511:ソルトレイク-3
「まあ、一つずつ確認していきましょうか」
「そーでチュねー」
私は白い陶器の壺に似た何かを拾う。
壺は陶器にしては軽く、質感はプラスチックに近い。
中身は重量の動き方からして、液体のようだ。
では、鑑定。
△△△△△
奪塩奪水の水
レベル:28
耐久度:100/100
干渉力:125
浸食率:100/100
異形度:15
水と塩を奪う獣の体を構築していた液体。
触れたものから大量の水、塩、呪詛を奪う呪いが秘められており、誤飲した場合には酷い事になる。
注意:一定時間ごとに接触者に乾燥(25)+脱水によるダメージを与える。
注意:現在の容器は再利用できません。中身がなくなると共に消滅します。
▽▽▽▽▽
「完全に危険物ね。支配できた暁には、持ち出し禁止アイテムに指定を……と言うか、『塩砂湖畔の呪地』の粉塩以外は一切持ち出せないようにした方がいいかしら?」
「した方がいいと思うでチュよ。このダンジョンのアイテムは基本的に危険物っぽいでチュから」
私は試しに指先に奪塩奪水の水を付けてみる。
ジタツニの効果があるので乾燥の状態異常も、ダメージも通る事はない。
だが、それでも私の体を構成する呪いが少しずつ吸われている感じはある。
今の私でこれなら、他プレイヤーや住民が触れれば、大惨事になるだろう。
「ちなみにザリチュが触れたら?」
「んー……僅かにHPは削られるでチュが、他の影響はないみたいでチュね。緊急時の脱水剤として幾つか持っておいてもいいかもでチュ」
「なるほど」
化身ゴーレムにはほぼ効果なし。
まあ、水に溶けるような物質は化身ゴーレムの体内にはないし、水分も同様。
呪詛が僅かに奪われ、HPが削れる程度で済むようだ。
ならば、『飢渇の邪眼・1』の強化に使った後も、ザリチュの言うように緊急脱水用アイテムとして持っておいてもいいだろう。
「じゃあ、水と塩を奪う獣とやらに改めて挑んでみましょうか」
「でチュね」
これでアイテムの鑑定は完了。
では、次はアイテムをドロップした水と塩を奪う獣の鑑定と、幾つかある調査するべき事項の調査と行こう。
「ザリチュ」
「分かったでチュ」
化身ゴーレムが先ほどの倍程度の大きさがある水たまりに触れる。
すると先ほどと同じ四足獣が二体、水たまりが分裂、変形する形で出現する。
「pmal『暗闇の邪眼・2』」
「!?」
二体の内一体は先程と同じように呪法付きの『暗闇の邪眼・2』によって即座に始末する。
「チュりゃあ……げっ」
「うげっ」
「SIOOO!」
そして、もう一体の四足獣に向けて化身ゴーレムが剣を振るう。
が、剣は四足獣の体を何の抵抗もなく通り抜け、僅かなダメージも与えられていないようだった。
「SIOOOO!」
「あー……スライムとミミックを合わせた感じなのかしらね。コイツ」
「クカタチとI'mBoxでチュか」
「いえ、その二人じゃなくて一般的なモンスターとしてのスライムとミミックよ」
四足獣は真っ直ぐ私の方へと向かって来て、飛びかかってくる。
私はそれを回避。
同時に化身ゴーレムが斬撃が駄目なら打撃でと、盾による攻撃を試みるが、これもまた無効化されている。
「SIOOOOOOO!」
「と言うかこいつ、ヘイト管理が特殊なタイプね。化身ゴーレムに注意を一切向けてない」
「盾殺しの類……いや、無視されるのは体に水分がないものだけでチュかね?」
ならばと化身ゴーレムはズワムロンソの効果を発動させ、呪詛の刃によって切りつける。
これは多少の効果があったようだが、それでも四足獣は化身ゴーレムの事を気にも留めず、私へと真っ直ぐに向かってくる。
どうやら条件を満たさない相手は完全無視をするモンスターのようだ。
「鑑定は……」
では肝心の鑑定結果は?
△△△△△
水と塩を奪う獣 レベル30
HP:8,372/8,731
有効:灼熱、気絶、出血、干渉力低下、恐怖、石化、重力増大
耐性:沈黙、小人、乾燥、魅了
▽▽▽▽▽
「耐性は割と穴だらけ。これ、攻撃を受けたらかなり危険なやつね」
「まあ、そうなると思うでチュ」
「SIOOOOOO!」
私が思っていた以上に穴が多い耐性なので、どの邪眼術を撃ってもそれなりに効果はありそうか。
しかし、HPがそれなりにあるのに、一撃で倒す事も可能となると、耐性に穴がある分だけ別の何かを得ている可能性が高い。
つまり、それだけ攻撃に特化している可能性も高いと言う事。
攻撃を受けるのは止めた方がいいだろう。
尤も、私のように空を飛べない場合、攻撃を避けている間に次の水たまりに足を踏み入れてしまって、新たな水と塩を奪う獣を呼び出してしまうと言う地獄のような状況になる可能性もあるし……うん、厄介極まりないな。
「何はともあれ、pmal『暗闇の邪眼・2』」
「!?」
では、鑑定も終わったので始末する。
「さてこうなってくると、やっぱりボスはアレかしら?」
「まあ、アレだと思うでチュよ」
奪塩奪水の水を二個回収した私と化身ゴーレムは、遠くの方にある大きな湖の方へ視線を向ける。
水と塩を奪う獣は、最初の水たまりからは一体出現した、今の水たまりからは二体出現した。
二つのケースの差は現状判断出来る限りでは水たまりのサイズのみ。
なので、とりあえずではあるが、大きな水たまりからは、その分だけ数が増えた水と塩を奪う獣が出現すると考えていいだろう。
「何百匹出て来ると思う?」
「何千匹の間違いじゃないでチュかね?」
では、その考えに従った場合、あの大きな湖から出現するであろう敵の数は?
とりあえず大量なのは確かだろう。
「うーん、『呪法・感染蔓』の活用は確定として、HPと満腹度が足りるかが問題ね」
「まあ、頑張るしかないんじゃないでチュか?」
「ある程度は一匹一匹の質を上げて、その分だけ数が少なくなったりして欲しいわね」
「気になるなら十匹くらい出てきそうな水たまりで試してみればいいと思うでチュよ」
「それもそうね」
まだ、情報が足りない。
そう判断した私は化身ゴーレムに小池のようにも見える水たまりに触れてもらった。
そうして出てきたのは十を超える数の水と塩を奪う獣だった。
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