550:4thナイトメア1stデイ-3
「うおらぁ!」
「グギャン!?」
マントデアの巨体から繰り出される棒の一撃によって、筋骨隆々で見た目以上に強靭な虎型のカースが吹き飛び、そのまま動かなくなった。
「せいっ!」
「キュオッ!?」
ゼンゼの大振りに見えて繊細な鎌使いによって、尻尾が何本もあるように見える狐型のカースの首が刎ねられ、活動を停止する。
「チュアっと」
「ギチュ……!?」
化身ゴーレムが連続で剣を振るい、全身に電撃を纏っていた様々な昆虫の要素が入り混じった虫型のカースの体がバラバラになって、崩れ落ちる。
「『毒の邪眼・3』」
「ーーー……」
私の『毒の邪眼・3』が、私たちが戦闘を始めた事を好機と見て寄って来た、灌木系のカースに突き刺さり、即座に沈黙する。
「はい、戦闘終了ね」
「いやー、さっきから敵の絡み方がエグイでチュね」
「大昔のゲームで、戦闘終了後に一歩進んだら直ぐに次の戦闘、何てのがあったらしいんやけど、こう言う状況を言うんやろか?」
「そこまで酷くはないだろ。まあ、数分に一度のレベルで敵に出会うのは確かだが」
と言う訳で、『愚帝の暗き庭』に踏み込んだ私たちは、少し進む度に大量のカースに襲われていた。
一体一体の戦闘能力は今がイベントで、プレイヤーの実力に差があるためか、『熱樹渇泥の呪界』に居る毒頭尾の蜻蛉呪と同じかそれ以下程度だが、とにかく数が多い。
「タルはん、回収お願いな」
「こっちも頼む」
「分かったわ」
まあ、折角襲い掛かってくれたので、全て返り討ちにして毛皮袋に収めていくのだが。
なお、私が回収するのは、私の持つ毛皮袋が最も容量が大きく、それと同時に袋の中で暴れられる事もないからである。
「しかし、『熱樹渇泥の呪界』のカースと違って、何と言うか能力がシンプルな感じだな」
「せやなぁ。筋肉馬鹿の虎、幻惑の狐、帯電の虫、漁夫の利狙いの灌木、最後のは詳しい能力を知る前にタルはんが仕留めたけど、一種一つの能力しかない感じやわ」
「実力と同じで、そこもイベントの都合でしょうね」
「慣れないプレイヤーが扱うなら、シンプルな方が使いやすいに決まっているでチュからねぇ」
マントデアとゼンゼが言ったとおり、『愚帝の暗き庭』に居るカースの能力は極めてシンプルだ。
毒頭尾の蜻蛉呪なら毒を主体としつつ、大抵の物はあっさり切れる翅や、飛べない敵を持ち上げて落とす知能と言った能力を有している。
が、『愚帝の暗き庭』に居るカースはその辺がかなりシンプルで、何をしてくるかが種類ごとにはっきりしている。
なお、今戦ったカースの正式名称はそれぞれ、強靭の虎呪、幻惑の狐呪、帯電の混虫呪、割込の灌木呪となっている。
昆虫呪ではなく、混虫呪な辺りは要注意だ。
「爆音やな」
「爆音だな」
「爆音ね」
「爆音でチュね」
と、ここで遠くの方から爆音のような物が響いてくる。
だが、爆音を響かせるようなカースには現状遭遇していない。
と言う事はだ。
『愚帝の暗き庭』のカースは一体一体の能力はシンプル。
が、その代わりに多種多様で、エリアごとに出現するカースの種類がまるで違うのだろう。
その証拠と言わんばかりに、爆音とは異なる大きな音が別方向から響いてくる。
「これ、他プレイヤーとの交渉は必須になりそうね」
「せやろうなぁ。自分が持っていない、けれど必要としている素材を他人が持っている可能性は高いと思うで」
「そうなると、素材の交渉と言うか、店のような役割を持つプレイヤーも重要そうだな。掲示板を利用するにしても、俺ら一般個人が自分たちでそれぞれの要求を嚙み合わせるのは面倒すぎる」
「まあ、そういう趣旨のイベントでチュからねぇ」
うん、どう考えても、私たちだけでは時間の無さもあって、手が回らないな。
「しかし、時折やけど、陰鬱な気配が一気に強まる場所があるなぁ。どうなってるん? これ」
「ああこれ? たぶんだけど、歴代皇帝辺りがマンハントでもした影響が出ているんだと思うわよ」
「マンハントって……根拠は?」
「磔刑の樹呪が根拠の一つね」
余談だが、『愚帝の暗き庭』を移動していると、時折大量の血痕が残された岩やら、人型の何かが吊るされた樹、闘技場のようにも見える窪地、何かを沈められそうな溜め池などが視界に入ってくる。
おかげで、『愚帝の暗き庭』は中々にホラーテイストの環境となっている。
「磔刑の樹呪に実った果実は人型だった。で、私は造形面に手を出した覚えはないわ。となると、そういう風に使われたことがあると考えた方が妥当でしょうね」
「なるほどな。つまり処刑した犯罪者を吊るしていたのか」
マントデアの言葉に、マントデア以外の面々が一斉に視線を向ける。
「それなら優しい方でチュね」
「それなら優しい方やろなぁ」
「それなら優しい方でしょうね」
「えっ、そうなのか……」
そして、一斉に呟いた。
「イベントの補正もあるでしょうけど、裏で呪限無が生成されているような場所なのよ? 確実に、偶々目に入ったから連れてきて、狩りの相手として使った、ぐらいはしているわよ」
「捕虜や政治的に敵対していたとかなら、絶対にマシな方や。急に見かけなくなった住民とか、ウチには覚えがあるで」
「たるうぃたちが言っているよりも数段酷い事が行われていた、ぐらいは想定しておいていいと思うでチュよ」
「お、おう……マジか……」
『ユーマバッグ帝国』の上層部がそんなにお綺麗な訳はないのだから。
「と、次の相手ね」
「巨人か。名称は剛皮の巨人呪。HPは……ちょっと多いな。20万超えとる。防御も堅そうやなぁ」
「巨人と言うけれど、マントデアと同じくらいでチュね」
「だな。まあ、一般プレイヤーと比べれば巨人だろうさ」
「ブシュルルル……」
と、ゼンゼ曰く剛皮の巨人呪と言うカースが私たちに狙いを定め、近づいてくる。
剛皮の巨人呪の全身は見るからに堅そうな皮膚に覆われていて、生半可な刃物では歯が立たないだろう。
武器は持っておらず、身長は8メートルほど。
「グガアアアァァァッ!」
では、剛皮の巨人呪がこちらに突っ込んできたので、戦闘開始だ。
申し訳ありませんが、本章中では、ある程度以上の強敵でなければ、素材含めて鑑定結果は出さない予定です。
膨大な数になるので、処理しきれないのです。
06/04誤字訂正




