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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
9章:『空白恐れる宝物庫の悪夢』
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548:4thナイトメア1stデイ-1

「さて、移動しながら改めて確認しようかー」

「だな」

「そうね」

「分かったでチュ」

 イベントが始まった。

 最初に飛ばされたのは、私たちの生産用エリアとして用意された、大きな倉庫の中のようだった。

 生産設備は……私が普段使っているものと、ゼンゼが普段使っているものが用意されているようで、腕ゴーレムも何体か置かれているし、垂れ肉華シダも何本か生えている。

 マントデアの使う設備がないのは……マントデアが生産をやらないからだろう、たぶん。

 なお、私たちの異形度の平均値が採用されているのか、生産用エリアの呪詛濃度は15になっている。


「今回のイベントは大きく分けて4つのフェーズに分かれとる。今は第一フェーズ、調査の段階やな」

「この段階でやる事は、イベントマップでどんな素材が取れるか、これが一番大きいかしら」

「だろうな。採れた素材の性質、他プレイヤーの編成や動向、俺たちの生産エリア以外に街に何があるのか、他にも色々と調べる事はあるが、一番はそれだろう」

「出来る限り手早く終わらせたいところでチュね」

 生産用エリアの外には、イベント開始前に居た交流マップによく似た街並みが広がっている。

 此処は……交渉用エリアとでも呼ぶべきだろうか。

 既に多くのプレイヤーが活動を開始しているが、どうやら、それぞれの建物がプレイヤーの生産用エリアになっているらしく、許可を得なければ、他のプレイヤーの生産用エリアには入れないようだ。

 ちなみに私たちの生産用エリアは、マントデアがメンバーに含まれている都合なのか、大通りに面している。

 後、呪詛濃度が1しかなくて、ぶっちゃけツラい。


「第二フェーズは計画や」

「何を作るか、どういう材料を使うのかを具体的に決める段階ね」

「まあ、狙って作るなら、ちゃんと考えないとトラブルの元だからな」

「心の安寧を考えるなら、たるうぃに計画はさせたらだめでチュアアアアァァァァ!?」

 ザリチュ本体を抓りつつ、私たちは交渉用エリアを移動していき、素材回収用エリアの入口へと向かって行く。

 そこは広場のようになっていて、どうやらマルチエリアと1パーティ限定のエリアで入り口が違うらしく、二つの門が立っている。

 今このタイミングでどちらに行くかは考えるまでもない。


「第三フェーズは収集やな」

「計画で必要と判断した素材を集める段階ね。重要なのは、回収方法にまで拘る必要がないならば、どういう方法で集めても構わないという点かしら?」

「そうだな。自分たちで直接回収するだけが入手手段じゃない。どうにも素材取引用の掲示板が既に立っているようだし、そう言うところを利用するのもありだろう」

「後はマルチエリアでのPKもありでチュね。まあ、こっちは相手が狙いのアイテムを持っているかという点で運ゲーになるんでチュが」

 私たちはマルチエリアに突入する。

 周囲が一度濃い上にそういう加工が施された呪詛の霧に包まれて見えなくなり、晴れた後には全く別の光景が広がっていた。


「で、最後となる第四フェーズが作成や」

「私とゼンゼの腕の見せどころね」

「たるうぃが頑張りすぎると危ないでチュから、適度に手を抜くでチュよ」

「あ、俺はこの段階でも収集役な。どうせ、何それが足りない的な話になるだろうから、ちょっとしたものなら俺が集めてくる」

 マルチエリアの名前は『皇帝の明るき庭』。

 草原、森林、河川、急峻な山々と言った地形が入り混じり、様々な植物が繁茂し、動物が生活している。

 射している日光は柔らかな物で、風も穏やかなものだ。

 鑑定結果はこんな感じだった。



△△△△△

皇帝の明るき庭


その庭はまるで皇帝の威光を表わすかのように穏やかで豊かな庭。

しかし、何処か陰があるようにも感じる。

さて、何処から嗅ぎなれた臭いが漂ってくるのだろうか?


呪詛濃度:5

[座標コード]

▽▽▽▽▽



「うーん、呪詛濃度が低いわね……周囲にある植物や動物も普通のものっぽいわね」

「せやなぁ。けど、鑑定結果を見る限り、何かはありそうやな」

「さて、こうなると、俺とタルの組み合わせだな」

「まあ、それが早そうでチュね」

 では、イベントを進めるとしよう。

 『皇帝の明るき庭』については、ぶっちゃけ風光明媚なだけだ。

 私たちが求めるような、濃い呪いを帯びた素材はないだろう。


「じゃ、お願いね」

「おう」

「あ、掲示板に注意喚起の書き込みをしておくでチュ」

「ああ、必要やな。それは」

 と言う訳で、私たちが求めるような素材がある場所を、とっとと探し出すべく、私はマントデアの手の上に乗る。


「ふんっ!」

 マントデアが私を上空に向かって投げ、私は上空でそれまで閉じていた13の目を開く。

 そして周囲の地形、無数のプレイヤー、無数のモンスター、呪詛の流れ、脱出路であろうゲートのような物を確認していく。

 プレイヤーの中には私が見たためか一瞬身を強張らせているものもいるが……まあ、一瞬なので許してほしい。

 で、ある程度確認したところで、自由落下が始まり、地表に着く直前に羽ばたいて、安全に着地する。


「どうだった?」

「やっぱり『皇帝の明るき庭』には期待できなさそうね。で、呪詛の流れからして、ダンジョン……と言うよりは別マップがありそうな感じね」

「なるほどな」

「だったら、そこへ向かうのが良さそうやねぇ。案内頼めるか?」

「でチュね」

 地表に着いた私は自身の目を閉じると、見たものをマントデアたちに説明する。

 でまあ、普通ならば呪詛の流れも見たのだし、その流れに従って別マップに行くのが正解なのだろうけど……。

 うん、ちょっと試してみるか。


「そうね。案内するわ。でもその前に一つ試させて?」

「試すって何をだ?」

 私は周囲にある木々を確認する。

 そして、背が高く……よく確認すると、濃い呪いを帯びた事がある木を探し出す。


「ショートカットの作成ね」

「へぇ……」

「お、おう……」

「はい、たるうぃのやらかしRTAが始まってたでチュね」

 私はネツミテを錫杖形態にすると、『呪圏・薬壊れ毒と化す(ダマーヴァンド)』と『魔物-活性』の呪詛を先端に集めると同時に、その呪詛を元に『理法揺凝の呪海』へと繋げるつもりで操作する。

 で、その状態でネツミテの先端を樹の洞に入れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] さらっ紛れ込むナゾ植物w 「わたし垂れ肉華シダ、いまアナタ(タル)のお部屋に居るの」 >>さて、何処から嗅ぎなれた臭いが漂ってくるのだろうか? 某牛「うん この香りだ!!」 タル「帰れク…
[一言] >生産設備は……私が普段使っているものと、ゼンゼが普段使っているものが用意されているようで、腕ゴーレムも何体か置かれているし、垂れ肉華シダも何本か生えている。 「私は生産設備です」みたいな顔…
[一言] ≫やらかしRTA 開始数分ってところかな?新記録ですねこれは
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