538:ヒトテシャ・ウノフ-3
本日は四話更新になります。
こちらは三話目です。
「さて第四段階は……」
ヒトテシャの第四段階で加わる行動は二つだったか。
「ブモウッ!」
「流石にちょっと熱いわね」
「熱いで済ませていい事じゃないと思うでチュよ!?」
一つは前足を地面に叩きつける事で、周囲の地面からマグマを噴出させる攻撃。
ちょうど今私の足元からマグマの柱が出現し、直撃したが、今の私の火炎属性耐性ならば問題なく済ませられるようだ。
HPは1割ほどしか減っていない。
「ブウウゥゥモッ!」
「問題はもう一つの方ね」
もう一つは爆弾散布に追加効果が生じる事。
具体的に言えば……
「「「ギチャアアアァァァ!!」」」
「きもいんでチュけどぉ!?」
散布された爆弾に寄生虫の卵が混じっており、それらが爆発後数秒で灰固の線虫呪と言うモンスターに成長、襲い掛かってくるのである。
そして、早速出現したらしく、長さ数メートルはある口から火を噴いている線虫が何匹も現れて、化身ゴーレムに襲い掛かり始めている。
どうやら灰固の線虫呪に小人の状態異常は入っていないらしい。
うん、都合がいい。
「たるうぃ!」
「分かってるわ。esipsed『魅了の邪眼・1』」
「「「!?」」」
『呪法・感染蔓』含め、幾つかの呪法を乗せた『魅了の邪眼・1』が灰固の線虫呪たちに直撃する。
私に畏怖の念を抱く形で魅了された灰固の線虫呪たちは化身ゴーレムたちに向けていた頭をヒトテシャの方へ向ける。
「「「ギチュアアアァァァッ!!」」」
「ブミョッ!? ブモウ!?」
「あはははっ! 残念だったわね! ヒトテシャ!」
「よし、改めて攻撃でチュ! 折角だからこの水もぶっかけてやるでチュよ!」
灰固の線虫呪たちがヒトテシャの体に食らいつく。
化身ゴーレムも奪塩奪水の水をかけ、鼠毒の竜呪の歯短剣を何度も深く突き刺し、ズワムロンソで切りつける。
私は小人、乾燥、拘束をしつつ毒を重ねると言ういつもの動きをしつつ、機を見計らう。
と言うのも……そろそろアレが来ると思っているからだ。
「ブモオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」
「チュアッ!?」
「「「!?」」」
灰固の線虫呪の召喚を諦め、単独で10分ほど暴れ回り続けていたヒトテシャが大きな声を上げる。
それと同時に周囲の気温が上昇し……ヒトテシャの全身が燃え上がって、魅了されていた灰固の線虫呪たちが焼き殺されていく。
始まったか。
「たるうぃ!」
「分かってるわ。最終段階ね」
ヒトテシャの最終段階は、マップ全域の気温が対策なしでは絶対に耐えられないほど高まる。
その上でヒトテシャの全身が燃え上がり……
「ブモウッ!」
「ごぶっ!?」
「たるうぃ!?」
脚を止めていた時間が長ければ長い程に、動き始めた時の加速度とトップスピードが一時的に増す。
それこそ、そういう能力を持っていると理解し、十分な距離を保っていた私が撥ね飛ばされるまで、ヒトテシャの突進が行われたという事実が認識出来ないほどにまで。
いやまあ、これは流石に極端な例か。
戦闘開始から今に至るまで、ずっと足止めしていたのだから。
「酷い目にあったわ……」
「ブモオオォォ……」
まあ、『死退灰帰』があるので一度だけなら問題はない。
復活も即時に出来た。
そして、一度私にぶつかったことによってか、ヒトテシャの速さはサイズ相応のものに落ち着いている。
「『虚像の呪い』。宣言する。ヒトテシャ、不要な物を焼く火でしかない貴方は、内から全てを焼き尽くす業火の槍によって燃え尽きるわ」
「ブミョッ!?」
「ええい! そろそろ終わらせてやるでチュよ!」
では再度拘束。
『熱波の呪い』による呪詛の鎖をヒトテシャに絡みつかせていく。
化身ゴーレムも巨人化した上で、ヒトテシャの首を絞めるように抱き付く。
これまでに積んできた毒もあるので、ヒトテシャが股間から高温のガスを噴出し、マップ全域にガスを貯めようとしても、それよりも早く倒す事は出来るだろう。
が、折角だから派手に行こうと思う。
「ezeerf ecafrusカラezeerf eci dloc wons liah reicalgノゴトク efil ym evas」
「ブモウッ! ブモウッ!?」
「逃がさないでチュよ!」
輝くほどに赤く燃え上がり、凄まじい速さで螺旋回転をしている炎の槍の穂先をヒトテシャに向ける。
流石のヒトテシャもこの炎の勢いには脅威しか感じないのだろう。
首に抱き付く化身ゴーレムや、全身に絡みつく鎖を外そうと激しく暴れるし、私へ溶岩、岩、舌、ナパームなど様々な物を飛ばしてくる。
「さあ! 決めるでチュよ! たるうぃ!」
だが問題はない。
溶岩は火炎耐性に阻まれ、岩は『熱波の呪い』によって作られた壁に軌道を逸らされ、舌は劣竜血の脅威を覚えていたためか牽制にしかならず、ナパームと言う名の痰程度の持つ悪臭など私にとっては今更でしかなかった。
「『灼熱の邪眼・2』!」
「ブモッ!?」
だから私はそれらの全てを無視して炎の槍を突き刺し、『灼熱の邪眼・2』を発動した。
だが、直ぐに効果を発動する事はない。
私は敢えて全身の目を瞑り、ネツミテを振るって十字を切り、ネツミテの先端を地面につけたところで堂々と宣言する。
「扱いを間違えた火は消し去らなければいけないわ。例え大火となった後でもね。だから消えなさい。私の業火に飲み込まれてね」
「!?」
私の目が開かれる。
ヒトテシャの全身を覆い尽くすように紅色の蔓が生じる。
そしてヒトテシャも、ヒトテシャに抱き付いていた化身ゴーレムも焼き尽くすような火球が生じ、周囲に強烈な閃光と爆風が放たれる。
しかし、それだけでは終わらない。
ヒトテシャの反射能力が発動し、私もまた火球に包み込まれる。
それはヒトテシャを飲み込んだ火球と混ざり合い、この場にあった形あるもの全てを焼き尽くしていく。
≪大型ボス『焼捨の牛呪』ヒトテシャ・ウノフが討伐されました。共同戦闘を終了します。報酬はメッセージに添付してお送りいたします≫
≪タルのレベルが35に上がった≫
「esaeler。終わったわね」
火球がなくなり、地面が半溶解し、溶岩のようになった空間に私の声が響く。
うん、火炎耐性を高めてある私でも、このような状況になる炎が直撃したら、流石に命はないだろう。
今でも少しずつHPが削れているくらいだし。
まあ、こうなると思っていたからこそ『虚像の呪い』を使っておいたわけだが。
『早いところ脱出するでチュよ。熱くてたまらないでチュ』
「そうね」
なんにせよ、ヒトテシャは倒した。
と言う訳で、私は戦闘エリアの外に出た。
△△△△△
『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル35
HP:1,222/4,020 (-1197)
満腹度:37/150 (-45)
干渉力:134
異形度:26 (+1)
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)、(火炎耐性ブースト)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪に並ぶもの』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・2』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』、『魔物-活性』、『反魂-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』、『埋葬の鎖』
呪術-ドロシヒ:
『虚像の呪い』、『貯蓄の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『竜鱗渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、鼠毒の竜呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、鼠毒の竜呪の埋葬袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル、『満腹の竜豆呪』ハオマ
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