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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
8章:『悲しみ凍る・怒り飲み込む呪地』
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472:フェイクサン-1

「さて、到着ね」

「でチュね」

 私たちがやって来たのは『熱樹渇泥の呪界』に生える熱拍の樹呪の樹冠の上。

 樹冠の中心には熱拍の樹呪の果実が実っており、周囲の空気を加熱している。

 なお、私たちの後に付いて来ようとしたプレイヤーも居たが、炎視の目玉呪に襲われたり、この高熱に耐えられなかったりで、全員既に退いている。


「ふむ……ジタツニなら耐えられるかしらね」

「たぶん耐えられるでチュね」

 熱拍の樹呪の樹冠上は、樹冠の中心に近づくほど気温が上がっていき、以前は熱拍の樹呪の葉蓑がなければ普通に死んでしまうエリアだった。

 では今は?

 私は慎重に移動していくが、中心までの道のりを4分の3ほど進んでも、ダメージは受けていない。

 装備の更新……特にジタツニの性能が優れているおかげだろう、問題なく耐えられるようになったようだ。


「『虹霓瞳の不老不死呪』の効果も入っているんじゃないでチュか? これ、一応は熱拍の樹呪の攻撃扱いなわけでチュし」

「ああ、そっちもありそうね」

 なんにせよ問題なく近づけるなら、悠々と近づくだけである。

 そして、私たちは熱拍の樹呪の果実の集合体が目の前にある場所に立った。


「流石にこの距離だと、じわじわと減っていくわね……」

「でチュねぇ……」

 流石に果実を目の前にする場所だと、ほんの少しずつだが削られるようになってしまうようだ。

 だが、前回はここまで接近したら、一瞬葉蓑から腕を出しただけでも黒焦げだったのだから、それを考えたら強くなったものである。


「で、どうやって回収するでチュか?」

「こう回収するわ。宣言する。熱拍の樹呪の果実を、出血の剣で切り離し、回収させてもらうわ」

 では回収だ。

 直径1メートルの蘇芳色の円を展開し、呪詛の剣を生成する。

 なお、『呪法(アドン)呪宣言(ロックオン)』は一応撃ったが、相手がカースである以前に樹なので、効果がない前提で考えている。


citpyts(シトピィトス)出血の邪眼・2(タルウィブリド)』」

 呪詛の剣を振るい、『出血の邪眼・2』を発動、出血を付与する。

 勿論、『呪法(アドン)逆残心(スペルビア)』は使わない。

 状況的に使ったら、ただの自爆になってしまう。


「チュアッと」

 そして、出血が無事に付与されたところでザリチュが小突く。

 すると熱拍の樹呪の果実と熱拍の樹呪を繋いでいる部分から大量の樹液が噴出。

 数千の熱拍の樹呪の果実が房になった塊が、天高く宙を舞う。


「あ、そうなるの」

「全部回収とはいかないようでチュね」

 で、宙を舞った熱拍の樹呪の果実は果実一つ一つ毎に分離し、落下を始める。

 熱拍の樹呪の果実の性質を考えると、降り注ぐこれをそのまま受けるのは危険極まりないだろう。

 だから私は降り注ぐ果実をよく見る。

 よく見て……最も質のいい果実に手を伸ばす。


「ザリチュ」

 掴んだ。

 真っ赤で、限りなく真球に近く、強い輝きを持ち……何よりも他の果実と比べて明らかに濃密な呪いを帯びている。

 私は掴んだそれを毛皮袋に収めると、即座に上昇し始める。


「分かっているでチュよ!」

 化身ゴーレムが私に先行する形で熱拍の樹呪の果実の雨に向けて突進。

 盾と剣を使って熱拍の樹呪の果実を弾いていく。

 そうしている間にも熱拍の樹呪の樹冠が動き始め、中にあるものを誰も逃がさないようにすぼんでいく。


「よし、脱出」

「此処からも問題でチュけどねぇ!」

 だが以前と違い、今の私は自由に空を飛べるし、何が起きるかも知っている。

 なので熱拍の樹呪の樹冠から離れることに成功した私は、直ぐに熱拍の樹呪から離れるように動く。

 と、私は此処で気付いた。


「あ、熱拍の樹呪の果実を取ったらどうなるかの周知も、避難勧告もしてなかったわ」

「あー……一応、今からでも掲示板に書き込んでおくでチュ。手遅れかもしれないでチュが」

 現在『熱樹渇泥の呪界』に居るプレイヤーに、これから何が起きるのかを教えるのを、一切忘れていた事を。

 一応、ザリチュが掲示板に書き込んでくれたようだが、既に熱拍の樹呪は炎を噴き上げている。


「とりあえず私たちは『理法揺凝の呪海』に逃げましょうか」

「でっチュねー」

 そうして炎を噴き終え、崩れ落ち始めるタイミングで、私たちは『理法揺凝の呪海』経由で『ダマーヴァンド』の第五階層に移動した。


「で、私たちはこうして無事に戻ってこれたわけだけど……」

「あー……大惨事になっているでチュね……」

 で、掲示板の状況は?

 まあ、阿鼻叫喚だ。

 飢渇の泥呪の津波に、熱波。

 死に戻りして、どうなっているかと確認に戻ったら、まだまだ荒れ狂い中。

 流石に荒れて……いや、予想したほどではないか。

 なんだろう、私がやったことであるためか、そこまで騒ぎになってない。

 とりあえず、どれぐらいの期間、荒れているのか? という質問があったので、これには答えておく。


「さて、情報は伝えたから、手に入れた物の確認から始めましょうか」

「でチュね」

 まあ、やってしまった物は仕方がない。

 次からは気を付けよう。

 と言う訳で、今回の劣化ボス三連戦で得たものの確認。

 カロエ・シマイルナムン素材は……触手1、目2、歯2、皮1、声帯1。

 デンプレロ・ムカッケツ素材は……棘3、甲殻3、爪3、肉3、紋章殻3、鋏1、毒腺1、取り巻き素材多数。

 ミミチチソーギ・ズワム素材は……歯2、鱗2、油1、血1、毛皮1、肉3、糞1、声帯1。

 熱拍の樹呪の果実が1。

 これで目的のアイテムが上手く作れればいいのだが。

03/21誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] あー掲示板が来ないーどうやらしばらくないみたいだ。無念
[一言] 「フェイクサン」 ジョジョ3部のスタンド「TheSun」みたいなものを造るのかな? >>私たちの後に付いて来ようとしたプレイヤーも居た おこぼれ狙いか、興味本位か、ただの妖精ファンか知らな…
[一言] 一体、何を作るつもりなのやら……
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