560:4thナイトメア1stデイ・ストレージ-5
「さて、戦闘終了ね」
鼠毒の竜呪との戦闘終了後。
『官僚の乱雑な倉庫』の呪詛濃度は本来の数字に向かって急激に落ち始める。
なので、私は報酬である鼠毒の竜呪の死体が現れようとする場所に素早く呪詛を集めて、維持を開始する。
「何を……やって……いるん……?」
「これ? 鼠毒の竜呪の死体と言うか、素材は呪詛濃度が15以下の空間だと存在できずに消滅するのよ。だから、それへの対策。放置での復活もするだろうから、解体もこの場で済ませちゃうわ」
「破接の幻惑蟲呪もそうだったが、カース素材の取り扱いは確実に難しくなっていくな……」
「そりゃあそうでチュよ。本来は地上に居られない存在なんでチュから」
そうして、準備が整ったところで、鼠毒の竜呪の死体が現れた。
ゼンゼの息は絶え絶えとしているし、マントデアも疲れている感じなので、今後どうするにしても休憩は必要そう。
ならば、二人が休憩している間に解体を済ませてしまおう。
「うおっ、なんか称号が来た。と、レベルも上がったな」
「うわー……アレを使ったのにレベルが上がるんか……おまけに『竜狩りの呪人』って……こんな称号があったんか……」
「チュうぅぅん?」
「ふうむ……」
どうやらゼンゼが鼠毒の竜呪を倒すのに使った呪術は経験値の取得にペナルティが来るらしい。
まあ、風化の呪詛へ色々と捧げる呪術だったようなので、妥当と言えるだろう。
それはそれとして鼠毒の竜呪の死体だが……どうやら私たちが討伐した三体の鼠毒の竜呪の討伐状況を平均化したと言うか、混ぜ合わせたような状況になっているようだ。
「眼球は駄目。毛皮は使える。骨は微妙。前歯はいける。尾と肉が無事なのが幸いね。爪と翼は微妙。血は……壊滅ね」
「解体スピードが手慣れてるなんてものじゃないな……」
「ウチが懇意にしてる解体屋より遥かに早いんやけど……」
「ん? そうでチュかね? たるうぃならこれがいつもでチュけど?」
なので、使える部位は限られていそうだ。
まあ、マントデアの呪詛薬に使う部位である肉、ゼンゼの呪詛薬に使う部位である尾は手に入ったから問題ないか。
ザッハークに盛る呪詛薬に使うなら、微妙な状態の翼で十分だし。
「解体完了っと。今は私が持っておくわね」
「むしろお願いするわ。持っとるだけで呪われそうやし」
「怖くて鑑定も出来ないレベルだしな」
「あ、鑑定はしなくて正解でチュよ。人が鑑定すると、強烈な毒が飛んで来るでチュから」
「「……」」
解体が終わったところで毛皮袋へと素材を投入、保存する。
「あー、てか、タル? タルはアレと普段戦っているんだよな?」
「普段……と言えるレベルではまだ戦ってないわね。今ので二戦目、見方によっては三戦目と言うところだから」
「そうなんか。ちょっと気になる話もあるけど、そんな物なんやな」
なんだろう、マントデアとゼンゼが、もうひたすらに鼠毒の竜呪と戦って経験値稼ぎをした方が色んな意味で美味しいんじゃと言う感じの顔をしている気がする。
なお、私の言い方が微妙なのは、『毒の邪眼・3』習得時に戦ったネズミドラゴンを鼠毒の竜呪に混ぜていいか悩んだからである。
たぶんだが、アレが全力で、重症化ラインを上げてから戦ったなら、鼠毒の竜呪が話にならない程度には強いだろうし。
それにしてもレベルか……。
「レベルねぇ。今の私は……」
私は自分に『鑑定のルーペ』を使って、自分の状態を確認してみた。
そして、天を仰いだ。
「何があった?」
「何があったんや?」
「破接の幻惑蟲呪、恐るべし……」
「「!?」」
「あー、そういう通達もでチュか……」
私の言葉に他の面々も察したらしい。
では何があったのかを話そう。
「UI消失状態だと、レベルアップの通達すら来ないみたい……」
「おいおい……その分だと他にも確認し損ねたものがあるんじゃ……」
「そうなると、称号の獲得とかも来なさそうやな……いや、悪創レベルなら流石に大丈夫か?」
「どうでチュかねぇ? UI消失の原理的にその辺の通達も来ないか、遅れるぐらいはありそうな気がするでチュよ」
と言う訳で、いつの間にか、私のレベルが35から36に上がっていた。
恐ろしい、なんて恐ろしい状態異常なのだろうか。
これは下手をしなくても、幾つもの未知を通達が来なかったらと言う理由で見逃していたかもしれない。
直接的な厄介さも相当のものだったが、間接的にも危険とは、本当に恐ろしい状態異常である。
「ちょっと一通り確認するわ」
「お、おう」
「まあ、必要やろな」
「恐ろしい状態異常でチュねぇ」
はい、見逃しがないかを確認。
所有ダンジョンのところの表記変化については、アップデートの結果として、追記されただけなので大丈夫だろう。
で、称号の『生ける呪い』に少し変化があった。
△△△△△
『生ける呪い』
効果:鑑定が行われた際に通知が入る。自分よりも鑑定を行った相手の方がレベルが低い、または異形度が19以下の場合、レベルと異形度の差に応じたダメージを与える。
条件:異形度20以上。
生ける呪い、カース。
存在そのものが呪いである彼らの詳細を知る事を、人間の頭は拒絶する。
▽▽▽▽▽
「……」
いつの間にか、鑑定カウンターの条件が“かつ”から“または”に変化している。
結構大きな変化だと思うのだが、何時変化したのだろうか?
これまで私以外に取得者がいなかったのが、アイムさんとクカタチの二人で取得者が増え、そこで誤記に気づいたとかか?
まあ、こちらの方が妥当っぽいので変更そのものには何も言わないが。
あ、よく見たらお知らせにあったわ、今回のイベントの開始時に合わせて、幾つかの修正をしたって、じゃあこれか。
「確認終わったか?」
「ええ、終わったわ」
「そうかー。じゃあ、この後はどうするん?」
「そうねぇ……一度戻って、それぞれにアイテムを作ってみて、納品をやってみましょうか」
「ま、そこの確認も必要でチュよね」
とりあえず今この場でやるべき事は終わった。
と言う訳で、私たちは自分たちの生産用エリアに戻った。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル36
HP:2.737/4,050 (-1,206)
満腹度:87/150 (-45)
干渉力:135
異形度:26
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、鼠毒の竜呪の埋葬袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置、『熱樹渇泥の呪界』・『入子屋敷の呪地』・『塩砂湖畔の呪地』接続済み
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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06/15誤字訂正