507:タルウィミーニ・2-1
「で、わざわざ集めたって事はそういう事でチュよね? たるうぃ」
「そういう事よ。ザリチュ」
回収完了。
時間的にこの作業……『小人の邪眼・1』の強化が終わったら、今日は終了だろう。
「さて始めましょうか」
では材料の紹介。
小さな硫黄の火の残り火、『ダマーヴァンド』に生えている小人の樹の葉、シベイフミクの花弁、シベイフミクの氷、いつもの毒液……正確には『虹霓瞳の不老不死呪』の毒杯の毒液。
そして、大きな硫黄の火の残り火と垂れ肉華シダの膨葉。
「ま、今回はそこまで手の込んだものは作らないわ」
「手は込んでなくても、呪いは濃さそうでチュけどねぇ」
まずは小人の樹の葉、シベイフミクの花弁を刻んで鍋に投入。
そこにシベイフミクの氷と小さな硫黄の火の残り火も入れて、鍋が火の対象にならないように注意しつつ小さな硫黄の火の残り火を割って炎を出す。
で、炎が出ている間にいつもの毒液を投入。
『呪法・貫通槍』付きの『毒の邪眼・3』を撃ち込んで、鍋の中身を全て溶かしていく。
「砂糖と小麦粉を加えて……」
幾つかの材料を追加。
沸騰もさせて水分の蒸発を進め、鍋の中身の粘性を上げていく。
「残りの材料を投入っと」
ある程度嵩も減った鍋の中へと、大きな硫黄の火の残り火と垂れ肉華シダの膨葉を追加。
鍋の中身で良く包み込んだ上で、この二つを割って、中身を鍋全体へと行き渡らせる。
一瞬鍋の中身が振った炭酸ジュースのように吹き出そうとしたが、素早く火を消し、蓋を閉める事で、零れるのを防いだ。
「さて、いい感じになって来たわね」
「飴玉のようになってきたでチュね」
沸騰が収まったところで、鍋を程よくかき混ぜ、水分を飛ばしていく。
なお、『飢渇の邪眼・1』は使っていないが、『恐怖の邪眼・3』を『呪法・貫通槍』付きで使って、恐怖による振動で細かい粒が結集しやすくはしている。
「はい出来上がり」
と言う訳で、全体的に青白い感じの飴玉が完成した。
では、呪怨台に乗せて呪おう。
「私は第一の位階より、第二の位階に踏み入る事を求めている」
呪怨台に飴玉を乗せると共に、呪詛の霧が集まってくる。
『七つの大呪』への干渉はいつものようにやっていて、私が望む結果へ近づくように手を加える。
「私は、私がこれまでに積み重ねてきた結果生まれてきたもの、小人と巨人の力を秘めた火、恐怖もたらす花、それらを知り、統べる事で歩を進めたいと願っている」
『七つの大呪』の内、五つの活性化が出来るようになったからだろうか。
これまでよりもやりやすい感じはあるが……油断せずに行こう。
「私の小人をもたらす白色の眼に変質の時よ来たれ。望む力を得るために私は脅威を食らう。我が身を以って与える脅威を知り、喰らい、己の力とする」
白色の幾何学模様が生じる。
だが、普段のそれとは違い、巨人サイズの物、普通サイズの物、小人サイズの物で三つ発生し、入子のようになっている。
そして三つの幾何学模様は膨張と収縮を繰り返して、サイズを変えている。
「どうか私に機会を。大きな世界を生み出すだけでなく、不安定な変貌と恐怖を以って更なる災いを招く。炎のように揺らめく小人の邪眼を手にする機会を。citnagig『小人の邪眼・1』」
最後の言葉と共に乗せられるだけの呪法を乗せた『小人の邪眼・1』を撃ち込む。
それに合わせて呪怨台周辺の霧も飴玉の中へと飲み込まれていく。
残ったのは、表面が青白い小さな飴玉だった。
「さて、物は出来たわね」
「でチュね」
では、いつも通りに鑑定。
△△△△△
呪術『小人の邪眼・2』の飴玉
レベル:28
耐久度:100/100
干渉力:120
浸食率:100/100
異形度:16
呪われた毒を固めて作った飴。
覚悟が出来たならば口の中に入れて、暫く舐めるといい。
そうすれば、君が望む呪いが身に付く事だろう。
だが、試されるのは覚悟だけではなく、君自身の器もである。
さあ、揺らがぬ世界を見定めてから挑むといい。
▽▽▽▽▽
「ふむ……」
「2ならざりちゅは巻き込まれないでチュかね」
「たぶん大丈夫だと思うわ」
ちゃんと『小人の邪眼・2』なので、『毒の邪眼・3』の時のように戦闘になる事はないだろう。
しかし、戦闘にはならないだろうが……普段より難易度は高いかもしれない。
何せ、得ようとしている邪眼術の内容が内容だからだ。
「ほいっと」
まあ、挑まなければ何も始まらない。
と言う訳で、私は飴玉を口の中に入れる。
「んー、炭酸系?」
飴玉は甘く、舌の上で弾ける感触がある。
一番近いのはサイダー系の飴だろうか。
そして、フレーバーテキストに暫く舐めるといいと言う文言があったとおり、試練開始まで若干時間がかかるようだ。
普段と違って、即座に試練開始とはならないようだ。
「おっ、そろそろ来るわね……」
「頑張って来るでチュよー」
そんな事を思いつつ舐めていると、周囲にあるもの全てが大きくなっていく中で、私の意識がゆっくりと遠のいていく。
そうして私の意識は試練の場である精神世界へと誘われた。