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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』
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594:4thナイトメア4thデイ-3

「さて、無事に倒したわけやけど、仇討の茸呪の素材って使えるん?」

「俺らが使おうとすると、何かしらのデメリットがありそうだよなぁ」

「キノコだからか、ちょっと溶け始めてるでチュね」

 さて、無事に仇討の茸呪は倒された。

 身長10メートル近い巨体が横たわっているのは、中々に迫力のある光景である。

 で、ザリチュの言う通り、その体は端の方から少しずつ溶け出している。

 流石はキノコと言うべきだろうか?


「んー……感じ取った限り、仇討系統の素材を仇討の対象になったプレイヤーが使うのは止めた方がいいでしょうね。呪いを扱う能力が私以上に高いならともかく、そうでないなら、どう扱うにしてもデメリットの方が勝つと思うわ」

 私は呪詛支配の範囲を仇討の茸呪の死体の周囲に限定する事で、探りを入れてみる。

 返ってきたのは刺々しい茨の塊を素手で鷲掴みにしているような感覚であり、その感覚に合わせるように私の手からは血が流れ始めている。


「うわ、タルはんの手が……」

「タルでそれだと、俺らじゃ絶対に無理だな……」

「ちなみにゼンゼ。鑑定は?」

「弾かれたでー。もっと言えば、鑑定時用の身代わりが壊滅したわ」

 ゼンゼはそう言うと、腰に提げていた札の塊を見せる。

 どれもドロドロに溶けていて、効力を失っていそうだ。

 こうなると、私が鑑定するのも止めた方がいいかもしれない。


「で、結局、これをどうするんでチュ?」

「放置は……誰が回収するか分かった物じゃないし、止めておいた方がいいか」

「まあ、私たち四人に対する特効素材だと分かれば、放置はされないでしょうね」

「タルはん特効とか、一部プレイヤーからは垂涎物やろうしなぁ」

 放置はできない。

 マントデアはともかく、私、ザリチュ、ゼンゼは各所に恨みを買っているだろうから、喉から手が出るほどに欲しいプレイヤーは絶対に居るし、そうして手に入れたプレイヤーが善良である保証などどこにもないのだから。

 となると処分するのが正解か。


「うん、とりあえず焼きましょうか。ezeerf(エゼールフ)灼熱の邪眼・2(タルウィスコド)』」

「お、燃えた」

「燃えたけど、変な煙が出とるなぁ」

「んー、煙が呪いを含んでいるようだから、回収出来るだけしておきましょうか」

 仇討の茸呪の死体に火を点ける。

 死体は激しく燃え上がり、大量の呪いを含んだ煙が上がっていく。


「回収回収……」

 折角なので、私は煙に含まれている呪いを回収して、手のひらの上に集めていく。

 仇討の呪いを含むため、私への反発心は強いが、その反発心の強さを敢えて利用。

 効率よく一点に凝集させていく。


「なんかまた変な事をしているでチュ」

「息を吸って吐くように呪いを扱っとるなぁ」

「アレ、アイテムとして使えるようになったりするのか?」

 そうして一点に凝集させた呪いに対して、呪詛薬を作る時と同じように『風化-活性』などを使用して、余計な呪いを取り除いていく。

 集まって来た呪いは……やはり、仇討の呪いか。

 それも、私、ザリチュ、マントデア、ゼンゼに対する敵愾心たっぷりな呪いだ。


「んー……仇討の呪いねぇ。行使者を失ってもなお対象に追いすがり、喰らいつこうとする性質そのものは使い道がありそうなんだけど……」

「仇討の対象が変更できたら、何かと便利そうではあるんだけどな」

「あ、それいいわね」

「ん?」

 おっとマントデアがいい意見を出してくれた。

 よろしい、ではザッハークに対して怨みを抱いているカースを探す……必要はないか。


「磔刑の樹呪のところに行きましょうか。きっと面白い事になるわ」

「面白いことなぁ」

「面白いと書いて碌でもないとよ……チュアアアァァァッ!?」

 と言う訳で、私たちは磔刑の樹呪の生えている場所に向かって移動を始める。

 なお、ザリチュは抓っておくし、仇討の呪いを凝集させたものは、そのまま維持しておく。


「磔刑の樹呪」

「ーーー!?」

「タルだ……」

「なんか変なの持ってる……」

「本当にゼンゼとマントデアの姿が変わってる」

 で、磔刑の樹呪の下にやって来たわけだが……。

 うん、実に人が多い。

 十数人のプレイヤーが磔刑の樹呪の周囲に居て、磔刑の樹呪に肉、水、土などを捧げ、それと引き換えに果実を貰っているようだった。

 なるほど、あの果実が例の身代わりアイテムにするのに丁度いい素材とやらか。

 そして、その姿を私が見たためなのか、何故か磔刑の樹呪は狼狽えているように見えた。

 いったい何を恐れているのだろうか?


「ーーー……ーーー……」

「何を恐れているのか知らないけど、別に商売くらいしていても構わないわよ。私が命令したのは攻撃されない限りは攻撃するな、これだけなんだし」

「……」

「会話してる……」

「まあ、制作者だしな」

「と言うか、あの手の奴なんだよ」

 私は磔刑の樹呪に近づいていく。


「それよりも。貴方の中にあるザッハークを恨む感情、少し写させてもらっていいかしら?」

「? ーーー……」

 で、磔刑の樹呪に触れて、『転写-活性』を発動。

 磔刑の樹呪からザッハークに対する恨みを転写して、仇討の呪いに混ぜ込む。

 そして仇討の呪いから私たちの情報を出来るだけ抜いて適当なアイテムに……磔刑の樹呪の果実へ宿らせる。


「よし、上手くいったわね」

「明らかにヤバいのが出来たわぁ……」

「ザッハーク殺しの果実、になるんだよな」

「たぶんそうなるでチュ」

 と言う訳で、対ザッハーク用の呪いが詰まった果実が出来た。

 見た目としては、全身から棘が生えた人型の果実と言うところか。

 とは言え、私たちに対する恨みもまだまだ含まれているので、扱いには慎重になった方がいいだろう。


「一度退きましょうか。これをちゃんと回収しておきたいわ」

 私たちは一度『愚帝の暗き庭』から脱出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] 皆大好き磔刑の樹呪君もイベント終了で消滅するんでしょうね。イベント長いから読者の大半もイベント中は夢の中って設定を忘れていそう(苦笑
[一言] あー、まぁ恨まれてるヤツ(ザッハーク)が悪いって事で あいつが善人ならたぶんタルにはこんなことされないわけだし?
[一言] >そして仇討の呪いから私たちの情報を出来るだけ抜いて適当なアイテムに……磔刑の樹呪の果実へ宿らせる。 PL1「なんかこの果実びりびり来るぞ?」 PL2「こっちは形が卑猥…の様な」 PL3「…
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