479:ガルフピッゲン-1
「ログインっと」
「マントデアからメッセージが来ているでチュよ」
「分かったわ」
私は『CNP』にログインする。
そしてまずはマントデアからのメッセージを確認する。
内容は……雪山のカース討伐を明日、火曜日の20時頃から始めるので、可能なら参加して欲しいとの事。
また、参加するならば、今日中に一度マントデアのダンジョンと『悲しみ凍る先送の呪地』に入って欲しいとの事。
前者はボス対策アイテムの受け取りの為、後者はボス戦が行われる場所の確認と転移場所の確保をするためだ。
「ふむ、いつもの確認を終えたら向かいましょうか」
「分かったでチュ」
と言う訳で私はマントデアのメッセージに返信。
暫く経ったら、直接マントデアのダンジョンに飛ぶので、侵入許可を出しておいて欲しいと伝えておく。
で、いつもの作業を終えて、『理法揺凝の呪海』に入ったのだが……。
「誰かが手を出し始めたみたいね……」
「みたいでチュねぇ……」
どうやらサクリベスの南東、ビル街、湿地帯、火山、海、四つのエリアの境界が重なる場所、次元が不安定な場所へ誰かが手を加え始めたようだ。
『理法揺凝の呪海』の天井から、『理法揺凝の呪海』の中へと呪詛が注ぎ込まれ、新たな呪限無が形成されようとしている。
普通の呪限無や泡沫の世界の発生とは逆の流れで、実に珍しいものだ。
「手を出すでチュか?」
「安定している感じだし、必要ないでしょ」
「そもそも手出し無用の案件だ。もしも手を出そうと言うのであれば、排除という裁定を下す」
「チュアッ!?」
「だから手を出さないって……」
いつの間にか仮称『裁定の偽神呪』が背後に居る件は置いておくとしてだ。
私は発生しつつある呪限無をよく見る。
場所もあってか、湯気のようなものを纏っているようにも見えるが……もしかしなくてもクカタチが作成中なのだろうか?
完成しきったら、メッセージを送ってみるとしよう。
「さて、マントデアのダンジョンに向かうわよ」
「分かったでチュ」
では、マントデアのダンジョンへ移動。
マントデアのダンジョンは電気を纏っているように見えるのだが、私の侵入許可を出してくれたのか、危険性は感じられず、接近しても感電することはなさそうだ。
「で、どうやって入るんでチュ? 未知のダンジョンだから、適当に開けたら大惨事でチュよ」
「ああ、大丈夫よ。この前のボス討伐で、サクリベス地下に行ったときにコツは掴んだ……と言うより、安全な手段は確立できたから」
私はマントデアのダンジョンを表わす星に近づくと、眼球ゴーレムを『呪法・貫通槍』付きの『小人の邪眼・1』によって、無理やり小さくした上で投入する。
呪詛濃度差もあって眼球ゴーレムは勢いよく吹き飛ばされ、ダンジョン内に入っていくが、サイズが小さく、質量も軽いため、壊れることなく着地、ダンジョン内の情報を私とザリチュに伝え始める。
「へー、こんなダンジョンなのね」
「電気、砦、石と金属……正に前線基地と言う感じでチュね」
マントデアのダンジョンはザリチュの言う通り、前線基地と呼ぶにふさわしい様相になっている。
通路や壁は石、コンクリート、金属を組み合わせたもので、見るからに強固そうで、サイズも大きめだが、飾り気は少ない。
明かりは偽物の空に浮かぶ太陽だけでなく、電灯が壁にかけられている。
天候は晴れで、雪は積もっているもの含めて見えないし、床には暖房が入っているようで温かい。
プレイヤーの数は少ないが、まるでサクリベスの四方にあるセーフティエリアのような賑わいを見せている。
このダンジョンの外が雪山の真っただ中と考えると、ここは色んな意味で重要な場所になっていそうだ。
「小人化解除。呪詛濃度上昇」
では中に入ろう。
と言う訳で、眼球ゴーレムの視界を介して呪詛を集めて、直径2メートル近い呪詛の霧の球体を作成する。
この際、この球体は可能な限り真球に近づけて、圧力に対して強くなるようにする。
「『orijot、orijot、jyugemuno itugiri』」
開門、『理法揺凝の呪海』からダンジョンへ移動。
「『ekarih、ekarih、oyirukak nomon』」
そして、門をしっかりと閉じたら、呪詛の霧を散らして、安全を確保する。
「はい、侵入成功」
「でチュね」
「いや、正面から来てくれ。管理ツールの方にアラートが出てたぞ」
「じゃあ、侵入は失敗ね。転移は成功だけど」
と、呪詛の霧を散らしたところで、デンプレロとの戦いで見た覚えがある巨大化持ちプレイヤーたちを引き連れたマントデアたちがやってくる。
マントデアの表情は四つ目の虫系の顔と言う異形の都合で割と分かりづらいのだが……呆れている気がする。
「リーダー」
「ああそうだな。タルだったから問題はない。もう散ってくれていいぞ」
「ういっす」
「じゃっ」
「さーて、最後の追い込みをしないとな」
マントデア以外の面々が散っていく。
「とりあえずアイテムの受け取りと……打ち合わせもするべきかしらね?」
「そうだな。打ち合わせもしておこうか。こっちだ」
「分かったでチュ」
そして私はマントデアに連れられて、ダンジョンの奥へと向かって行った。




