54:リメイクフレイル-2
本日一話目です
「さて、まずは修復からね」
『チュー』
鉄パイプを回収した私はセーフティーエリアに戻ると、その修復を始める。
とは言え、普通に耐久度を回復させるにはアイテムが足りない。
なので、鉄パイプの穴を埋めるように、毒噛みネズミの骨や歯を削って粉状にしたものと垂れ肉華シダの葉を磨り潰してペーストにしたものを混ぜ合わせた特製の補修材を詰めていく。
勿論、現実ではこんなもので補修など出来るわけがない。
が、ここは現実ではなく『CNP』と言うゲームの世界である。
きちんと隙間なく詰め、錆の部分も覆い隠したら、呪怨台に乗せる。
「錆取りー、修復ー、丈夫になりますようにー、丈夫になりますようにー」
で、いつも通りに呪った結果がこちらである。
△△△△△
毒鼠の鉄パイプ
レベル:3
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:1
骨と鉄が合わさって出来た、金属製のパイプ。
中を通った水は毒で汚染される。
▽▽▽▽▽
「能力については気にしません。っと」
まあ、悪くはなさそうだ。
主目的である耐久度もきちんと回復しているし、武器として使える程度には錆なども無くなった、重さもちょうどいい感じだ。
歪みへこみについては、幾らかはあった方が良い感じなので問題は無いだろう。
「じゃ、これを基にしてっと」
私は毒鼠の鉄パイプに、毒噛みネズミの下顎骨や垂れ肉華シダの蔓を結びつけ、打撃部として以前と同じような加工を施した毒噛みネズミの頭蓋骨を採用する。
蔓の長さは……持ち手部分が長いし、50センチくらいにしておくか。
勿論、上手く乗せれば一匹の毒噛みネズミの頭蓋骨に見える様な細工はしておく。
「丈夫にー、とにかく丈夫にー」
で、また呪う。
私は出来上がったアイテムに『鑑定のルーペ』を向ける。
△△△△△
毒鼠のフレイル
レベル:7
耐久度:100/100
干渉力:105
浸食率:100/100
異形度:5
毒鼠の頭蓋骨を打撃部に持ったフレイル。
周囲の呪詛濃度に応じて強度が上昇する。
打撃部が命中した相手に時折毒(1×呪詛濃度)を与える。
▽▽▽▽▽
≪タルのレベルが9に上がった≫
「よし、大成功」
『チュー!』
以前の物よりも扱うのは難しくなっているかもしれないが、強力にもなっている。
私自身のレベルも上がったし、これならばイベントでも通用するだろう。
私は何度か素振りをして問題なく扱えることを確かめると、毒鼠のフレイルを床に置く。
「さて、他にも色々と作らないと」
イベントで必要になるものは他にもある。
と言う訳で、最初の頃に作ったものと同じ毒噛みネズミのトゥースナイフ。
満腹度回復の垂れ肉華シダの葉団子。
これらを作って、身に着けておく。
また、水曜日と木曜日の間にイベントの為に作ったアイテムの状態を確認。
問題が無いことを確かめておく。
「後は……六つ足蜥蜴の解体ね」
さっき回収した六つ足蜥蜴の死体の解体と鑑定もしておく。
皮は剥ぎ、肉は食い、骨は第三階層の毒液噴水で洗って綺麗にし、内臓は第三階層の子毒ネズミたちの餌として適当に放り投げておく。
ただ……やはりと言うべきか残念な成果だった。
回収できた素材の大半は毒噛みネズミのそれらよりも質が悪そうで、勝っていると言えたのは肉の味ぐらいなものである。
「残りの時間は……マイルームの垂れ肉華シダハンモック計画でも進めましょうか」
私はマイルームに移動する。
マイルームの天井は既に全面が垂れ肉華シダの苔に覆われていて、蔓も何本も垂れてきている。
私は天井の方にまで飛んでいくと、数本の蔓を根元から苔ごと剥ぎ取り、壁際の所に何本かまとめて移植。
そして移植した蔓を編んでいくことで、ハンモックのようにしていく。
「ふう、こんなところかしらね」
出来上がったのは天井から垂れた十数本の蔓によって支えられたハンモック。
蔓から生えたままになっている垂れ肉華シダの葉によって寝る場所が隙間なく埋められている事もあって、見た目は結構しっかりしている。
「うん、いい感じね」
『チュウウゥゥ……』
私は床から1メートルくらいの高さにあるハンモックに上がると、寝転がってみる。
垂れ肉華シダが生物なので空中浮遊の呪いが働く事もなく、しっかりと安定した場所で寝ている感覚がある。
これで後は垂れ肉華シダの花が咲いて、咲いたそれをハンモックに寝転がりつつ食べれれば、だいぶ優雅な眠りを味わえる気もするのだが……まあ無理か。
どうにも垂れ肉華シダの花は匂いが届く範囲にある程度以上の生物が居ないと咲かない性質を持っているようで、私とザリチュしかいないセーフティーエリアとマイルームの垂れ肉華シダが花を咲かすことは無いようなのだ。
もしも、これらの空間で無理やり花を咲かせるなら……。
「んー、魅了? 混乱? 幻惑? とりあえずこちらの数を誤認させるような方法が必要よね。イベントが終わったら一度街に行ったり、他のエリアを見に行ったりするのが良さそうだし、その際の目標として狙えるなら新たな邪眼候補として狙ってもいいかも」
今の私には無い力が必要になるだろう。
呪術の正規取得ルートがどんな物かも気になるし、やはり色々と回ってみた方が良さそうだ。
『CNP』の世界にはまだまだ未知が眠っているはずなのだから。
「明日は装備の最終調整だけして、明後日のイベントの為にやる気を養っておきましょうかね」
今後の目標を立てたところで、私はログアウトした。
△△△△△
『呪限無の落とし子』・タル レベル9
HP:1,080/1,080
満腹度:100/100
干渉力:108
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・1』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・1』
所持アイテム:
毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』
▽▽▽▽▽
04/02誤字訂正




