476:フェイクサン-5
「へぇ、こうなるの」
『熱波の呪い』発動と同時に、私は熱を持った黒色の半透明な帯のようなものを纏う。
また、オレンジ色の火の粉のような物も周囲には飛び散り始める。
で、HPが結構な勢いで減り始める。
「じゃ、とりあえず一発」
「チュブヲ!?」
急いで効果を検証する必要がある。
と言う訳で、適当に呪詛を束ねて、レーザーのように発射。
呪詛のレーザーはこちらに向かって来ていた毒頭尾の蜻蛉呪の頭を撃ち抜き、『太陽の呪い』の範囲外で舞っている飢渇の泥呪たちを焼いて消滅させながら、私の呪詛支配圏の外に出たところで霧散した。
「チュブラガァ!」
「む……」
が、毒頭尾の蜻蛉呪にはあまり効いていないようだ。
完全に頭を貫通したのだが、毒頭尾の蜻蛉呪が『遍在する内臓』相当の呪いを持っている事を加味しても、殆どダメージがないように感じた。
「せいっ」
「チュブラガァ!」
私は周囲の呪詛をとにかく動かして、ダウンバーストのように毒頭尾の蜻蛉呪に叩きつけて見る。
だが、毒頭尾の蜻蛉呪は私の攻撃を意に介した様子もなく突っ込んできたし、効果範囲内に居た飢渇の泥呪たちも半分くらいしか倒せていない様だ。
「おっと……ほいっ」
「チュブラガ!?」
続けて呪詛の剣を生成して飛ばす。
今度は怯んだ。
しかし、貫通させようと思っても、本当に突き刺さっているような感覚があって、操作を止めることは出来ても、引き抜くことは出来そうにない。
「これは厄介な仕様が隠れている感じがあるわねぇ……」
「でチュか」
「チュブンゴ!?」
毒頭尾の蜻蛉呪の周囲にある呪詛を操作。
相手を取り囲むように呪詛の剣を50本ほど生成して、先ほどと同じぐらいの勢いで突き刺そうとした。
が、刃は殆ど通らず、軽いジャブを剣の本数だけ繰り返したような感覚がある。
「チュブラガァ!!」
「さて、どうした物かしらね?」
私は毒頭尾の蜻蛉呪の攻撃を避けると、フェアリースケルズを使ってHPを補給しつつ、さらに幾つかの攻撃を放つ。
ハンマー型の呪詛、球体型の呪詛、槍型の呪詛と言った物の投擲から始め、相手の目の前に壁を生成したり、ギロチンのように刃を落とす、無数の矢玉を全方位から速度を変えて撃ち込む、わざとゆっくりと動かした呪詛の塊を叩きつける、呪詛の剣を手に持って切りつける、相手の頭を掴んで直接送り込んで爆破するような動きまでやってみた。
「チュブラガ……」
「esaeler」
そんな感じに、とりあえず思いつく範囲で一通り試し終わったところで、毒頭尾の蜻蛉呪が倒れ、落ちていった。
なので私は『熱波の呪い』の解除キーを唱えて、発動を終了する。
「何と言うか……ある意味『CNP』らしい呪いね」
「らしい呪いでチュか」
一応の使用感覚は掴めたので、実戦で使うのも問題はないだろう。
が、この呪術……それなりに考えて使う必要がありそうだ。
「たぶんだけど、『熱波の呪い』のダメージ計算式には単純な物理演算と『CNP』特有の呪術的な計算が入り混じっているのよね」
「ふむふむでチュ」
正確な検証は検証班に任せるが、把握できている範囲で仕様をまとめていくとしよう。
「入り混じっているのが分かり易いのは速度、密度、サイズ辺りね。相手が回避不可能なものにすると、目に見えて火力が落とされるわ」
「そう言えば、最初の一撃は殆ど効果がなかったでチュね」
「だからと言って、速度を落とし過ぎたりすると、それはそれで威力が落ちるわ」
「ゆっくり動かした呪詛の塊も確かに効果は低かったでチュねぇ」
単純な物理演算だけで話をするなら、最初のレーザーは相性面で微妙だったかもだが、無数の矢玉を撃ち込んだ時には高速で撃ち込んだ物ほどダメージが多くなるはずである。
また、剣の数が一本だろうが、何十本とあろうが、剣一本当たりのダメージは変わらないはずである。
が、現実には無数の矢玉はどれも威力が変わらず、何十本もある剣は一本の剣よりも浅くしか入らなかった。
この点から考えて、相手の回避が不可能なレベルになると一気に火力が落ちるのが分かる。
ゲームの仕様と言ってしまえばそれまでの現象だが、この現象をきちんと考える事こそが、大ダメージを出す秘訣になるし、呪術と言う物について知る手掛かりにもなる。
「呪術の基本はやっぱりリスクとリターンなのよね。リターンを大きくすればするほどリスクも大きくなる。リスクを抑えればリターンも少なくなる。自分にとって都合のいい内容へとリスクを誘導する事で、結果的にリスクを抑えることは出来るけれど、それでも基本は揺らいでいないのよ」
「たるうぃの邪眼術はどうなんでチュか? 割と釣り合っていない気がするでチュけど」
「邪眼術には消費がそれなりにあるし、プレイヤー自身が習得する呪術については習得時の難易度もリスク設定に関わりがある。それだけの話よ。ああでも、自分で思いついたとかのボーナスもあるかもしれないわね」
「確かにありそうでチュねぇ」
まあ、私にとっては再確認の面が大きいが。
どちらかと言えば、これはライブ配信を視聴している他のプレイヤーへの言葉だ。
「さてそうなると、一番火力が出る組み合わせは……普通サイズの呪詛の剣を私が握って、それを相手が認識できるレベルの最高速で振るう。かしらね」
「認識出来たら避けられるんじゃないでチュか?」
「そこは他の搦手で何とかするだけよ。とにかく相手に呪われた、切られた、そういう認識をしっかりと持たせる必要はあると思うのよね。とりあえず回避不可能攻撃にすると弱体化されるわ」
「だったら、そこに『灼熱の邪眼・2』を乗せるとかもありでチュかね」
「たぶん有りね」
問題は最大ダメージパターンが私の考えた通りなら、私には実現できないという事だ。
なにせ、マトモに武器を振れないからこそ、今の私があると言っても、あながち間違いではないし。
「とりあえず今日明日を使ってひたすら検証かしらね……。火炎属性と呪詛属性の攻撃判定を有するようになると書いてはあったけど、火力を上げたり、呪いの密度を上げたりも出来るかもしれないし。身動きが取れない相手や、周囲の知覚をしているか怪しい相手でも同じ仕様なのかとか、色々と調べる必要がありそうだから」
「まあ、色々と試してみればいいんじゃないでチュか?」
その後、本当に今日明日の二日間を丸々使って検証をする事になった。
まあ、こう言うのは使い道があるかどうかではない。
ある種の基礎研究のようなものであり、未知の探求である。
予期せぬ出会いもあって……つまり、私的にはとても楽しかった。
△△△△△
『虹霓瞳の不老不死呪』・タル レベル32
HP:322/1,310 (-390)
満腹度:88/150 (-45)
干渉力:131
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の名手』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『禁忌・虹色の狂創』
呪術-ネツミテ:
『太陽の呪い』、『熱波の呪い』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2
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03/25誤字訂正




