540:ヒトテシャアフター-1
「さて、まずは目録からね」
『でチュね』
私はヒトテシャ討伐の目録を出現させると、その内容に目を通す。
えーと、今回手に入れた物は……
・ヒトテシャの毛皮が3枚
・ヒトテシャの角が1本
・ヒトテシャの肉が4つ
・ヒトテシャの膀胱が1つ
・ヒトテシャの血が1本
・灰固の線虫呪の皮が1枚
んー、まあ、悪くはないか。
では、実体化させて、個別の鑑定をしよう。
△△△△△
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの毛皮
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの毛皮。
金属のように堅く、生半可な炎や熱など物ともしない耐熱性を有している。
また、素早く身を動かしている時に限って、外からやって来た呪いを反射する力を持つ。
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『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの角
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの角の一部。
尋常ではない大きさに思えるが、これでも小型化されている。
生半可な金属を超える強靭さを持ち、その先端はそのまま槍の穂先として使えるほどに鋭い。
▽▽▽▽▽
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『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの肉
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:18
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの肉。
カースの肉は呪いの塊と言ってもいい、こんなものを食べても大丈夫なのは、同じカースくらいだろう。
なお、正体さえ知らなければ、誰もが絶賛する程度には味の保証はある。
注意:異形度19以下の存在が食べると100%の確率でランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇します。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの膀胱
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:16
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの膀胱。
可燃性の液体を生成、貯蔵する機関であり、仮に内部で爆発が起きても大丈夫な程度の強靭さを持つ。
名称から忌避感を抱くものは少なくない。
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△△△△△
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの血
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:18
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの血液。
尋常ではない巨体を支えるために必要な要素を全身へくまなく送れる力を持った液体。
濃密な呪いを帯びているとも言える。
なお、少々臭う。
注意:現在の容器は再利用できません。中身がなくなると共に消滅します。
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灰固の線虫呪の皮
レベル:25
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:14
灰固の線虫呪の皮。
周囲のものから視覚以外では敵と認識されないように擬態すると共に、清潔感を保つという優れた呪いを併せ持つ柔らかい皮。
しかし、表面が何処か湿っているため、好むものは少ない。
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「ふむふむ。ezeerf『灼熱の邪眼・2』」
『いつも通りに焼いたでチュねー』
鑑定完了。
では、肉を一つ焼いて、灰にしよう。
なお、灰の鑑定結果はこんな感じ。
△△△△△
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの灰
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフの灰。
呪いそのものであるカースが基になった物質であるため、周囲の呪詛を集めやすい。
焼捨と言う多くのものを焼いて捨て去る呪いに関わりがある。
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「強化は……色々された感じかしらね?」
『でチュね』
いつも通りにヒトテシャの灰、血、『ダマーヴァンド』の毒液を混合したものを作り、それを筆に付けて、毛皮、角、肉に文字を書いていき、アップデートに使う。
強化結果は……分かる範囲だと多少部屋が広くなっただろうか?
それと、セーフティーエリアの防御能力と言うか隔離能力のような物が強まった気もする。
『膀胱は使わないんでチュか?』
「そっちは『灼熱の邪眼・2』の強化に使うわ。残りの肉もそうね」
『なるほどでチュ』
残りのヒトテシャの肉と膀胱については、呪詛を集めないように処理を施した上で置いておく。
月曜日には、揺らめく硫黄の火の残り火、熱拍の樹呪の果実と共に、『灼熱の邪眼・2』の強化に使う事になるだろう。
「さて、『虹霓鏡宮の呪界』へと行きましょうか」
『分かったでチュ』
では『虹霓鏡宮の呪界』に移動。
最初のエリアについて、色々と調べてみよう。
「んー……」
とは言え、マトモな鑑定結果を得られるものは少なかった。
鑑定が出来たのはブドウに似た果実を実らせる木と、香辛料の臭いを漂わせる灌木だけで、装飾やタイル、不穏な土や血のような水は鑑定出来なかった。
で、肝心の鑑定出来た相手だが……
△△△△△
火酒果香の葡萄呪 レベル50
HP:???/???
有効:なし
耐性:毒、灼熱、気絶、沈黙、出血、小人、巨人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了、石化、質量増大、重力増大
▽▽▽▽▽
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千支万香の灌木呪 レベル50
HP:???/???
有効:なし
耐性:毒、灼熱、気絶、沈黙、出血、小人、巨人、干渉力低下、恐怖、乾燥、暗闇、魅了、石化、質量増大、重力増大
▽▽▽▽▽
「うん、喧嘩を売ったら死ぬわね」
『むしろ、死ぬで済ませてくれたら優しいまであるでチュね』
「それね」
うん、どっちも完全に格上のカースだ。
意思らしい意思こそ見せていないが、喧嘩を売ったら一瞬で殺されて、死後にまで続く呪いを負わされるに違いない。
ところで、このカースの名前の元ネタは美酒佳肴……美味い酒と美味い料理を意味する四字熟語と、千紫万紅……色とりどりの花が咲き乱れる情景を意味する四字熟語だろうか?
んー、アイテムとしての効果が気になる……交渉とかできないだろうか?
『たるうぃ、なんか、手のように枝を伸ばしているんでチュが……』
「みたいね……」
そんな事を思っていたら、いつの間にか、二体のカースから手の形のような枝が伸ばされていた。
えーと……とりあえず満腹の竜豆呪を一粒ずつ渡してみるか。
受け取った枝がそれぞれのカースへと引き戻されていく。
そして、代わりだと言わんばかりに、葡萄が一房、数枚の葉っぱ付きの枝が一本、ザリチュのつばの上にいつの間にか乗っていた。
『……。何か貰えたでチュね』
「……。そうねー」
うん、やっぱりどっちも格上だ。
だって、どちらの行動も、私もザリチュも認識出来ていないのだから。
とりあえず鑑定をしてみる。
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火酒果香の葡萄呪の果実
レベル:50
耐久度:100/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:30
火酒果香の葡萄呪に実る、葡萄に似た見た目の果実。
その果肉は地上で生きられるあらゆる生物の肉よりも美味しく、その果汁は地上で作られるあらゆる酒よりも美味しい。
訪れる酩酊は至高にして幸福なものであり、後に残る事は決してない。
そして、この幸せは口にしたもの全てに等しく訪れる。
だがしかし、やはりカースはカース。
己の欲を御すことが出来ないものが口にすれば、そのものは果実の一部と化すことだろう。
注意:注意事項は存在している。だが、現状では読み取る事は出来ない。
▽▽▽▽▽
△△△△△
千支万香の灌木呪の枝葉
レベル:50
耐久度:100/100
干渉力:150
浸食率:100/100
異形度:30
千支万香の灌木呪の枝についている枝と葉。
漂う香りは地上に存在するあらゆる香辛料を模倣する……だけではなく、この世に在らざる臭いすらも、適切に扱えば醸し出すことが出来る。
沸き立つ欲求は至上にして健全な物であり、過剰となる事は決してない。
そして、この幸せは嗅いだもの全てに等しく訪れる。
だがしかし、やはりカースはカース。
己の欲を御すことが出来ないものが嗅いでしまえば、そのものは枝葉の一部と化すことだろう。
注意:注意事項は存在している。だが、現状では読み取る事は出来ない。
▽▽▽▽▽
「使いたくても使えないわぁ……」
『色んな意味で別格過ぎるでチュよぉ……』
なお、鑑定コストは一つにつきHP30ほど。
鼠毒の竜呪の眼球で強化された『鑑定のルーペ』は大抵のものは鑑定できるが、相手のが格上だと、消費するコストが増すようになっているらしい。
しかし、その強化された『鑑定のルーペ』でも読み取れない事項があるとは……もはや恐ろしいと言う他ない。
「「……」」
「うっ、はい……その、何とか使ってみます……」
『パワハラでチュ! いや、レベハラでチュよ! これは!!』
火酒果香の葡萄呪と千支万香の灌木呪からの圧力が酷い。
渡したからにはちゃんと使うようにと言わんばかりだ。
ザリチュも明らかに震えているし、心なしかネツミテとドロシヒも怯えているように感じる。
「そ、それでは、失礼しますねー……」
『逃げるでチュ! 早く逃げるでチュよ! たるうぃ!!』
幸いと言うべきか、使い道は思いつく。
推奨レベルには全く足りないが、フレーバーテキスト的に使える可能性もあると思う。
そんな事を思いつつ、私は『虹霓鏡宮の呪界』を後にして、ログアウトもしたのだった。
なお、本体が本当にレベル50である保証はない模様(格上だから仕方がないね)
07/21誤字訂正




