530:セパレートベーノドラゴン-4
「さて、今日もやっていきましょうか」
『うーん、霧が濃いでチュねぇ……』
「それは呪詛濃度26だから当然ね」
木曜日である。
イベントはもう直ぐだが、やる事はおおよそ決まっている。
いつもの作業をしてから、鼠毒の竜呪から得た残りの素材を使ってアイテムを作成する、これだ。
「あ、五寸釘が戻って来てるわね」
『ヒトテシャ・ウノフ、討伐されたらしいでチュよ』
「本当ね。掲示板が立っているわ」
そんな事を考えつつ『貯蓄の呪い』によるHPのストックをしていたところ、『怒り呑む捨て場の呪地』に刺しておいた聖女様お手製の五寸釘がセーフティールーム内に戻って来ていた。
で、ザリチュに言われたので確認したところ、ヒトテシャ攻略掲示板が立っていた。
どうやら昨晩遅くにヒトテシャは討伐されたらしい。
「火山の地上は……ちょっと動きがあるわね」
『そうなんでチュか?』
「ええ、『入子屋敷の呪地』の入り口を見張るようにしている集団……恐らくは『ユーマバッグ帝国』の下っ端ぽい連中が居るわね」
『ようやくでチュかぁ』
他の確認事項も調べていく。
火山の地上は動きあり。
上手く、本土へと帰っていくところを目撃できれば、無限ループ突破の足掛かりになるだろう。
なお、折角なので『理法揺凝の呪海』から火山の各所に眼球ゴーレムたちをばら撒いてみたのだが、特に目立った動きはない。
ヒトテシャが討伐されたからと、直ぐに大規模な軍事行動が行われるわけではないようだ。
「ふうん、アイムさんとクカタチも自分の呪限無の攻略を完了。カース化もしたのね」
『二人ともでチュか』
『理法揺凝の呪海』に来たついでに、二人の呪限無の様子と『虹霓鏡宮の呪界』が何処にあるのかを確認する。
二人の呪限無は……少々不穏と言うか、私とは違う感じになっている。
なんとなくだが、アイムさんの呪限無は転写の呪詛、クカタチの呪限無は反魂と魔物の呪詛の影響が強くなっているように感じる。
もしかしなくても、ズワム討伐後の私と同じように『七つの大呪』に問いかけられて、選んだ感じだろうか?
まあ、現状では問題が生じる感じではないので、深く気にする必要はなさそうだが。
「あったわね」
『深いでチュねぇ……』
で、私の『虹霓鏡宮の呪界』だが……『ダマーヴァンド』及び『熱樹渇泥の呪界』を表わす星の遥か下方に虹色に輝く星が生じており、『ダマーヴァンド』との間は深緑色の細い線のようなもので繋がっていた。
なるほど、あの深さが呪限無の中層に当たる訳か。
そして『虹霓鏡宮の呪界』だが、仮称アジ・ダハーカの領域と一体化しているようにも見えた。
両者の間にはそれなりの距離があるのだが、何故だが重なると同時に同一の存在であるように思えてしまうのだ。
「……」
『どうしたでチュか? たるうぃ』
「『虹霓鏡宮の呪界』の攻略は思った以上に骨が折れそうだなと思っただけよ」
『まあ、進行するだけでも、たるうぃの邪眼術が全部3になる必要がありそうでチュからねぇ……』
『虹霓鏡宮の呪界』。
もしかしたら、その最深部に控えている呪限無の主は仮称アジ・ダハーカなのかもしれない。
今はまだ確信を持つには早い段階だが、そう考えておいても良さそうだ。
「そろそろ戻りましょうか」
『分かったでチュ』
『理法揺凝の呪海』に浮かべておいた眼球ゴーレムの回収も終えて、作業は完了。
では、本日の本題に入ろう。
「さて、まずは何が残っているかの確認ね」
『状態の方もしっかりと確認しておくでチュよ』
私とザリチュはまず鼠毒の竜呪の残りの素材の量と状態を確認する。
鼠毒の竜呪の眼球が1つ。
鼠毒の竜呪の前歯が2本。
鼠毒の竜呪の毛皮がそれなり。
鼠毒の竜呪の尾が……使い物になりそうなのは2本。
鼠毒の竜呪の翼が……使い物になりそうなのは4枚。
鼠毒の竜呪の肉が少々。
「時間経過や特性じゃなくて、風化の呪いで駄目になった感じよね。これ」
『今のセーフティールーム内の呪詛濃度はたるうぃに合わせて常時20はあるはずでチュからねぇ。数日でどうにかなるような素材でもないでチュし、幾つかは解体を終えた時点でこんな感じだったと思うでチュよ』
私は良くない感じの鼠毒の竜呪の尾、その両端を握ると、全力で引っ張ってみた。
するとそれだけで、ミシミシと言うよろしくない音が尾から響き、尾を覆う歯のような鱗の間に見える肉が裂けていくのが見えた。
うん、やっぱり駄目そうだ。
ちなみに、問題ない状態の尾で同じことをやってもビクともせず、パシンと言ういい音が鳴り響くだけである。
『で、目的の物は作れそうでチュか?』
「たぶん作れるわ。出来上がった物が私の手に負えるかはまた別問題になるけど」
『まあ、レベル40の素材でチュからねぇ』
頭の中で計算。
これから作ろうとするものに何がどれだけ必要かを考えていく。
うんまあ、何とかはなりそうだ。
「ザリチュ」
『なんでチュか?』
「とりあえずズワムを狩りに行くから、化身ゴーレムを作って」
『分かったでチュ』
『化身』を発動して、化身ゴーレムを作成する。
なお、劣竜肉の効果で私のHPが三倍になった影響で、化身ゴーレムのHPもこれまでの三倍になっている。
「そろそろ飢渇の毒砂のグレードアップ版も考えないといけないかしら?」
「考えてくれるとざりちゅとしては嬉しいでチュねぇ」
そんな事を思いつつ私と化身ゴーレムはズワムを狩りに行き、ズワムを狩れたと喜ぶプレイヤーの横を通って戦闘エリアに突入、あっさりと狩った。
複数回狩った相手なので、もう慣れたものである。
では、これで必要な物は揃った。
05/18誤字訂正




