表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』
562/1000

562:4thナイトメア1stデイ・ストレージ-7

「戻ったでチュよー」

「お帰りなさい。と言っても、本体はずっと此処にいた訳だけど」

「それはまあ、そうなんでチュけどね」

 私が生産用エリアで黙々とアイテムを作っていると、化身ゴーレムが帰ってくる。


「まんとであとぜんぜはどうしたでチュ?」

「二人なら自分にとって都合のいい素材がないかと言う事で、『愚帝の暗き庭』または『官僚の乱雑な倉庫』に向かったわ。確認してなかったの?」

「流石に『愚帝の暗き庭』で化身ゴーレムの周囲を注意しつつ、たるうぃの周りを気にしてるのは無理でチュよ。こっちに戻って来てから、生産用エリアに帰ってくるまでの間に、破毒の細剣呪と言う剣を作り上げて、ドン引きされているのは掲示板で確認したでチュが」

「酷い評価よねぇ」

「至極妥当な評価だと思うでチュよ」

 マントデアとゼンゼの二人はこの場に居ない。

 まあ、あの二人なら破接の幻惑蟲呪にでも遭遇しなければ大丈夫だろうから、気にする必要はないが。


「それで、ざりちゅの送った素材でどんなアイテムを作ったんでチュか?」

「送ったじゃなくて、奪った、でしょう? あ、作ったアイテムはその辺よ」

 さて、化身ゴーレムの収穫だが、その大半は私に直接送られてきている。

 と言うのも化身ゴーレムが『愚帝の暗き庭』でやっていたのは無差別PKであり、その成果はシステムの都合上、化身ゴーレムを操るザリチュの所有者である私へとメッセージの形で送られるからだ。

 おかげで掲示板では、化身ゴーレム及び私の評価がだいぶ悪くなって……はいないのか。

 元からそういうイベントであるし、『愚帝の暗き庭』に居るのはある程度以上『CNP』に慣れたプレイヤーであり、そういうプレイヤーにとっては、この程度で一々憤慨していたらやっていられないと。

 いや、それだけじゃなくて、化身ゴーレム経由で私に素材が渡り、私が得た素材で有用なアイテムを作る事を期待する書き込みもあるな。

 なるほど、自分で作るより有用なアイテムになる可能性があるから、私に奪われる分にはそこまで痛くはない、と。


「うわっ、変なアイテムばかりでチュねぇ……『堕即』っぽい感じの呪詛薬と、呪いを撒き散らす爆弾がメインでチュか。装備品にしても異形度11以上前提な感じでチュねぇ」

「ええ、罠アイテム量産中よ」

 残念だが、今回の私は罠アイテムメインだ。

 具体的に言えば、ランダムに呪いを得て異形度を上げる薬の一時版と恒常版を同一外見で作成。

 一定の条件を満たすと毒として機能し出す回復薬も作成。

 人間……正確には異形度19以下の生物が触れると爆発して、周囲に元になったカースの呪いに基づいた効果を撒き散らす装飾品型の爆弾。

 異形度10以下が身に付けようとすると酷い目に合う装備品。

 異形度19以下が鑑定するとカウンターが飛ぶアイテム。

 誰も見ていないとポージングを変える石像。

 その石像の目として仕込んだ、目が合った相手の警戒心を緩める宝石。

 効果が発動すると派手な演出が生じて、とても目立つ身代わり人形。

 他にもまあ、色々だ。


「でもこれ、人によっては使い道を見出したりしそうでチュね」

「それならそれでいいわよ。安易に使うと酷い目に合う、ぐらいのが引っかかってくれるプレイヤーも多いでしょうし」

「ああなるほど。完全に罠だと、捨てられてお終いでチュからねぇ」

「そういう事ね」

 なお、これらのアイテムに対する評価は、いずれも低い。

 どれも10や20、酷いのだと、一桁だ。

 ちゃんと使えば使えるのも混じっているというのに……『ユーマバッグ帝国』はやはり見る目がない。


「あ、罠アイテムばかり作っているのも気が滅入るから、こう言うのも作ってみたわ」

「チュア?」

 ちなみに真面目に作ったものとしては、こんなアイテムがある。



△△△△△

破接の断界輪

レベル:40

耐久度:100/100

干渉力:150

浸食率:100/100

異形度:21


破接の幻惑蟲呪と言う不可思議なカースの足先に生えていた堅い爪を基に作られた指輪。

僅かに虹色を帯びている輪は、装備者をあらゆる呪いから守らんとする。

しかしそれは装備者の成長と引き換えのものになる。


装備者はあらゆる呪いに対して低い抵抗性を得る。

装備者は毒、灼熱、気絶、沈黙、出血、小人、巨人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了(畏怖)、石化、質量増大、重力増大の状態異常を無効化(30)。

装備者は呪詛濃度過多を無効化(10)。


装備者の血を吸収する事で耐久度が回復する。


注意:装備中、常にUI消失(1)を耐性を無視して受け続ける。

注意:レベル30以下または異形度19以下のプレイヤーが鑑定すると、UI消失(18)を与える。

注意:装備中、装備者は経験値を得られない。

注意:装備中、装備者は新たな呪術を得られない。

注意:装備中、装備者は新たな称号を得られない。

注意:装備中、装備者は転移が出来なくなる。

注意:装備中、装備者が死亡した場合、デスペナルティとして最大HP低下(最大HPの10%)が付与される。

注意:装備者のレベルが39以下の場合、装備者周囲の呪詛濃度が(40-装備者のレベル)分だけ上がるように呪詛を集める。

▽▽▽▽▽



「破接の幻惑蟲呪の爪を素材に作った感じでチュか?」

「私の血も混じってるわよ。後、繋ぎとして他の素材も少々入れたわね」

「でチュかぁ。で、こんな装備品何処で使うんでチュか? こんなの切り札にしかならないでチュよ」

「まあ、普段使い出来る性能ではないのは認めるわ」

 破接の断界輪は……何と言うか、極めて優秀な装備品である事は間違いないのだが、込められている呪いの濃さが段違いな感じになってしまった。

 で、特筆すべき点は色々とあるが、一番の目玉は呪詛濃度過多の無効化だろうか?

 この効果は分かり易く言えば、今まで異形度1のプレイヤーは呪詛濃度12の空間に入る事で呪詛濃度過多(1)を発症していたのが、呪詛濃度21までなら呪詛濃度過多を発症しなくなるというものである。

 これによって、周囲の呪詛濃度を下げるだけでは対処出来なかった呪詛濃度に対処したり、破毒の細剣呪のような呪詛濃度操作を受け付けなくなる装備品を装備したりが出来るようになるのである。

 うん、こういう効果があると知れただけでも、作った価値はあるだろう。


「たるうぃ、この破接の断界輪でチュが、破毒の細剣呪と対を為すようになっていないでチュか?」

「その点については否定しないわ。毒を以って毒を制するような感じになっているけど」

 ちなみに、この指輪については『ユーマバッグ帝国』としても評価せざるを得なかったのか、まさかの1,000ポイント評価である。

 掲示板でもこれ以上の評価は見られなかったので、どうやらこれが最高評価であるらしい。

 とりあえず、破接の断界輪によく似た外見の指輪は幾つか作っておこう。


「さて、そろそろマントデアとゼンゼも帰ってくるでしょうし、呪詛をいい感じに抜いたカース肉を使って、適当に料理でも作りましょうか」

「じゃあ、二人には食べる前の鑑定を勧めておくでチュよ」

「ええ、それでお願い」

 その後、マントデアとゼンゼは無事に帰還。

 二人は私が作った料理の正体に微妙に引きつつも完食し、私たちは翌日に備えて眠り始めた。

06/16誤字訂正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 呪詛抜き(血抜き?)を適切に行えばリスクなしで美味しく頂けるのか。 普通の料理にすれば高評価取り放題じゃないか! [一言] !呪食屋 ダマーヴァンド シェフの気まぐれカース料理 本日のメニ…
[一言] >誰も見ていないとポージングを変える石像。 目を離した隙に首を折りにくるどこかの彫像を思い出しましたw >効果が発動すると派手な演出が生じて、とても目立つ身代わり人形。 状況によっては変身…
[一言] ≫誰も見ていないとポージングを変える石像 ぱっと浮かんだのはボディビルダーの像だったw 見るたびポーズが違うけどどのポーズでも「ムキッ」って擬音が入る感じw ≫破接の断界輪 こんなの着けな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ