592:4thナイトメア4thデイ-1
「あったあった。これがそうね」
イベントも早いもので四日目である。
今日からはザッハークに盛る呪詛薬、料理を作成する事がメインとなるだろう。
と言う訳で、私が目指すアイテムを作るのに必要な素材を落とすカースを狩りに来たのが現状である。
「これがそうって……」
「たくさん来るでチュねぇ」
「まあ、そういうカースやからな」
はい、なので落ち葉が積もった森の中に居る私たちの前には、高さ1メートルほどのキノコ型のカースが20体ほど、隊列を組み、こっちへゆっくりと迫ってきている。
名前は共鳴の茸呪、他の個体と連携、同一対象へ同時に攻撃をする事によって、攻撃の威力を高める能力を持っているカースである。
「さあ、狩るわよ!」
「でチュね」
「おう」
「ま、慣らし運転にはちょうどええかな」
「「「キノコオオォォ!!」」」
共鳴の茸呪がこちらに突っ込んでくる。
対してこちらはカース化によって戦闘能力が大きく増したマントデアをメインの盾、化身ゴーレムをタイミングずらしに専念するサブの盾、ゼンゼが自由自在に動く尻尾と鎌で、私が邪眼術で共鳴の茸呪を攻撃する。
まあ、所詮はレベル20前後のカース。
苦戦をする要素など特になく、戦闘そのものはあっさり終わった。
で、回収した素材は一例としてはこんな感じ。
△△△△△
共鳴の茸呪の傘
レベル:20
耐久度:100/100
干渉力:118
浸食率:100/100
異形度:15
共鳴の茸呪と呼ばれるキノコ型カースの傘。
切り刻むなどして分割した後、二つ以上のものに組み込むことで、組み込んだもの同士が揃って効果を示した時、その効果を大幅に高める作用を持つ。
注意:異形度19以下の存在が食べると、10%の確率でランダムな呪いを一つ、恒常的に得て、異形度が1上昇します。
▽▽▽▽▽
「で、これをどう組み合わせるんだ?」
「今考えているのだと、余韻の馬呪の素材とのコンボね。上手くいけば、共鳴の受付時間が大きく伸びるはずよ」
「で、受付時間が伸びるのに合わせて、共鳴していない時の効果は徹底的に抑えるわけやな。なるほど。それなら確かに成功率は大きく上がりそうやなぁ」
私は共鳴の茸呪に『呪圏・薬壊れ毒と化す』と『七つの大呪』の活性化による変異を試みてみる。
が、反応らしい反応はなし。
「何をやっているんでチュか? たるうぃ」
「ちょっとした実験よ」
まあ、上手くいかないとは思っていた。
私の『呪圏・薬壊れ毒と化す』は対象が植物か植物由来である必要があったはず。
そしてキノコは植物ではなく菌類の一種だ。
ならば、効果の適用範囲外になっていても何もおかしくはない。
「それで二人の方はどう? 新しい呪いを得てから、初めての実戦だったわけだけど」
では、私の確認事項は終わり。
次はマントデアたちの確認事項だ。
「俺の方は特に問題なしだな。体が一回り大きくなって、動かし方の感覚が多少変わりはしたが、それは想定の範囲内だったからな」
「なるほど。電撃や虹霓竜瞳の呪血盾は?」
「そっちはまだ試していないから何ともだな。ま、基本部分には影響は出てないから、やっぱり問題はないと判断していいと思うぞ」
マントデアは問題なし、と。
電撃強化はある程度以上の強敵が、虹霓竜瞳の呪血盾は状態異常を使ってくる相手が必要だから、確認できていないのは仕方がないか。
「ゼンゼは?」
「まだぎこちない感じやなぁ……一斉に伸ばす、薙ぎ払う、縮めるの三動作や、尻尾一本でそれをやるとかは出来るようになったけれど、複数本の尻尾を別々に動かすのは、まだまだ無理な感じやな」
「なるほどねぇ」
ゼンゼはまだまだ慣れが必要、と。
異形偽装については自分で何かをするタイプの呪いではないので気にする必要はないだろうが、他の呪いについては……まあ、頑張ってとしか言いようがないか。
「あ、この共鳴の茸呪の素材はウチも集めておいてええか?」
「俺も集めておこう。使い道は多そうだ」
「ざりちゅもでチュ」
「そうね。集めておいてもいいかも。聞くところによれば、セット装備の類を作るのにも使えるみたいだし、利用先は多いと思うわ」
では話を戻して共鳴の茸呪について。
共鳴の茸呪の素材が持つ共鳴効果の使い方は様々だ。
一つは武器と盾に仕込んで、一緒に装備する事でどちらの装備も強化されるパターン。
または、呪術習得用アイテムに仕込んで、複数人で同一の呪術を習得、一緒に使う事で強化された呪術を使うパターン。
多少変わったところでは、メインとなる装飾品、サブとなる武器を複数本用意し、それぞれに仕込む事で、メインがある場にサブの武器が揃っていれば揃っているほどに強化される、王と騎士たちのような関係性を見せるようなパターンもあるようだ。
そんなわけで、『愚帝の暗き庭』で得られる素材の中でも、共鳴の茸呪の素材の人気は高いらしい。
「タルはん、ウチらと比べると微妙にテンションが低くあらへんか?」
「まあ、私にとってはそこまで使い道がある素材でもないし」
なお、私的には絶賛するレベルで有用な素材ではない。
セット装備もパーティ行動もそこまで魅力的に思えないからだ。
「でも、必要だから、虐殺はする、と」
「ええ、必要なのは確かよ。だから集めておくわ」
「ま、そんな物でチュよね」
「せやなぁ」
「「「キノコオオォォ!!」」」
とりあえず第二の群れに無事に遭遇できたので、狩る事にしよう。
切り所は……虐殺による特殊ポップが出たぐらいで、良さそうか。
では、戦闘開始である。