504:マトリョーシカハウス-8
「さて、何が手に入ったかしらね?」
入子の炎呪のドロップ品はどうやら普通サイズの入子の炎呪が落とすらしく、石化して砕け散った後には青い炎のような揺らめきを持つ宝石が落ちている。
と言う訳で、鑑定をしてみる。
△△△△△
入子の炎呪のコランダム
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:19
青い炎のような煌めきを持つコランダム、サファイアとも言う。
本来は強い鎮静効果を持ち、魂や感情の混乱を鎮め、真実を見抜く直感と洞察力をもたらすと共に、知性や理性を高めてくれるとされるが、入子の炎呪と言うカースの力を内包しているために、見たものに狂気をもたらし、炎のように感情を荒立たせる魔性の石に反転・変質してしまっている。
入子の炎呪の性質による物か、宝石内部が複数層に分かれているように見える。
注意:異形度19以下のプレイヤーがこの石を鑑定すると、灼熱(100)を与える。
注意:異形度19以下のプレイヤーがこの石を鑑定すると、混乱(10)を与える。
注意:異形度19以下のプレイヤーがこの石に接触していると、一定時間ごとに灼熱(10)を与える。
注意:異形度19以下のプレイヤーがこの石に接触していると、一定時間ごとに小人(10)または巨人(10)を与える。
注意:低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(中)。
▽▽▽▽▽
「ふむ。確かに色々と飛んできたわね」
「飛んできただけで効果はなかったようでチュけどね」
久しぶりの呪われた宝石のようだ。
とは言え、異形度21である私にはデメリットの一切が通らないので、ただの複数層になっている大粒のサファイアである。
使い道は……ドロシヒの強化にはたぶん使えると思う。
ただその場合には、同じ宝石が四つぐらい欲しいかもしれない。
つまり、周回必須、と。
「えーと、ダンジョンの核は……これね」
「玩具サイズの地下室にある枷が核なんでチュか」
「まあ、直ぐにお役御免になるけどね」
『入子屋敷の呪地』の核を回収した私は、私自身をダンジョンの核に再設定する。
で、枷の方は破壊して、得た呪詛をドロシヒを通じて『ダマーヴァンド』に送り……。
「ふんっ!」
「……。何をしたんでチュか?」
「『入子屋敷の呪地』と『ダマーヴァンド』を繋げたわ」
「ええっ……何をやっているんでチュか……」
その繋がりを利用して、『入子屋敷の呪地』の入り口と『ダマーヴァンド』の第三階層を繋げた。
勿論、この二つのダンジョンの間には相当の距離があるが、『ダマーヴァンド』の第三階層は元々旧『ネズミの塔』とも繋がっているし、仮称アジ・ダハーカの領域とも繋がっていた、空間がかなり歪んでいるのである。
なので、問題なく繋げることは出来た。
なお、この二つのダンジョンの間を繋ぐ通路は小人状態であることを前提とした、とても細い穴である。
まあ、ネズミたちなら問題なく通れるわけだが。
「ついでに色々と弄ろうかしら」
「でチュか……」
折角なので、『ダマーヴァンド』第三階層と第四階層の間にあった一方通行も消しておく。
今更な感じはあるが、もうそろそろ一方通行はなくても大丈夫だろう。
「後、『入子屋敷の呪地』と火山の間の入り口も調整ね」
「チュおっと……。地上に近づけた感じでチュか」
「ええそうよ」
『入子屋敷の呪地』と火山の間の細い通路を短くすると同時に、火山側の穴の入り口を私が立てた旗の真下に移動させておく。
ちなみに相変わらず火山に立てた旗に近づく人影はない。
うーん、もしかして、私が旗を立てた場所は、メインのルートから外れた場所だったのだろうか……。
「これ、ショートカットとして使えるんでチュかね?」
「使えるんじゃないかしら。熱耐性や火山のお守りがない状態で使ったら丸焦げになるでしょうけど」
まあいい。
これで旧『ネズミの塔』、『ダマーヴァンド』、『入子屋敷の呪地』が繋がれて、上手く移動すれば、本来ならば数日かけて移動する事になる距離を一時間も経たずに移動できるようになった。
使い道は色々とあるだろう。
「……」
「どうしたでチュか?」
「いえ、何でもないわ」
うん、砂漠の方とも繋げてみようかと思ったが、それは明日以降に回すとしよう。
「えーと、今の時間は……問題なさそうね」
私は『入子屋敷の呪地』と『ダマーヴァンド』の繋がりを呪詛支配を通じて再確認する。
そうして不安定な部分を安定させると、二つのダンジョンは完全に一体化し、『入子屋敷の呪地』の核は『ダマーヴァンド』の核と同じになった。
ザリアとの待ち合わせにはゲーム内時間でまだ数時間ある。
「さて、上手くいくかしらね?」
「……。なんかヤバい事をしようとしていないでチュか?」
では、入子の炎呪撃破周回を始めるとしよう。
とは言え、相手はボス。
リポップさせるのは相当難しいわけだが……私の想像通りなら、たぶん行けるはずだ。
「再誕の呪詛……活性化!」
「やらかしやがったでチュ!?」
私は大量のDCを入子の炎呪が囚われていた枷へと集めていく。
その上で『七つの大呪』の一つである再誕の呪詛に干渉して、活性化させる。
≪呪術『再誕-活性』を習得しました≫
「「「憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ!」」」
結果、強制的にリポップさせられた三体の入子の炎呪は再び私たちの前に姿を現わした。
05/10誤字訂正