561:4thナイトメア1stデイ・ストレージ-6
「で、何か作るん?」
「ええ、とりあえず全力で一本、武器を作ってみるわ。ゼンゼとマントデアも適当に作ってみましょう? 罠アイテムは後でいいわ」
「そうだな。一度くらいは作ってみるか。ま、期待はしないでくれ」
生産用エリアに戻ってきた私は、とりあえず生産用エリアの呪詛濃度を17にまで高め、鼠毒の竜呪の素材が消滅しないようにする。
その上でこれまでに回収した素材を全部インベントリの外に出すと、今後使う予定のある素材と、今ここで使ってもいい素材に分ける。
で、使ってもいい素材で、何かを作る事にする。
「あ、ざりちゅは『愚帝の暗き庭』に行ってみてもいいでチュか?」
「いいけど……行けるの?」
「その辺も確かめるために行ってくるんでチュよ。色々と試してみたいんでチュ」
「分かったわ。じゃ、行ってらっしゃい」
化身ゴーレムは適当な大きさの布を持って生産用エリアの外に出ると、そのまま『愚帝の暗き庭』へと向かって行く。
私が居ないので呪詛濃度の維持は大変になるはずだが……非戦闘時なら、問題はなさそうか。
まあ、その内適当に素材を回収して帰ってくるだろう。
「割込の灌木呪の素材が大量やし、この辺使ってみよか」
「んー……これとこれを合わせてだな」
「さて、何を作ろうかしらね?」
では、作業開始。
まあ、全力で作ると言っても時間をかけるつもりはないので、良さそうだと判断した素材をドンドン盛っていこう。
と言う訳で、私が選んだのは破接の幻惑蟲呪の棘、鼠毒の竜呪の骨と毛皮、他に動物系カースの骨を幾つか、それに少量の金属。
「ふんふふーん」
私は各種骨を砕いて粉状にすると、炉で金属を溶かし、この二つを混ぜ合わせる。
そして飢渇の毒砂……はないので、普通の砂で型を作って、そこに溶かした骨と金属の構造物を流し込み、冷却する。
「研磨してっと」
冷却が完了したら、持ち手として丁度いい感じに研磨と掘削をして形を整え、鼠毒の竜呪の毛皮を巻き付けて固定。
で、続けて破接の幻惑蟲呪の棘を研磨しようと思ったが……これは研磨の必要はなさそうだ。
フレーバーテキストにある通り、破接の幻惑蟲呪の棘は、加工するまでもなく名匠が鍛えた刃物のような鋭さを持っている。
これに下手な加工を加える事は、質を下げることになるだろう。
「こんな感じかしらね」
と言う訳で、破接の幻惑蟲呪の棘に施す加工は最低限。
持ち手と接続するためのパーツを加えるだけにする。
で、破接の幻惑蟲呪の棘と持ち手を繋げた。
「ふむ、短剣……いえ、レイピアに近い感じかしら?」
軽く何度か振ってみる。
うん、いい感じだ。
では、刃を一度『ダマーヴァンド』の毒液に漬けて、私の血も幾らか刀身を伝わせてから、呪怨台に乗せるとしよう。
「ふんふふーん。etoditna『毒の邪眼・3』」
と言う訳で呪怨台に乗せ、一応は全力で作ると言っているので、『七つの大呪』も利用して先鋭化を図る。
その上で伏呪付きの『毒の邪眼・3』も撃ち込んで、その力を宿らせていく。
つまり、持ち手以外の全てを切り裂き、状態異常を与え、所有者に勝利を与えるような剣を作っていく。
尤も、その力の強さに比例するように、所有者に来る呪いも強烈な物になっていくだろうが……うん、私の知ったことではない。
どうせ、私が使う事はないだろうし。
「出来たわね」
そんな事を考えている間に完成。
最低限の装飾もない武骨な細剣だが、僅かに虹色に輝く刃には呪詛濃度20の呪詛の霧がまとわりついている。
では、鑑定してみよう。
△△△△△
破毒の細剣呪
レベル:40
耐久度:100/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:21
破接の幻惑蟲呪と言う不可思議なカースの背中に生えていた鋭い棘を基に、複数体のカースの素材を組み合わせて作られた細剣型のカース。
僅かに虹色を帯びている刃は、呪いを帯びていないものであれば如何なるものであっても切り裂き、心身魂を蝕み、命を奪い取る。
しかし、その呪いが蝕むのは敵だけではなく、資格を有さない愚者もである。
与ダメージ時:中確率で毒、灼熱、気絶、沈黙、出血、小人、巨人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了(畏怖)、石化、質量増大、重力増大の状態異常を与える(状態異常に罹るかは個別に判定、付与されるスタック値は30-対象の異形度)。
異形度0の対象に対する特効を有する。
切りつけた対象の呪詛、血の一部を吸収する事で耐久度が回復する。
装備者は毒無効化(100)、毒に対する中程度の耐性、毒に対する低い抵抗性を得る。
注意:この剣を握っているプレイヤーは、握っている間は常にUI消失(1)を耐性を無視して受け続ける。
注意:称号『竜狩りの呪人』を持たないものが装備している間、常に恐怖(100)、毒(100)を、耐性を無視して受け続ける。
注意:レベル30以下または異形度19以下のプレイヤーが鑑定すると、UI消失(18)を与える。
注意:この装備の周囲の呪詛濃度が19以下の場合、所有者の呪詛操作能力に関わらず、呪詛濃度が20以上になるように呪詛を集める。
注意:レベル39以下のものが攻撃に用いた場合、攻撃する度に、攻撃者に対しても与ダメージ時の効果が生じる。
▽▽▽▽▽
「お、本当にUIが消えたわね」
「とりあえず、とてつもなく恐ろしい物を作り上げたことは理解した」
「完全にこの世に存在してはいけない物体を作り上げたんは分かるわ」
鑑定結果が出たところで、私は鑑定結果をマントデアとゼンゼに見せつつ、破毒の細剣呪を手に取ってみる。
すると効果通り、私の視界にあるUI関係の諸々は全て消え失せた。
「いやこれ、本当にヤベえだろ……なんで、当たり前のようにカース化してるんだ……」
「と言うか、タルはんの血の影響、もろに出とるよな。これ。与ダメージ効果とかまんまやろうし」
「俺らは……レベルさえ足りれば使えるようになるのか」
「いや、ウチは現状だと無理や。見てみ、強制呪詛濃度20。呪詛濃度操作装備を弾くみたいやし、ウチの異形度だと呪詛濃度過多になってしまうわ」
「ああなるほど。称号に加えて、異形度11、レベル40が最低条件なのか。現状だと誰も使えないだろ。これ」
「せやろうなぁ……」
ふむふむ、私がUI消失状態になっていて、鑑定結果が見えない状態でも、他プレイヤーに鑑定結果を見せる事は可能、と。
つまり、UI消失状態では、私だけが見えなくなっているのか。
となると地味に視覚干渉系の状態異常になるのかもしれない。
「そろそろ評価に出すわよー」
「どうなると思う?」
「評価できないと言う結果が出てもウチは驚かへん」
「ああうん、それには同意するわ」
確認が完了したところで、私はアイテム提出用の台に破毒の細剣呪を乗せて、武器カテゴリーで提出する。
評価は……80ポイントか。
うーん、多いか少ないかは現状だとよく分からないな。
鑑定結果と一緒に掲示板に書き込んでみるか。
そういうスレも出来ているようだから、化身ゴーレムが帰ってくるまでは、ちょっと漁ってみよう。
「一応評価はされたな」
「みたいやなぁ」
なお、その後にマントデアが作った庇う行動がしやすくなる、デメリットほぼ無しリングが、防具部門で350ポイント。
ゼンゼの作った、最新式の鑑定時身代わりアイテムが道具部門で400ポイントを出した。
また、掲示板を見る限り、現状でも500ポイントまでは既に出されているとの事。
つまり、残念な事に破毒の細剣呪は人間が扱えない物と言う評価をされてしまったらしい。
異形度19までなら人間のはずなのに、酷い話もあったものである。
かなりキツイデメリットが5つも付いていて、80ポイントも付くなら、十分高評価です。
06/15誤字訂正
06/16誤字訂正