545:4thナイトメアプリペア-4
『盛り上がっているかあぁぁ! 化け物共おおおぉぉぉ!!』
「さて、説明開始ね。聖女ハルワはこのまま此処に居ていいの?」
「問題ないわ。このまま、此処で五日間、呪限無の化け物たちが頭を悩ます……光景は想像しづらいわね。けれど、ザリア、ライトローズ、エギアズ・1と言った面々が努力する姿は見たいから」
「そう」
さて、開会式である。
と言う訳で、『CNP』運営、イベント・広報担当の万捻さんの姿が、目の前に浮かび上がっているモニターに映し出される。
それにしても五日間ねぇ。
交流マップでの観戦はもっと短いはずだが……もしかしなくても、聖女ハルワはイベントマップの何処かにサポート要員の類として入る予定なのかもしれない。
『さて、早速ですが、今回のイベントの概要について話していきましょうか』
イベントの概要については、以前にリアルでザリアと確認した通り。
イベントマップで得られる素材を使って、武器、防具、薬、道具、料理、芸術を提出し、提出されたアイテムの評価に従ってポイントを得られる。
『なお、本イベントでポイントを多く獲得すれば、それだけ次回のイベントが有利になる仕様となっております』
ちなみに次回のイベントが有利になると言うが、いいアイテムが得られる場所の近くに出やすくなるとか、ステータスにボーナスをかけられるとか、そういう話であるらしい。
『では、此処で今回のイベントの重要事項である評価基準について、ゲストである『ユーマバッグ帝国』の皇帝、ザッハーク様に説明をしていただきたいと思います』
『離せっ! くそ、何なのだこの空間、それに海月は。朕を誰だと思って……挙句の果てに朕の庭にあるものを使って宝物庫を満たすとは……このような下賤な者どもに朕が認めるような道具を作れるとでも……』
非常にイライラとした様子で先ほど情けなく逃げていったザッハークが現れる。
うーん、次回のイベントで躊躇いなくアイテムを盗れるようにするためなのだろうけど、分かり易く傲慢な皇帝という姿をしている。
『まあまあ、ザッハーク様。それよりも評価基準についてお願いしますね』
『評価基準だと? そんなもの朕が気に入るかどうか……ああくそっ、下々のものにはもう少し詳しく話さねば分からんか』
さて、肝心の評価基準についてだ。
『武器か。武器とは敵を倒すためにあるものだ。故に性能が第一となる。造形については、扱う上で邪魔になるもの、過度にみすぼらしいものでなければ特に言う事はないな。それと、複雑な機構を有し、常に制作者による整備が必要なものや、人間が扱えないようなものを良いとは思わないな』
武器は銃のような様々な部品を組み合わせて作るようなものや、カース専用武器であったりしなければ、大丈夫と。
いや、無意味に大きい物や、小さすぎるものも評価は低くなるか。
『防具。防具は己と味方を守るものだ。故にこちらも性能が第一となる。期待はしていないが、これだけ多くのものが居るのであれば、まんべんなく耐えられるものだけでなく、一つの相手に特化したものも相応に集まるだろうから、どちらも評価に値するだろう。他の注意事項は武器と変わらないな』
防具は汎用型、特化型、どちらでも問題なし。
注意事項も武器と変わらずと。
『薬。薬は評価が難しいな。薬には味方を救う物もあれば、敵を害する物もある。リスクが少ない物もあれば、リスクが多大である代わりに目的は必ず達する事が出来るものもある。どれも薬で、評価に値するものだ。そうだな。総合力とでも言うべきか』
『不老不死の妙薬などはお求めになられないのですかー?』
『ふん、誰がそんな物を求めるか。こんな場で出される不老不死の妙薬など、良くて体に害のないただの水だ』
薬は確かに評価が難しそうだ。
ただ、不老不死の妙薬のような怪しげな物は評価されづらそうだ。
まあ、それ以上に重要な事として、ザッハークは明らかに怪しい物に手を出さない程度には理性がある、これか。
『道具も薬と同様に評価が難しいな。とは言え、こちらは使う状況が固定され過ぎているものになると評価がしづらくなるだろう。朕と朕に従う『ユーマバッグ帝国』の兵士たちが遭遇しえぬ状況に基づいた道具など邪魔にしかならん』
道具は……特定のマップでしか使えない、特定の相手にしか使えない道具だと評価が低くなるのか。
高評価を得る方法については薬と変わらないだろう。
『料理はまず単純に美味い事だな。不味い料理は料理と呼ばん、ただのゴミだ。害があるものも論外。そのようなものを朕に出したならば、地の底まで兵を遣わして、その首を叩き落してくれる。十分に美味いのであれば、後は見た目か。供する皿にまで拘るといい』
料理は美味しさ優先。
うーん、此処まで聞く限り、ザッハーク個人は質実剛健……と言うより、目的を達する事を第一と考えている感じだろうか。
まあ、私は鼠毒の竜呪の肉を提供する気満々なので、ザッハークには覚悟してもらうとしよう。
『最後に芸術だな。こちらは華美な物を朕は好む。質素である事を良しとするつもりはない。その上で実用性の類もあればなお良いだろう』
芸術に実用性?
ああそうか、『ダマーヴァンド』にある呪詛貯蓄ツールのように、芸術品としての見た目と、他の機能を両立する事は可能よね。
ならば、芸術品に実用性と言うのもおかしくはないか。
『以上だ。これで文句はないな。朕は下がらせてもらう』
『はいはい、ありがとうございましたー』
その後、幾つかの補足事項が万捻さんによって説明されるが、特に問題なし。
『それでは、イベント開始です。まずはこれから五日間、共に行動するお仲間との顔合わせです。ではどうぞー!』
「じゃ、頑張らないでね。呪限無の化け物」
「全力で頑張ってくるわ。聖女ハルワ」
そして、私は二人の仲間と顔合わせするための打ち合わせ部屋へと飛ばされた。
05/30誤字訂正