523:レインボウミラーパレス-3
「あー、また面倒な仕掛けを……」
私は自分の状態を確認する。
状態異常は毒(42)。
呪術のチャージは強制キャンセル。
『死退灰帰』、『貯蓄の呪い』は維持されている。
そして、背後の深緑色の鏡の扉は閉ざされ、しかも開ける気配を感じない。
まるで、これから襲い掛かってくるもの程度は凌いで見せろと言わんばかりだ。
「え、たるうぃ? たるうぃってジタツニもあるから、毒については割と強いと思ったんでチュけど。何時の間に、なんでこんなに毒を受けているんでチュか?」
「何時の間には、それが鏡の扉の仕掛けなんでしょうね。具体的には目一つ分の『毒の邪眼・3』を……いえ、『毒の邪眼・3』が撃ち込まれたみたいね」
「ああ、耐性カットと伏呪付きって事でチュか」
毒のダメージが入ると共に、体が熱を帯びて灼熱(24)が私に入る。
うん、伏呪の効果だ。
「『出血の邪眼・2』」
「いやまあ、伏呪の解除にはそれが手っ取り早いでチュけどね……」
と言う訳で、威力調整をした『出血の邪眼・2』を自分の体に撃ち込んで伏呪を上書き。
多少のダメージはあったが、これで危険度は下がった。
「それよりもよ。そろそろ来るわよ」
「……。そうみたいでチュね」
では改めて周囲を確認。
熱帯のジャングルのような環境であり、背後にある深緑色の鏡の扉を除けば、どの方向も草木が生い茂っている。
そして、生い茂っている草木はいずれも毒や熱を帯びており、迂闊に触れればそれだけで状態異常になりそうだ。
で、その草木をかき分ける音が五つ、こちらに近づいてきている。
なので化身ゴーレムは構えを取り、私は呪詛の剣を五本用意し、紫色の呪詛の円も出来る限り狭める形で生じさせておく。
「「「ヂュアアアアァァァァッ!!」」」
現れたのは五体のモンスター……いや、カース。
その姿は『毒の邪眼・3』習得時に戦った鼠ドラゴンを小型化、体高1メートルの全長2.5メートル程度にしたもの。
差異としては尾に付いている目がないぐらいだろうか。
「evarb『恐怖の邪眼・3』!」
「チュラッハァ!」
「「「!?」」」
対するこちらの攻撃は、姿を現わした直後にまずは私の『恐怖の邪眼』が鼠ドラゴン一体につき目二つか三つ分炸裂。
与えた恐怖のスタック値は……300から450程度か。
それから化身ゴーレムが追撃として、ズワムロンソを鼠ドラゴンの一体に叩きつけ、弾き飛ばす。
「「「ーーーーー!」」」
「チュおッ!?」
「っ、くっ、鑑定!」
だが、この程度の恐怖では動きを鈍らせ、呪術の使用を阻害することは出来ても、動きは止まらないのだろう。
化身ゴーレムに弾き飛ばされた一体を除く四体の鼠ドラゴンたちは、姿を現わした時の勢いそのままに私たちに飛びかかる。
それを一体は化身ゴーレムが盾で防ぎ、残りの三体……私に向かってきたそれを大きく跳び上がる事で、紙一重で回避。
同時に鼠ドラゴンの鑑定もした。
△△△△△
鼠毒の竜呪 レベル40
HP:181,327/181,327
有効:なし
耐性:毒、灼熱、沈黙、出血、小人、干渉力低下、魅了、石化
▽▽▽▽▽
「うげっ……レベル40……」
「高いでチュね……」
「「「ヂュウヂュウヂュウ」」」
鼠ドラゴン改め鼠毒の竜呪たちは奇襲が失敗すると見るや否や、私たちを囲うようにしつつ飛びかかるのにちょうどいい距離を取る。
いやうん、それにしてもレベル40か……何とかはなるだろう、たぶん。
逃げられないので、全力を尽くすだけだが。
「長期戦になるわよ。ザリ……」
「「「ッヂュアアアァァァ!」」」
「チュア!?」
「っう!?」
鼠毒の竜呪たちが口から深緑色の炎が勢いよく吐き出される。
それを見て化身ゴーレムは盾を構えたまま、鼠毒の竜呪の一体に突貫して炎を弾き、私は化身ゴーレムの後に続くことで他の炎からも逃れる事に成功する。
「『熱波の呪い』、etoditna『毒の邪眼・3』!」
「!?」
攻撃判定を得た呪詛の剣で切りつけつつ、鼠毒の竜呪に『毒の邪眼・3』を撃ち込む。
与えた毒は……1240。
これでは倒すには足りない。
せめてもう一桁必要だ。
だがしかしだ。
「「「ヂュアヂュアヂュア!」」」
「来るでチュよ! たるうぃ!」
「言われなくても!」
これ以上のリスクを負える暇がない。
鼠毒の竜呪たちが再び飛びかかってくる。
化身ゴーレムは剣と盾で飛びかかりを逸らし、弾く。
私はネツミテと攻撃判定を得た呪詛でほんの少しだけ動きを鈍らせ、避ける隙間を生み出していく。
それでも避け切れず、最初に受けた毒の効果もあって、HPが少しずつ削られ、フェアリースケルズによってHPの補給をしなければいけなくなる。
「ヂュアッ!」
「ヂュッヂュアッ!」
「ヂュブラガァ!」
「ヂュロッド!」
「ヂュアアアァァァッ!!」
「攻撃密度がエグイ!?」
「い、今は凌ぐしかないでチュよ!」
鼠毒の竜呪の動きが個体ごとに変わる。
毒ビームを目から放つもの、毒の炎を口から放つ物、爪での攻撃を仕掛けるもの、尾に付いている歯を飛ばす物、咆哮によってこちらを怯ませるものの五つだ。
私はそれをビームはギリギリで避け、炎は化身ゴーレムに防がせ、咆哮は耐え、爪はネツミテで防ぎ、歯はクッションのような呪詛の塊によって勢いを十分に削いだ。
それでも本来なら心臓と頭がある位置を正確に射抜かれ、『遍在する内臓』がなければ確実に死んでいたであろう傷を負う。
「この……ytilitref『飢渇の邪眼・2』!」
「ヂュゴッ!?」
とにかくまずは一体落として、敵の手数を減らす必要がある。
そう判断した私は『飢渇の邪眼・2』によって、既に毒を受けていた鼠毒の竜呪に乾燥(626)を叩き込む。
消費は重いが、これで乾燥と伏呪の効果によって、与えるダメージは一気に増えるはずだ。
「攻撃こそ最大の防御よ! ザリチュ!」
「分かっているでチュよ!」
「「「ヂュアアアアァァァッ!」」」
再び鼠毒の竜呪たちが飛びかかってきた。
私の操作によって生じた無数の呪詛の刃を突き破り、化身ゴーレムの剣と盾を掻い潜り、私に迫ってくる。
私はそんな鼠毒の竜呪をネツミテによって全力で叩き、怯ませ、叩いた勢いを使って、他の個体の攻撃から逃げる。
さて、どのくらいの時間がかかるのか……なんにせよ、このまま凌ぎ続けるしかない。




