474:フェイクサン-3
「お、来たでチュね。たるうぃ」
「来たわよ。今日は仕上げね」
はい、土曜日である。
今日最初にやる事は決まっている。
昨日から作っている晴れを生み出すためのアイテム作成の仕上げだ。
なお、Expブースターと『死退灰帰』の効果は既に切れているので、そういう面では少々残念な点もあるが……まあ、仕方がない。
「さてどうなって……」
では、箱の中に置いておいた毛皮の球体の様子を確認しよう。
垂れ肉華シダの蔓を外し、熱拍の幼樹呪製の箱の蓋を開ける。
「む……」
「チュア?」
そして、早速の異常発生である。
何故か箱の中に収めておいた飢渇の毒砂が消滅していて、高密度の呪詛と毒素を纏っている黒い球体だけが箱の中に収められている。
「飢渇の毒砂は……吸われたんでチュかね?」
「かもしれないわね。うわっ、なんか重くなっているし、中で回っているような感触がある……」
「手伝うでチュよ。たるうぃ」
ザリチュに手伝ってもらって、黒い球体を箱から取り出す。
黒い球体は見た目の変化も明らかだが、入れた時よりも重くなっているし、手触りも毛皮や革よりも鉱物っぽく、内部で色々な物が動いている感触がある。
何だろうか……小型の惑星と言うか、恒星と言うか……とにかくそんな感じだ。
まあ、目指しているアイテムの内容から考えれば、都合はいいか。
「これを呪怨台に乗せるんでチュか?」
「ええ。もう他に施したい処理はない……と言うより、これ以上の処理はちょっと怖いから、とっととアイテム化しちゃうわ」
「分かったでチュ」
ザリチュが化身ゴーレムと腕ゴーレムを使って、黒い球体を呪怨台に乗せる。
私はネツミテを持つと、直径1メートル程の紅色の呪詛の円を展開する。
「ezeerf、ezeerf、ecafrusカラezeerf! eci、dloc、wons、liah、reicalgノゴトク! efil、ym、evas、『灼熱の邪眼・2』」
呪怨台へと呪詛の霧が集まっていく。
私はそれらに干渉しつつ、どういうアイテムにしたいのかという考えを込める。
その上で呪詛の剣と種を生み出すと、『呪法・呪宣言』以外で同時に乗せられる全ての呪法を乗せて、『灼熱の邪眼・2』を黒い球体へと放ち、一気に加熱する。
ターゲットが足りなくなって中断された『呪法・感染蔓』の反動は返ってくるが、これは必要な事なので受け入れる。
「なんか凄い事になっているでチュね……」
「そうね。ガスを主体とした惑星が出来上がるのを見ている気分よ」
霧に阻まれて見えないが黒い球体も、巨大な渦を巻いている呪詛の霧も、どちらも加熱され、炎と化し、赤く輝くと共に周囲へと熱波を放つ。
その中でまた異常が起きた。
「は? え、ちょっ……」
「ネツミテが砕けたでチュ!?」
私の持っていたネツミテが唐突に砕け散り、呪怨台に乗っているはずの黒い球体へと飲み込まれてしまった。
耐久度が0になった感じではない。
そういう仕様であるかのように砕けて飲み込まれてしまった。
「あ、もしかして太陽に捧げる……」
「そう言えば、そういう称号持ちだったでチュね……」
原因は直ぐに分かった。
ネツミテの称号は『太陽に捧げる蛇蝎杖』。
そして私が作ろうとしているのは、晴れをもたらすもの……ある種の太陽である。
まさかのフレーバー要素が原因なようだ。
「まあ、飲まれてしまった以上は仕方がないわ……」
「武器にもなるように念じておくでチュよ。たるうぃ」
「もう手遅れでチュよ。ザリチュー」
幸いにしてアイテム化は成功したようで、呪詛の霧は呪怨台の上に乗っている何かへと収束していく。
そうして霧が晴れた後に私が目にしたのは、赤い宝石が填まった黒い指輪だった。
「随分と小さくなったわね」
「でチュねぇ」
赤い宝石を填めている爪のデザインは、よく見るとズワムが宝石に噛みついているようなデザインになっている。
また、基本的には黒い輪なのだが、ジタツニと同様によく見ると微かに虹色を帯びている。
とりあえず指へ填める前に鑑定をしておこう。
△△△△△
『陽憑きの錫杖呪』ネツミテ
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:20
様々な素材を組み合わせて作られた、着用者の意思に応じて様々な姿を見せる杖にして指輪。
この世ならざる者に通じる気配を漂わせており、正当な所有者以外が着用すれば、恐ろしい呪いに襲われる事だろう。
与ダメージ時:毒(周囲の呪詛濃度×2+10)、干渉力低下(周囲の呪詛濃度-3)、灼熱(周囲の呪詛濃度×3)、乾燥(周囲の呪詛濃度) ※これらの効果は錫杖形態でのみ効果を発揮する。
周囲の呪詛濃度と気温に応じて強度が上昇する。
装備者による火炎属性攻撃の威力が12%ほど上昇する。
装備者による呪詛属性攻撃の威力が12%ほど上昇する。
装備者の周囲15メートル以内に存在する呪詛の支配を助ける。
周囲の呪詛、エネルギーの一部を吸収する事で耐久度が回復する。
耐久度が0になっても、一定時間経過後に復活する。
装備者の意思に応じて、指輪形態と錫杖形態、どちらかの形態に変形させる事が可能。
自己意思こそないが、呪いの塊であるその身は幾つかの呪術を習得しており、装備者がトリガーを引くことで使用が可能。
『太陽の呪い』『熱波の呪い』
注意:この装備をタル以外が装備した場合、1分ごとに着用者の最大HPと同値の恐怖が付与される。
注意:装備者は一定時間ごとに火炎属性ダメージ(微小)、灼熱(周囲の呪詛濃度)の状態異常を受ける。
注意:装備者の異形度が19以下の場合、1分ごとに火炎属性ダメージ(大)を受ける。
注意:装備者のレベルが29以下の場合、1分ごとに重力増大(周囲の呪詛濃度)を受ける。
注意:この装備の周囲の呪詛濃度が10以下の場合、着用者の受けるダメージが増える(極大)。
注意:この装備を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(極大)。
▽▽▽▽▽
「カース化してる……まあ、問題はなさそうだから、使うけど」
「ざりちゅの後輩と言う事になりそうでチュね」
私はカースと化したネツミテを右手の人差し指に填める。
すると、指に填めたネツミテが微かに震えたかと思えば、高温を纏った大量の呪詛を私の顔に向かって放とうとする。
「あん?」
「あ、黙ったでチュ」
が、恫喝するような気持ちで一睨みして、呪詛の支配を強めてやると、それだけで高温の呪詛は散り、ネツミテの震えも止まって、大人しくなった。
流石はカースと言うべきか、指輪になっても格下に従う気はないと言う事だろうか。
他の条件を満たし、デメリットを受け入れても、呪詛干渉能力が足りない奴に使われる気はないとも思える。
なんにせよ、私に大人しく従うのであれば、何も問題はない。
「さて、まずは性能テストね」
「分かったでチュ」
では、色々と確かめるとしよう。
指輪と錫杖、二つの形態を持っているとはどういうことなのか。
私が今のネツミテの元になった黒い球体に求めていた条件を満たせるのかどうか。
『呪法・方違詠唱』の法則に従えば、『月の祝福』、『冷気の祝福』と言う言葉の反対の効果を持ちそうな名称の呪術はどんなものなのか。
確認の為に、私は敢えて飢渇の泥呪の海が今も荒れ狂っているであろう『熱樹渇泥の呪界』へと向かった。
03/23誤字訂正




