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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
8章:『悲しみ凍る・怒り飲み込む呪地』

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527/1000

527:セパレートベーノドラゴン-2

「さて、気合を入れてやっていきましょうか」

『でチュね』

 鼠毒の竜呪の各種素材を煮溶かす形で作った鍋から、入れた時よりも明らかに軽くなった毛皮の袋と骨を取り除く。

 するとそれだけで毛皮の袋と骨は風化して、消え去ってしまった。

 肝心の鍋の中身は……虹色に輝いているし、濃い呪詛を纏っている。

 だが、鍋の中にある肉と、底がしっかりと見えるほどに透き通ってもいる。

 まあ、見た目については今更なので問題はないだろう。


「私はnamuh(ナムフ)の道を求めている。しかし、それはdog(ドグ)であり、tsaeb(ツァエブ)であり、tnalp(トナルプ)であり、daednu(ダエドヌゥ)であり、melog(メログ)であり、tnavres(トナヴレス)であり、esruc(エスルク)である」

 呪怨台に鍋を乗せる。

 呪詛支配によって、周囲の呪詛も鍋の呪詛も支配して制御する。

 調理中にも既に手を加えていたが、『七つの大呪』の力を活用する事で、より私が目的とする形へと近づけてく。


「つまりはnwonk(ンヲンク)である」

 つまりは、鼠毒の竜呪の骨、毛皮、肉、血、眼球が持つ竜呪特有の強大な呪いを抽出すると共に、私がその力を私のままに取り込めるように調整していく。

 メリットとデメリットの天秤を吊り合わせ、私の力を増せるような代物へと近づけていく。


「私は私のままに、nwonk(ンヲンク)の存在となる。namuh(ナムフ)の領域に入る。eras(エラス)anuruk(アヌルク)og(オグ) yawa(ヤワ)、私の魂に相応しき肉体よ」

 呪詛の霧が鍋の中へと吸い込まれていく。

 呪詛の密度は確実に増していく。

 合わせて、鍋の中にある鼠毒の竜呪の肉をカプセルとし、その中へと虹色の液体が濃縮された形で注ぎ込まれ、閉じ込める。


「出来たわね」

『でチュね』

 そうして鍋の底に残されたのは、親指の爪ほどの大きさを持つ肉団子だった。

 と言う訳で、摘まみ上げて鑑定してみる。



△△△△△

『虹霓瞳の不老不死呪』の呪詛薬・『劣竜式呪詛構造体』

レベル:40

耐久度:100/100

干渉力:150

浸食率:100/100

異形度:24


『虹霓瞳の不老不死呪』が作り出した、竜の力を得ることが出来る呪詛薬。

この世ならざる存在はこれほどに小さくなっても異質な空気を纏っており、ただの人が見てしまえば不帰の狂気に陥る事だろう。


服用すると、呪い『劣竜式呪詛構造体』を恒常的に取得し、異形度が5上昇する。

『劣竜式呪詛構造体』の詳細は取得しなければ分からない。


注意:異形度19以下の存在が認識すると、恐怖(1,000)を与える。この効果で与えられた恐怖は時間経過ではスタック値が減少しない。

注意:異形度19以下のプレイヤーが鑑定すると、毒(100)を与える。

注意:周囲の呪詛濃度が15以下の空間では存在できない。

注意:作成後、ゲーム内時間で10分経過すると全ての効果がなくなる。

▽▽▽▽▽



『兵器でチュか?』

「否定は出来ないわね」

 時間経過で治らない恐怖を四桁で与えるとか、ゲーム内時間10分経ったら使えなくなる効果がなかったら、割と真面目に兵器運用を考えるレベルである。

 まあ、口ではそんな事を言いつつ、既に口へとカプセルを運んでいるのだが。


「いざっ」

 そして私はカプセルを飲み込んだ。


「っ!?」

 初めに感じたのは苦味であり、熱さであった。

 そうして感じたものは直ぐに痛みへと変化し、油断すれば一瞬にして意識を飛ばされるような激痛へと変化する。

 それは文字通りに体の構造が組み変わっていく感覚。

 血が呪いを帯びて、新たな私がかつての私を呪い、傷つけ、駆逐していく。

 全身の骨の髄が灼熱の炎と苛烈な毒によって焼き尽くされた上で、消えない炎を内側に挿入され、中から炙られていく。

 肉の繊維が、神経を敢えて傷つけるように一本ずつ削がれた後に張り替えられていく。

 13ある虹色の瞳が腐り、ヘドロと化した後に新たな目が痛みと共に膨らんでいく。

 全身の毛が、それこそ産毛の一本一本に至るまで輝くように燃え上がり、鋼の針を突き刺すような感覚と共に生え変わっていく。

 言葉どころか、悲鳴も嗚咽も物理的には発することは出来ない。

 生きながらに全身を引き裂かれ、新たな体を繋げられ、かつての私がそれを拒否して悲鳴を上げる。

 死を望み、この世の全てを呪い、自分自身を呪い、呪い呪い呪い、呪い尽くしてもなお呪いが止まらない。


 ああけれどだ。

 けれど、だがしかし、それでもなお……


「ーーー……」


 私は愉悦を感じずにはいられない。


「キハッ……」


 呪いが私を圧し潰そうとする。

 私の全身を焼き尽くし、魂を穢し、心を飲みこもうとする。

 竜の炎が私を焼く、竜の爪が私を引き裂く、竜の咢が私を噛み砕く、竜の胃が私を溶かし込む。

 所詮は人間。

 不遜にも竜の力を取り込もうとした愚か者へと罰を下さんと言わんばかりに私の全てを溶かしていく。

 私と言う存在を保てない程に分解して、私ではない新たな竜呪を生み出さんとする。

 圧倒的な暴威の前では小細工など通用しないのだと言わんばかりに、私と言う存在が薄まり、消滅へと近づいていく。


 ああけれどだ。

 本当に、本当に、本当に申し訳ない事だが……


「アハハッ……」


 こんな未知に満たされた状況を私は楽しんで……いや、こんな未知に満たされた状況だからこそ、私はとても心地よいものだと感じてしまった。

 そして、此処から復帰すると言う未知に私の口は三日月を描かずにはいられない。


「アハハハハハハハハッ!」


 反転した。

 私を取り込んだ竜呪を私が取り込み返す。

 病原菌、ウィルス、プリオン、オカルト、この際表現は何でもいい。

 私と私の目が合う。

 私の手が喉に伸びて締め上げて、苦悶の表情を浮かべる。

 指の爪が皮膚を突き破り、血管を食い破り、赤い血が溢れ出る。

 気道が閉まり、神経が圧迫され、骨が折れる。

 だが死ぬことはない。

 だって私は呪い(カース)なのだから。

 未知なる道を歩むことで満ち足りる未知なる呪いこそが私。

 未知にてその身を焦がす(タルウィ)など、私の一片に過ぎず、未知(アンノウン)がために狂う事こそが我が本質。


「はああぁぁぁ……」

 しかし、同時に私は人間(プレイヤー)でもある。

 だからこそ私は熱を抑え、制し、燃え上がる炎を灯りにし、竈で燃やし、鋼をくべる炉にする。

 目先の未知に飛びつかず、予想し、予測し、予見し、先を見据える。

 だって、その方が面白いから。

 既知の道を突き進んで得られる未知など分かったものでしかないから、狂気に踊らされて得られる未知など所詮は既知の範囲内でしかないから。

 狂ったまま正気を保ち、正気のままに狂気の領域へと進んでこそ、私はこの世を謳歌出来るのだから。


「最っ高に気分がいいわぁ……」

 私は自分の首から手を放し、一度瞬きをした。

 すると私の虹色の瞳は縦長の瞳孔を持つ竜の瞳と化しており、瞳孔の奥では強烈な呪いが渦巻いている。

 だが、もう一度瞬きすると、見た目は元に戻った。

 ああ、これは色々と楽しみな事がありそうだ。


≪呪い『劣竜式呪詛構造体』を得て、異形度が5上昇しました≫

≪タルのレベルが34に上がった≫

≪称号『虹霓竜瞳の不老不死呪』を獲得しました≫

「さて、まずはスペックの確認からかしらね?」

『そ、そうでチュね……』

 あ、ほんの僅かにだが犬歯が伸びたかもしれない。

 ザリチュが微妙に怯えた声を上げるのを聞きつつ、私は笑みの隙間から見えた犬歯に対してついそんな事を思ってしまった。



△△△△△

『虹霓竜瞳の不老不死呪』・タル レベル34

HP:37/3,990 

満腹度:17/150 

干渉力:133

異形度:26 

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す(ダマーヴァンド)、遍在する内臓、劣竜式呪詛構造体(劣竜血、劣竜骨髄、劣竜肉、劣竜瞳、劣竜皮)

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓竜瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・2(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・2(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・2(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・2(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・2(タルウィミーニ)』、『淀縛の邪眼・1(タルウィボンド)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『飢渇の邪眼・2(タルウィハング)』、『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』、『魅了の邪眼・1(タルウィチャム)』、『石化の邪眼・1(タルウィペトロ)』、『重石の邪眼・2(タルウィヘビィ)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪術・原始呪術:

『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』

呪術・渇砂操作術-ザリチュ:

取り込みの砂(ザリチュメモリ)』、『眼球(ザリチュサイト)』、『(ザリチュアーム)』、『(ザリチュラット)』、『化身(ザリチュアバタ)』、『禁忌・虹色の狂創(アーリマンキス)

呪術-ネツミテ:

太陽の呪い(ノームセルブ)』、『熱波の呪い(ドロクセルブ)

呪術-ドロシヒ:

虚像の呪い(ラエルセルブ)』、『貯蓄の呪い(エサウセルブ)

呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』、『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』、『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』、『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)』、『呪法(アドン)呪宣言(ロックオン)』、『呪法(アドン)極彩円(サークル)』、『呪法(アドン)呪晶装填(ブースト)』、『呪法(アドン)逆残心(スペルビア)


所持アイテム:

『路竜の包帯服』ジタツニ、『渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『星憑きの玉輪呪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置


システム強化

呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル

▽▽▽▽▽

05/15誤字訂正

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― 新着の感想 ―
瞳孔をにんげんに戻せる辺りの描写ありきたりだけどこれが王道にして至高な感じがして好き。堪らん。
[良い点] 竜の要素が正式にデータとして実装された!! 呪限無素材を使い始めてから料理が割と美味そう。実際のところはどれもこれも食品の風上にも置けない致命的な劇毒で決して食べたくはない
[一言] アイムさんやクカタチがようやくカースになったんですね。一方その頃タルは異形度を一気に5もあげてまた先にいってますと…(遠目) 前イベントで鑑定できた人たちでもアップデートしてなければ頭弾け…
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