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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
8章:『悲しみ凍る・怒り飲み込む呪地』
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508:タルウィミーニ・2-2

『ピンポンパンチューン』

「今回はホットスタート系っぽいわね」

 飛ばされた精神世界は床、壁、天井、階段などが煉瓦で作られた迷路のようだった。

 だが、ただの迷路ではなく、中に人一人が入って隠れられそうなロッカーや、道を塞ぐように置かれた私の腰ぐらいの高さの木箱、弄れば何かありますと言わんばかりに輝いているランプとレバー、学校に設置されている校内放送のスピーカーなども見える。

 そして、床や壁にしろ、木製の箱にしろ、不自然に揺らめいている物がある。

 うん、実に怪しい。


『館内に居る従業員に告げるでチュ。お客様がいらっしゃったので、触る事で捕縛するでチュ』

「なるほど。今回は鬼ごっこね」

 スピーカーから聞こえているのはニセムラードの声だ。

 放送内容としては従業員に指示を出しているが、これは実質的に私への説明だろう。

 それにしても鬼ごっこ……それも触れられたらアウトなタイプか……。

 かなり厄介な課題かもしれない。


『きびきびと働くでチュよ。待ち伏せの類では給料が出ないんでチュからね。次のお客様が来るまでたったの1時間。大きくなったり、小さくなったりしながら、何としてでもお客様を捕まえるんでチュ』

「ふうん……」

 待ち伏せ禁止は素直に感謝として、一か所に隠れ続けるのは駄目だと思っておこう。

 制限時間は1時間。

 ギミックとして、巨大化したり、小人化したりできると見ておこう。

 なお、今現在の私は、異形度を強制的に下げられた、ほぼバニラのアバターであり、呪詛支配も封じられている。

 つまり、純粋な身体能力と状況判断でこの場を切り抜ける必要があると言う事だ。


『では、勤務開始でチュ』

「えい」

 ニセムラードによる開始の合図とともに、とりあえずレバーを下げてみた。

 すると小人(100)が付与されて、私の体が縮んだ。

 なお、特殊な装置によるものであるためか、時間経過でスタック値が減る事はないようだ。


「ハァイ、タァルウゥゥ。借りを返しに来たよぉ?」

 そして私が小人になった直後、饅頭頭のピエロが曲がり角から姿を現わした。

 うん、ちょっと懐かしいな。

 『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』を習得する時に散々いたぶったピエロだ。


「今回はそっちからの攻撃は出来ないからねぇ。精々怯えて……は?」

 とりあえず戦うと言う選択肢は今回存在しないので、全力でピエロの居ない方へと駆け出す。

 そして移動の途中に揺らめいてる木箱に触れてみるが、触ることは出来なかった。

 どうやら揺らめいている物体は幻覚……。


「って、これは本物なの……」

 いや、実体があるもの、見た目より一回り小さいもの、実体が無いものが入り混じっているな。

 揺らめく壁に触ってみたら、薄皮一枚挟んだ先に実体があったし、揺らめく床を踏んでみたら、見た目通りの当たり判定があるものがあった。

 実に面倒くさい。

 いや、不安定な変貌と狂気を私が望んだのが原因だろうけど。

 それと、よく観察すれば、揺らめき方と光の通り方で、ある程度の判断は出来そうだ。


「逃がさないよおぉ! 恐怖させるのは私! 恐怖するのはタル! それが正しい形と言うものだからねぇ!!」

 小人サイズの私に対して、ピエロは通常サイズ。

 なので歩幅が大きく違い、ピエロはあっという間に私へ迫ってくる。

 が、今回の課題、ぶっちゃけこのピエロは怖くない。


「はい?」

「どうと言う事はないわねー」

 私はピエロが伸ばしてきた手を普通に避けると、ピエロの股下を通って、そのまま反対方向へと駆けていく。

 うん、やっぱり怖くない。

 図体は大きいし、触れないから倒すことも出来ないが、攻撃を避けるだけならそこまで難しくない。


「ぬぐあっ!?」

 と言う訳で、私は小人状態だからこそ通れる通路を通って逃げる。

 ピエロはそんな私に無理やり追いつこうとしたが、揺らめく床に足を取られて派手に転んだようだ。

 うん、今の派手に転ぶ動きは怖い。

 予測できない動きだし、早いから。

 だが、今回の課題で一番怖いのは、あのピエロではないだろう。


「やっぱり居るみたいね……急がないと」

 床が揺れている感じがある。

 地震ではない。

 何千、何万と言う軍勢が規律正しく行進している感じだ。

 私はその地響きを受け、ピエロからある程度離れた場所でランプ付きのレバーを上げる。

 すると小人状態が解除され、通常サイズに戻る。


「「「全軍……」」」

「全力で……」

 直後、私の背後、曲がり角の向こうから小人サイズの軍人が何千と現れた。


「「「突撃ぃ!」」」

「逃げる!!」

 そして軍人たちが全速力で突っ込んできたので、私も全力で走って逃げだす。

 そう、今回の課題はあくまでも鬼ごっこ。

 相手がどれだけ小さかろうと、触られたらアウトなのだ。

 そんな課題で恐ろしいのは避けるという最後の手段が通用しない面制圧の鬼。

 私の背後に居る軍人たちは正にそうだった。


「見つけたよぉ! タ……べしぃ!?」

 私はピエロの横を通り過ぎるだけでなく、適当な大きさの木箱を後ろ足で蹴って、ピエロの腹に当てて転ばせる。

 直接触れるのはアウトだが、直接触れなければ大丈夫という判断だったが、正解だったようだ。


「「「逃がすなアアァァ!!」」」

「にぎゃああぁぁ!?」

「ちっ、足止めにもならないわね。でもまあ……何とかはなるか」

 そうして転んだピエロの事など気にする様子も見せずに、軍人たちは私の方へと向かってくる。

 しかし、私と軍人たちでは一歩の大きさが全くの別物であるため、少しずつ距離が離れていき、やがて完全に撒くことが出来た。


「だいたい見えたわね」

 とりあえず今回の課題で取るべき基本戦術は分かった。

 小人サイズと普通サイズを行き来して、ピエロは小人で、軍人たちは普通サイズで撒けと言う事だろう。

 二体同時に来てしまった場合は……軍人優先で、ピエロは何とかなる。


「さて、頑張って逃げ続けないと」

 その後1時間。

 私は基本に忠実な動きで逃げ続け、無事に課題は終了した。

 実はピエロが三体居たりだとか、軍人たちが分隊を編成して追ってくるとか、ロッカーの中からゾンビが出てきたりだとかで、時折肝を冷やす事はあったが、まあ、何とかはなった。


≪呪術『小人の邪眼・2』を習得しました≫

「あ、戻ってきたでチュ」

「戻って来たわよー」

 と言う訳で、早速成果の確認と行こう。



△△△△△

『小人の邪眼・2』

レベル:28

干渉力:120

CT:30s-240s

トリガー:[発動キー]

効果:対象に中確率で小人(対象周囲の呪詛濃度)を与える。相手の許諾がある場合は必ず成功する。


伏呪

トリガー:[発動キー]

効果:この呪術の効果によって生じた小人のスタック値が減少する度に、中確率で巨人(対象の異形度)、高確率で恐怖(対象周囲の呪詛濃度)を与える。


貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど堅い守りに身を包んでいても関係ない。

全ての守りは破れずとも、相手の守りごと小さくしていってしまうのだから。

そして縮んだ体は不規則に揺らめき、不自由と恐怖を招くのだから。


自分で自分にかけた場合には、好きなタイミングで小人の解除が可能。

注意:使用する度に満腹度が3減少。

注意:伏呪使用時には更に満腹度が1減少。

▽▽▽▽▽



「チャージ時間が短くなったのと、敵対者への付与確率が上昇。伏呪を除けばそれぐらいかしら」

「でチュね」

 まあ、純粋強化と言う感じか。

 とりあえず使いやすくはなった。

 なお、伏呪使用時の発動キーは詠唱部分が『小人の邪眼(タルウィミーニ)・2(シェイキー)』となるだけで、胸の前で手を組むという動作部分に変更はない。


「でも、この伏呪、どういう意味があるんでチュか?」

「簡単に言えば嫌がらせね。小さくなった後に、体のサイズが不安定に変化するし、震えもするんだから、マトモに動き回る事も難しくなるわ」

「それはまた地味な嫌がらせでチュね……」

「こう言うのは地味な方が対処に困るものよ」

 なんにせよやるべき事はやったと言う事で、私はログアウトした。



△△△△△

『虹霓瞳の不老不死呪』・タル レベル32

HP:908/1,310 (-393)

満腹度:102/150 (-45)

干渉力:131

異形度:21 

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す(ダマーヴァンド)、遍在する内臓

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・3(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・2(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・2(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・2(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・2(タルウィブリド)』、『小人の邪眼・2(タルウィミーニ)』、『淀縛の邪眼・1(タルウィボンド)』、『恐怖の邪眼・3(タルウィテラー)』、『飢渇の邪眼・1(タルウィハング)』、『暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』、『魅了の邪眼・1(タルウィチャム)』、『石化の邪眼・1(タルウィペトロ)』、『重石の邪眼・2(タルウィヘビィ)』、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)

呪術・原始呪術:

『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』、『再誕-活性』

呪術・渇砂操作術-ザリチュ:

取り込みの砂(ザリチュメモリ)』、『眼球(ザリチュサイト)』、『(ザリチュアーム)』、『(ザリチュラット)』、『化身(ザリチュアバタ)』、『禁忌・虹色の狂創(アーリマンキス)

呪術-ネツミテ:

太陽の呪い(ノームセルブ)』、『熱波の呪い(ドロクセルブ)

呪法:

呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』、『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』、『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』、『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)』、『呪法(アドン)呪宣言(ロックオン)』、『呪法(アドン)極彩円(サークル)』、『呪法(アドン)呪晶装填(ブースト)』、『呪法(アドン)逆残心(スペルビア)


所持アイテム:

『路竜の包帯服』ジタツニ、『渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置


システム強化

呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル

▽▽▽▽▽

邪眼の種類を増やすなと言われたが、伏呪に含ませるのはセーフです。


なお、無縁のものを伏呪に入れることは極めて難しいので、実質的に制限となる模様。


04/26誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] ≫暫く舐めるといい 飴玉をすぐ噛み砕く癖があったら…… ピエロぇ……せめて虫取り網でも持って来い
[一言] >待ち伏せの類では給料が出ないんでチュからね つまり給料が出なくてもいいなら待ち伏せしてもいい 待ち伏せ禁止とはいってないんだよなぁ つまりロッカーゾンビさんはボランティアwww
[一言] 相変わらず怖さのないピエロw どう頑張ってもテラーではなくお笑い要員になってしまうピエロが好きです
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