503:マトリョーシカハウス-7
「さーてリベンジマッチね」
「でチュね」
入子の炎呪に敗れた翌日、土曜日。
化身ゴーレムの再作成他、必要な準備を整えた私たちは『入子屋敷の呪地』に再び侵入、入子の炎呪が居る地下室の前にまで来ていた。
「ところで、ヒトテシャや火山からの脱出はいいんでチュか?」
「ヒトテシャはザリアたちに任せる。『ユーマバッグ帝国』への到達は監視に引っかからないから放置する他ないわ」
まあ、入子の炎呪を倒せれば、大きな硫黄の火の残り火をザリアたちに渡すべく『怒り呑む捨て場の呪地』を訪れるが、そう言うのは倒せてから考えるべき事だ。
今は入子の炎呪に集中しよう。
「では突入」
「チュアッ」
私の準備が整ったところで巨人サイズの化身ゴーレムがドアを開け、私たちは『入子屋敷の呪地』の地下室へと侵入する。
内部の状況は以前と変わらず。
入子の炎呪に変身する正体不明の人物が牢に繋がれている。
「憎イ憎イ憎イ憎イ憎イ。何故私ハ、繋ガレタママナノダ……何故私ハ……」
「とうっ」
入子の炎呪の全身が燃え上がり始める。
だが私はそれを無視して、入り口横にある普通サイズの地下室へと侵入する。
そこに居たのは、私の予想通り、普通サイズの入子の炎呪であり、化身ゴーレムの目を介して巨大サイズの入子の炎呪を見る限り、僅かな体のブレや炎の揺らめきまで含めて、動きが完全一致している。
「貴様カ……貴様ガ原因カ……ナラバ貴様ヲ焼イテ焼イテ焼イテ、焼キ尽クシテクレル!」
「行きなさい」
観察もそこそこに私は普通サイズの地下室に設置されていた小人サイズの地下室へと複数体のネズミゴーレムと眼球ゴーレムを侵入させる。
彼らのサイズは大きくても15センチ程なので、小人サイズの地下室でも問題なく侵入することが出来るのだ。
そして、小人サイズの地下室には、やはり小人サイズの入子の炎呪が居た。
さて、此処までは予想通りだ。
「貴様ヲ骨ノ髄マデ焼イテクレル!!」
入子の炎呪の枷が溶け落ち、青い炎の人間が束縛から解放される。
戦闘開始だ。
「noitulid『石化の邪眼・1』……戦闘開始よ」
「!?」
「「ナニッ!?」」
先手を取ったのは私。
戦闘を開始する前からチャージを始めておくことで、『呪法・増幅剣』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』の四つを乗せた『石化の邪眼・1』を普通サイズの入子の炎呪へと放てた。
与えた状態異常は石化(401)。
入子の炎呪の弱点だけあって、よく通ったようだ。
普通サイズの入子の炎呪は全身が石になり、冷たい石の床に転がった。
ボスであり、HPが多いためか、流石に砕け散る事はなかったが、これで普通サイズの入子の炎呪は無力化出来たと言えるだろう。
「貴様ッ!」
「ヨクモ私ヲ!」
「連動はしていない……」
だが、巨人と小人の入子の炎呪はそのままだ。
石化させた直後に鑑定もしてみたが、結果は巨人と変わらず。
どうやら、状態異常やHPは個別にあるらしい。
それと、行動不能になった時点で行動のリンクも途切れるようだ。
そして二体は私の位置をしっかりと認識しているらしく、どちらも私に向けて部屋ごと破壊するつもりで同じモーションを取り、炎を放とうとしている。
再びの特殊敗北の危機だ。
「させないでチュよ!」
「「「チュウチュウチュウ!!」」」
「「!?」」
「ナイスよ。ザリチュ!」
しかし対策は万全だ。
巨人の入子の炎呪は化身ゴーレムが炎を放とうとする入子の炎呪の腕を切り裂いて攻撃を止め、反撃も盾で防ぎ、部屋に被害を出すことなく抑える。
小人の入子の炎呪は熱拍の幼樹呪と樹皮を材料にして作った盾を持ったネズミゴーレムに四方を囲まれ、その攻撃を受け止められた。
「せいっ!」
「それほどでもないでチュ!」
「何ガ起キテ……!?」
「力ガ抜ケテ……!?」
そうして二体の入子の炎呪の動きが止まったところで私は錫杖形態のネツミテを握ると、本体と打撃部を繋ぐ呪詛の紐を操作。
ネズミゴーレムたちが抑え込んでいる小人の入子の炎呪を縛り上げる。
続けて縄部分に熱拍の幼樹呪の繊維を織り込む事で火炎耐性を上げた毒縛のボーラを持ったネズミゴーレムが突っ込んでいき、小人の入子の炎呪の束縛を強める。
これで小人の入子の炎呪も抑えた。
「後はざりちゅが頑張るだけでチュねぇ」
「5分。頑張って耐えて。そうすれば、石化で終わらせることが出来るわ」
「コ、コンナ事ガアッテタマルカアアァァ!」
残すは巨人の入子の炎呪のみ。
化身ゴーレムのスペックを考えれば、時間稼ぎはそう難しくないだろう。
「じゃあ、その前に終わらせるでチュよ」
「!?」
いや、時間稼ぎ以前の問題か。
化身ゴーレムは巨人の入子の炎呪に近づくと、呪詛の刃を展開した剣を巧みに振るい、巨人の入子の炎呪の体を刻んでいく。
巨人の入子の炎呪は反撃、それと一発逆転を賭けて部屋そのものの破壊を狙うが、そのいずれもが化身ゴーレムによって難なく潰されていく。
どうやら巨人の入子の炎呪には戦闘の経験値がまるで足りていないらしく、何も出来なくなっている。
「手を貸すわ。『熱波の呪い』」
「頼むでチュよ」
「馬鹿ナ、ソンナ馬鹿ナ……」
「コンナ……事ガ……」
「……」
ならば、とっとと倒してしまおう。
そんなわけで私は『熱波の呪い』を発動すると、複数の立方体を作り出し、それぞれの入子の炎呪に叩きつけた。
化身ゴーレムとネズミゴーレムも出来る攻撃を放った。
「「アリ得ナイイイィィ!?」」
「……」
「ま、ギミックボスのギミックが割れればこんな物よね」
「でチュね」
≪称号『石化使い』を獲得しました≫
そうして、まるで一戦目とは立場を入れ替えたような圧倒的な勝利を私たちは収めたのだった。
△△△△△
『石化使い』
効果:石化の付与確率上昇(微小)
条件:石化(100)以上を与え、石化の効果が残っている間に生物を殺害する。
私の石化の力を見るがいい。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『虹霓瞳の不老不死呪』・タル レベル32
HP:670/1,310 (-393)
満腹度:83/150 (-45)
干渉力:131
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の達人』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『石化使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』、『蠱毒-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2、長期保管用カプセル
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04/21誤字訂正