524:レインボウミラーパレス-4
「ヂュアッ!」
「ヂュヂュアッ!?」
「ゴボッ!?」
「たるうぃ!?」
戦いが続く中で、私は攻撃を凌ぎ損ねた。
二体の鼠毒の竜呪によって、私の顔面が噛み砕かれ、心臓を貫くように尾が突き刺さる。
普通なら死亡確定の状況だ。
「ふんぬっ!」
「「!?」」
が、『遍在する内臓』を持つ私はこの程度では死なない。
直ぐにネツミテを振るい、『熱波の呪い』による攻撃を仕掛ける事で鼠毒の竜呪を弾き飛ばすと、フェアリースケルズと『不老不死-活性』の発動によって2割を切っていたHPバーの量を戻す。
で、此処から追撃を仕掛けたいところだが……。
「ヂュルアッ!」
「ヂュアアアアアァァァァッ!」
「死ぬところだったわ! で、ザリチュ、ぼさっとしない!」
「いや、本当によく死なないでチュね……たるうぃ」
別の鼠毒の竜呪がブレスと歯飛ばしを仕掛けてきたので、それの軽減と回避を優先して立ち回る。
この間に化身ゴーレムが一番ダメージを受けている個体にズワムロンソによる攻撃を仕掛けるが、どうにも効果が薄い。
あともう少しだとは思うのだが……原始呪術も既に切らされているし、ペースを上げるか。
「即死だけは避けているのよ! pmal『暗闇の邪眼・2』!」
「!?」
『暗闇の邪眼・2』が鼠毒の竜呪に炸裂した。
それによって遂にHPが底をついたのだろう、鼠毒の竜呪は倒れ、動かなくなる。
と言う訳で戦闘開始から10分近く経ったところで、どうにか一体は倒せた。
倒せたが……
「っ!? 回収するわよ!」
「チュおッ!? 平然と復活しないんで欲しいんでチュけど!?」
「「「ヂュヂュオッ!」」」
既に鼠毒の竜呪の体は周囲の呪詛を取り込む事で、復活を試み始めている。
おまけに他の鼠毒の竜呪たちによっては当たり前の現象らしく、私と化身ゴーレムの動きを妨害するように動いている。
呪詛濃度が高すぎる為なのは分かるが、あまりにも早い。
「邪魔でチュよ!」
「ヂュゴッ!?」
「回収! 軽っ!?」
化身ゴーレムが全身でタックルを仕掛ける事によって、鼠毒の竜呪の一体を弾き飛ばす。
そうして生じた隙間へと体をねじ込む事で、鼠毒の竜呪の壁を突破し、倒れた鼠毒の竜呪の死体を素早くインベントリへと納める。
「たるうぃ! 呪詛支配はどうしたんでチュか!?」
「やっているわ! やっているけど、相手の方が格上のせいか、抑えきれないのよ! etoditna『毒の邪眼・3』」
「「「ヂュアアアアァァァァッ!!」」」
「ヂュオッ!」
三体の鼠毒の竜呪がブレス攻撃を仕掛けてくるが、これは化身ゴーレムが盾で防ぐ。
そして、一体の鼠毒の竜呪が回り込むように動き、私へと襲い掛かって来たため、私はネツミテと『熱波の呪い』によって掠り傷を負いつつも致命傷は避けて凌ぎ、反撃の『毒の邪眼・3』を叩き込む。
「ふんっ! 一体減ってもキツイものはキツイわね……」
「本当でチュよ」
「ヂュゴッ……」
で、ブレスが切れると同時に私は自分に襲い掛かって来た鼠毒の竜呪の体を無理やり仰け反らせ、そこへ化身ゴーレムが全力で剣を叩き込み、距離を取らせる。
「ボリボリ……HP、満腹度、回復、どれもヤバいわね……」
「化身ゴーレムのHPも割とヤバいでチュよ……」
「「「ヂュッヂュッヂュッ……」」」
四体の鼠毒の竜呪はこちらの様子を窺うように、私たちの周囲をゆっくりと回る。
その隙に私は満腹度の回復をしつつ、リソースを確認、『熱波の呪い』で動かしている呪詛を槍の形で統一する。
化身ゴーレムは何時でも動けるように、構えを崩さない。
なんにせよ、このままだと先にこちらが力尽きる事になりそうだ。
「5メートルよ。無理やりにでもお願い」
「分かったでチュ。行くでチュよ!」
「「「ヂュヂュアッ!」」」
ほぼ同時に化身ゴーレムと鼠毒の竜呪たちが動き出す。
化身ゴーレムが鼠毒の竜呪の一体を無理やり吹き飛ばし、『熱波の呪い』で動きを鈍らせ、残りの三体の動きを化身ゴーレムが牽制。
そうして出来た包囲の隙間から私は抜け出すと、私は弾き飛ばされた鼠毒の竜呪に向けてネツミテを振り下ろす。
「ヂュアッ」
「でしょうね」
与ダメージはほぼ無し。
が、それはどうでもいいこと。
叩かれた鼠毒の竜呪は私の事を尾で横方向に叩き、私は衝撃に逆らわず勢いよく吹き飛ばされ、毒と熱を放っている木に叩きつけられる。
こちらは重要だ。
この時点で私と化身ゴーレムによって牽制されている鼠毒の竜呪たちとの距離はギリギリ5メートルとなったのだから。
「esipsed『魅了の邪眼・1』!」
「!?」
「「ヂュオッ!?」」
鼠毒の竜呪の一体に呪詛の槍が突き刺さり、突き刺さった相手に『呪法・貫通槍』の強制付与効果が付いた桃色の光が注ぎ込まれる。
与えた状態異常は魅了(10)。
明らかに効果量が少ないが、これはたぶん『魅了の邪眼・1』の位階不足だ。
だが、今はこれで十分。
「暴れ回りなさい!」
「ヂュオオオオッ!!」
「「ヂュヂュオッ!」」
「チュラッハァ!」
「ヂュゴッ!?」
魅了された鼠毒の竜呪が全力で暴れ回り、残りの二体の鼠毒の竜呪へと襲い掛かり、足止め。
私へと襲い掛かって来た残りの一体も化身ゴーレムが足止めする。
『魅了の邪眼・1』のクールタイムが終わるまでの30秒を全力で凌ぐ。
「回復して……宣言する。鼠毒の竜呪、貴方たちに禍々しき毒の星の種をお見舞いしてやるわ!」
「「「ヂュオッ!?」」」
『呪法・呪宣言』発動。
深緑色の呪詛の円を展開する事で『呪法・極彩円』発動。
宣言通りに呪詛の星と種を作り出し、種の対象を鼠毒の竜呪の眼球に設定。
「etoditna……」
『呪法・方違詠唱』発動。
あわせて呪詛の結晶を作り出し、『呪法・呪晶装填』も発動。
「『毒の邪眼・3』!」
「「「!?」」」
そして『毒の邪眼・3』を発動。
『呪法・逆残心』は無しなので、効果は即座に発揮。
深緑色の蔓が鼠毒の竜呪の四つの目から生え、伸び、覆っていく。
四体の鼠毒の竜呪、それぞれへスタック値が5,000を超える毒を与える。
同時に蔓が次の対象を探し出せなかったことで、私に260のダメージが入るが、これは事前に回復しておいたので問題なし。
「ザリチュ! 致死毒は与えたわ! 後は耐えるだけよ!」
「その耐えるだけがきついんでチュけどねぇ!?」
今の毒のスタック値ならば、計算上は36回前後のダメージが入れば、鼠毒の竜呪は落ちる。
つまり360秒……6分耐えれば私たちの勝利となる。
「「「ヂュ……ヂュオオオオォォォ!」」」
だからこそ、その6分間で私たちを倒すべく、鼠毒の竜呪たちは全員揃って私たちの方に来る。
目からビームを、尾から歯を飛ばし、深緑色の炎を口から覗かせつつ、牙をむき出しにして、爪を振り上げ、飛びかかってくる。
「終わりが見えるだけマシ。そうでしょう? ザリチュ。『虚像の呪い』」
「それはまあ、そうでチュが」
「「「ヂュオオオオォォォッ!!」」」
私は保険として『虚像の呪い』を発動した上でネツミテを全力で振り抜く。
化身ゴーレムも弾き飛ばし、距離を保って、組み敷かれない事を第一に動き回る。
そうして6分後、鼠毒の竜呪たちは一斉に倒れ、三体の死体を回収。
一体復活されて、『虚像の呪い』と『死退灰帰』の効果も使って、化身ゴーレムも倒された上で再度倒す事となったが、どうにか私たちは勝利を収めることが出来た。
05/12誤字訂正