より楽になるなんてことがあるはずもなく……。むしろゲストも全身全霊振り絞った上で協力するのが前提の難易度になってそう。
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