495:ボルカノトゥサウス-2
「えーと……太陽の位置からして、南はあっちね」
『位置的には火山マップの中でも中央か、中央より少し南くらいでチュかね?』
「たぶんそれで合っているわ」
とりあえず周囲を確認。
どの方角も火山が続いていて、真っ黒な煙を上げている山もあれば、真っ赤な溶岩を噴き上げている山もある。
中には間欠泉らしきものを噴き上げている山もあるし、遠目に見ても硫黄の塊そのもののような山もある。
いずれにしても、様々な火山と噴煙によって視界を遮られているため、北にあるビル街、西にある砂漠、東にある海は欠片も見えない。
「ふうむ……まあ、わざわざ山頂にはいかなくてもいいか」
『そこはたるうぃに任せるでチュよ』
私が今居る山は……北側に山頂があって、噴煙は上げていない。
全体的に硫黄臭が漂っており、時折ある窪地には丈の短い草すらも生えていない。
たぶんだが、この山の窪地にはガスが溜まっている。
「迂闊に谷に降りるのは止めた方がいいでしょうね」
『まあ、そうだと思うでチュよ』
となれば、素直に下山して南に向かうのも止めた方がいいだろう。
何処にガスが溜まっているか分かったものではない。
なお、ここまで考えたところで、生物の影がある事は、その場が安全であることを示すものではないと私は気付いた。
うん、『CNP』の世界なのだから、硫黄ガスの無効化などを呪いによってしている生物の存在は考えるべきだし、さっきのダンジョンに生息していたゴーレムやゾンビのように生物の姿はしているが、生物ではないパターンだってあるのだから。
「よし、それじゃあ久しぶりに……アイキャンフラアアァァイ!」
そんなわけで私は南の方角に向かって駆け出し、崖から飛び出して飛翔した。
『たるうぃ! 奴が来るでチュよ!』
「分かってるわ」
そして飛翔開始から10秒も経たない内にあの気配がし始めた。
そう、通常マップでの飛翔行為に対するペナルティ、お仕置きモンスター、黒影大怪鳥の気配だ。
『やれるでチュか?』
「やるのよ。ザリチュ」
「ーーーーー!」
火山の陰から奴が姿を現わす。
大きな口を広げながら、こっちへと真っ直ぐに向かってくる。
明らかに私を食う体勢だ。
だが、今の私は奴に食われたころの私とは比べ物にならない程に強くなっている。
さあ、その成果を今こそ見せる時だ。
「etoditna『毒の邪眼・3』!」
「!?」
使った呪法は四つ。
『呪法・破壊星』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』。
相手の方が格上かつ速く、何度も襲われると判断したので、使う呪法の数を抑えたのだが……与えた毒のスタック値は1,209。
結構耐性が高いようだ。
だが、以前の鑑定通りなら、奴のHPは15万にも満たない。
後は攻撃を回避し、毒を増やし、他の邪眼術で牽制と制限をすれば、十分勝負は出来る。
「ーーーーー!」
「よっと!」
黒影大怪鳥の口が勢いよく閉じられる。
私はそれを小さく旋回する事で、紙一重の回避をすると、南に向かって移動を続ける。
「さあて、追いかけっこと行きましょうか」
「ーーーーー!」
すると当然ながら黒影大怪鳥は私の後を追いかけてきて、次なる行動を仕掛けようとしてくる。
「ーーー!」
「っ!?」
次の行動は翼を使って直接叩く行動。
私はそれを宙返りに近い動きで以って回避。
黒影大怪鳥の背後を一瞬だが取る事になる。
「etoditna『毒の邪眼・3』」
「!?」
だから私は追撃を仕掛けた。
仕掛け、毒を与えた上で、急浮上を始める。
「ふふふ、あはははは……」
「ーーーーー!」
私は周囲を見る。
同じように急浮上してきた黒影大怪鳥が爪による攻撃を試みたのを見てから避けた上で、周りを見る。
周囲数百メートルの空中に私と黒影大怪鳥以外の姿はない。
地面までの距離も同様。
「さあ、本格的な空中戦と行こうじゃないの!」
「ーーーーー!」
『あ、テンション上がってきたでチュね』
好機だ。
これは好機だ。
以前から倒す機会があるならば、お仕置きモンスターを倒してみたいとは思っていた。
勿論、倒したところでメリットの類はないだろう。
だが倒せるならば倒してみたい。
倒す事で見れる未知の光景があるならば見てみたい。
だってそれが私なのだから。
「ーーーーー!!」
私の変化を感じ取ったのか、黒影大怪鳥の動きが変わる。
翼や爪、嘴による直接攻撃だけでなく、羽ばたいた翼から抜け落ちた黒い羽が、鋭いナイフのようになった上で、ミサイルのように私へと向かってくる。
「『熱波の呪い』!」
それに対抗するように私は『熱波の呪い』を発動。
黒影大怪鳥の直接攻撃を回避しつつ、打ち込まれる羽目掛けて呪詛の剣を飛ばし、撃ち落としていく。
その上で……
「黒影大怪鳥。アンタは頭を刻まれて生きていられる? 首を断たれて、血の管を裂かれて、心の臓を穿たれて、骨を砕かれて、それでも生きていられる?」
「!?」
黒影大怪鳥自身へも『熱波の呪い』による攻撃を撃ち込んでいく。
何十何百と言う呪詛の槍を作り出し、四方八方から叩き込んでやる。
威力を上げる都合上、全てを必中させられるような速度では飛ばせないが、それでも数本ずつ呪詛の槍は黒影大怪鳥の体へと突き刺さっていく。
勿論、黒影大怪鳥も反撃を試みて来るが、これまでの戦闘経験によって飛行能力を大きく増した私を捉えられるほどではない。
そして、毒による継続ダメージもあって、黒影大怪鳥の命は素早く削られていく。
私も私で『熱波の呪い』のコストが重くのしかかるが、フェアリースケルズを使ってどうにかHPを維持し続ける。
「ーーーーー……」
「esaeler……いい戦いだったわよ。黒影大怪鳥」
やがて数百の呪詛の槍が突き刺さり、毒によって命を蝕まれた黒影大怪鳥のHPは尽き、その体は重力に引かれてゆっくりと地面へ落ちて行く。
「ん?」
『あ、これは駄目な奴でチュね』
と、ここで終われば話は奇麗に終わったのだが……そうはならなかった。
「あー……こういう事になるの……」
『お仕置きモンスターは倒せても更なるお仕置きって事でチュねぇ……』
気が付けば落ちて行く途中の黒影大怪鳥の姿は消え、代わりに私を取り囲むように黒影大怪鳥が12体、姿を現わしていた。
しかも、どの黒影大怪鳥も先ほど落とした個体よりも明らかに大きく、力強く羽ばたいているし、呪詛干渉力も桁違いのようで、私の呪詛支配圏が奪われている。
うん、これは無理。
恐らくだが、一体でもデンプレロやシベイフミクよりも強い。
「とりあえず次からは真面目に地上を行くか、生かさず殺さずねぇ……」
『たぶん、後者は今回と同じことになると思うでチュよ』
「「「ーーーーー!」」」
そんなわけで、私は先程出て来たばかりのダンジョンへと死に戻りさせられたのだった。
なお、1ダースを退けると1グロスが来る模様。
04/13誤字訂正




