473:フェイクサン-2
「では、まずは新しく手に入れた素材の鑑定からね」
「えーと、デンプレロの爪、紋章殻、鋏でチュね」
私はデンプレロの討伐報酬目録を取り出すと、それを放り投げて素材を出現させる。
そして、見た事のない素材へと『鑑定のルーペ』を向ける。
△△△△△
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの爪
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの爪の一部。
尋常ではない大きさに思えるが、これでも極一部でしかない。
鋭く、重く、砂地でも岩場でも、壁でも天井でも、しっかりと踏み締めることが出来る。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの紋章殻
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの甲殻の一部。
尋常ではない大きさに思えるが、これでも極一部でしかない。
呪詛に触れると帯電、発光する奇妙な文様が刻まれている。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの鋏
レベル:30
耐久度:100/100
干渉力:130
浸食率:100/100
異形度:15
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの大きな鋏の一部。
尋常ではない大きさに思えるが、これでも極一部でしかない。
大量の空気を蓄えると共に、蓄えた空気を一度に放出する事も出来る。
また、甲殻以上に堅い。
▽▽▽▽▽
「しっかりと踏み締める……」
「と言う割には結構簡単に落ちていたでチュよねぇ……」
「攻撃されたら別、と言う事なのかしら」
「かもしれないでチュね」
私はザリチュと会話しつつ、今回手に入れた他のアイテムたちのフレーバーテキストを思い出したり、改めて鑑定していく。
で、確認したフレーバーテキストを基に、目標とするアイテム……周囲の天候をよく乾いた快晴に変えるようなアイテムにどうやって近づけるかを考える。
「んー……行けるわね」
脳内作成完了。
たぶん行ける。
「よし、始めるわよ」
「分かったでチュ。え、それを使うんでチュか?」
と言う訳で、まずは熱拍の竜樹呪の心材の余りを持ってくる。
「ええ、使うわよ。と言う訳で、これを骨組みにするわ」
私は熱拍の竜樹呪の心材を加工していく。
削るだけでなく、加熱して曲げたりもしていく。
出来上がった見た目としては……四重の円になるのだろうか?
中心の円には熱拍の樹呪の果実を納められる窪みを作り、しかも常に水平を保つようにした。
で、ある程度の距離を取って中心の円を囲うように、複数のパーツを設置できるように窪みや穴を作った三重の円を作った。
んー、地球儀に近いだろうか?
とりあえず大きさとしては、直径50センチほどだろうか。
私の体の大きさだと、持ち運びは抱えるような形になる。
「うわ、面倒くさい事をしているでチュね……」
「でも、こう言うのが必要な事よ」
なお、外側の三重の円には、装飾として『呪法・方違詠唱』に基づく文章を刻み込んでいく。
勿論、表裏両面であり、ザリチュが面倒くさいという程度には緻密である。
「これで骨組みが出来たから、パーツを設置してと」
カロエの目と歯、デンプレロの棘と爪と紋章殻、ズワムの歯と鱗、と言った素材を加工して、パーツにしていく。
そして出来上がったパーツを予め作った窪みや穴にセットしていき、熱拍の幼樹呪の樹脂で固めて、しっかりと固定していく。
「こうなってくると、何かの機械みたいでチュね」
「まあ、ごちゃごちゃとしているのは否定しないわ。さ、此処については腕ゴーレムたちの出番よ」
「あ、久しぶりでチュね」
此処でズワムの毛皮を取り出すと、しっかりと鞣す。
それから腕ゴーレムを利用して、ズワムの毛皮へと刺繍を施す。
使う糸は毎度おなじみの、垂れ肉華シダの蔓、喉枯れの縛蔓呪の蔓、熱拍の幼樹呪の樹皮、それぞれの繊維を撚って作った糸である。
刺繍の内容は骨組みの装飾と同じで、『呪法・方違詠唱』に基づいたものである。
「組み立ててっと」
熱拍の樹呪の果実を骨組みの中央にセットする。
熱拍の樹呪の果実は膨大な熱量を放っているが、熱拍の竜樹呪の心材ならば問題なく耐えられるようだ。
他のパーツも距離があるので問題は無し。
そして、骨組みを覆うように、刺繍を施したズワムの毛皮をセットし、熱拍の竜樹呪の心材の端材を使って固定する。
隙間は……刺繍の際に開いた穴ぐらいだが、これぐらいなら大丈夫だろう。
「さて、注ぎましょうか」
「えげつない液体を作ったでチュねぇ……」
と言う訳で、『ダマーヴァンド』の毒液……より正確には『虹霓瞳の不老不死呪』の毒杯が生成した毒液をメインとして、『出血の邪眼・2』で回収した私の血、ズワムの血と油、デンプレロの毒腺を混ぜ合わせ、一つにした液体を作成。
そこへズワムの肉一つとデンプレロの肉一つをミンチにしたものを投入し、『呪法・貫通槍』の強制付与を使った『毒の邪眼・3』によって、粘性はあるが、固形物のない液体にした。
で、これを毛皮の中へと注ぎ込んでいく。
「うわ、ボコボコ言っているでチュね」
「熱拍の樹呪の果実の熱で沸騰しているっぽいわね……」
毛皮の中に入れた液体は直ぐに沸騰し、注ぎ口からは毒と呪詛を含んだ蒸気が噴き上がっている。
毒については私と化身ゴーレムには効かない程度なので無視。
呪詛については支配をして、毛皮の中に戻す。
「よし、注ぎ終わり。きっちり口を閉じて……」
液体を注ぎ終わったところで、私は毛皮の穴を糸で閉じる。
そして、飢渇の毒砂を敷き詰めた熱拍の幼樹呪製の箱に収めて、上から毛皮が見えない程に飢渇の毒砂を投入し、箱の蓋をしっかりと閉じた。
更に垂れ肉華シダの葉付きの蔓を箱へ巻き付け、これも固定する。
「で、これからどうするんでチュか?」
「んー……明日の朝まで放置しましょうか。何と言うか……安定させたいわ」
「なるほどでチュ」
と言う訳で、本日の作業完了。
私はログアウトしたのだった。
03/22誤字訂正