471:リベンジカースズ-6
「チュウううぅぅぅ……」
化身ゴーレムがズワムに向かって突っ込んでいく。
勿論、化身ゴーレムの突撃を阻止するように光球が幾つも飛んでいくが、化身ゴーレムは盾を構えて突っ込むことによって攻撃を凌ぎ、距離を詰めていく。
「ラッ……」
「!?」
そしてズワムの口の横に移動し、勢いよく剣を突き立てる。
しかし、ズワムロンソの刃の長さでは、幾ら小人状態になっていて、正確な位置に刺したと言っても、ズワムの怪音を鳴らしている歯に外から刃を届かせることは出来ない。
「ハッアアアァァァ!!」
「ーーーーー!?」
だからそこで化身ゴーレムが横を向き、ズワムロンソの効果を発動。
呪詛の刃が勢いよく伸びて、ズワムの歯を裏側から粉砕して見せた。
ただ、それでもズワムの口からは歯が私の方へと飛んできたのだが、距離があり、聴覚も喪失していない現状ではまず受けず、受けても致命傷には程遠い。
でだ。
「宣言するわ。ズワム、アンタの口の中は今からとても臭い事になる。歯が折れるぐらいにね」
「ーーー……」
何度も歯飛ばしをされるのは面倒くさいので、こちらからの攻撃でへし折らせてもらうとしよう。
だから私はズワムの歯飛ばしを避けると同時に、歯を折られて少しだが呆けていたズワムに向かって宣言し、呪詛の槍を飛ばす。
「citpyts『出血の邪眼・2』……起爆よ」
「ーーー!?」
ズワムに伏呪付きの出血が付与されて、毒のダメージによって口の中で起爆。
ダメージを与えつつ、毒と灼熱が付与される。
同時に『毒の邪眼・3』の伏呪も解除されたが、もうだいぶ削れてきているので、伏呪をかけ直さなくても大丈夫だろう。
そして、私の推測が正しい事を示すようにズワムが動く。
「ーーーーー!!」
体表の目玉位置が動き出し、光球の数が三倍になる。
小人以外のスタック値の減りが速くなる。
呪詛濃度の上昇、空気の乾燥、高温化は……まあ、どうでもいいか。
なお、奇怪な音の数は歯を叩き折ってやったので、二重、三重程度である。
いずれにしてもズワムの火事場モードだ。
「ザリチュ! 逃げ切るわよ!」
「言われなくても分かっているでチュよ!」
「ーーーーー!!」
だが、毒のスタック値は十分に入っているし、沈黙、小人、灼熱も問題なし。
後は逃げ回るだけで、ズワムは倒れる。
「ーーーーー!」
「む……」
「あー、そうなるでチュよね」
そんなズワムだが、これまでに私がヘイトを稼ぎ過ぎたのか、あるいは火事場に入ったことで、ゴーレムのような従者的な存在を無視するようになったのか、私を丸のみにするべく、真っ直ぐに突っ込んでくる。
勿論、光球攻撃も、歯飛ばしもやってくる。
これは……下手に逃げるよりも、きちんと仕留めてしまった方が速いか。
「いいわ。宣言してあげる。刹那の交合にて、私の炎の剣が貴方を切り捨てる」
「ーーーーー!」
ならば折角だ。
色々と決めさせてもらおう。
「ezeerf! ezeerf! ecafrusカラezeerf! eci、dloc、wons、liah、reicalgノゴトク! efil、ym、evas……」
「ーーーーー!」
直径5メートルほどの紅色の円を展開し、ネツミテを刀代わりに居合抜きのような姿勢を取りつつ呪詛の剣を生成し、詠唱を重ねていく。
「ーーー!?」
そして紙一重でズワムの噛みつきを回避し……
「『灼熱の邪眼・2』」
首筋に呪詛の剣とネツミテを叩き込みながら『灼熱の邪眼・2』を発動。
呪詛の剣が抜けきったところで私は目を閉じ、ネツミテを血払いするように振り回し、納める。
そうして目を開けたところで……
「!?」
ズワムの首筋から巨大な爆炎が生じて仰け反り、そこで動きを止めた。
≪大型ボス『路削ぎの蚯蚓呪』ミミチチソーギ・ズワムが討伐されました。共同戦闘を終了します。報酬はメッセージに添付してお送りいたします≫
≪タルのレベルが32に上がった≫
「ふぅ、終わったわね」
そしてズワムの体はゆっくりと倒れていき、勝利を告げるアナウンスが流れた。
「終わったわね。じゃないでチュよ!? なに、最後に大バクチを打っているんでチュか!? 一発でも反撃光球が飛んできていたり、体が当たっていたりしたら、大惨事でチュよ!?」
「そこはまあ、つい……ノリね」
「ノリで『呪法・逆残心』は止めろでチュ。本当に止めろでチュ。ざりちゅは生きた心地がしなかったでチュよ。たるうぃ」
「まあ、考えておくわ」
周囲の風景が変わっていく。
どうやら、ズワムとの再戦を開始できる場所にまで戻されるようだ。
「それにしても強くなったものね。修正前の『呪法・感染蔓』に一日一発限りの『禁忌・虹色の狂眼』、他諸々の要素を組み合わせてようやく倒せたズワムを、劣化版とは言え、普通に倒せるようになるとは」
「まあ、その点については同意でチュ。本当に強くなったでチュよ。たるうぃは」
さて報酬は……歯が2、鱗が2、油が1、血が1、毛皮が1、肉が3、糞が1、声帯が1。
色々と出たが、いい感じだな。
「じゃ、配信は終了で。他に必要な物の回収ができたら、手に入れたもので目的のものが作れるように、頑張ってみましょうか」
「でチュねー」
私は配信を終了すると、再戦エリアの外に出る。
そして、唖然とした様子の飛行能力持ちプレイヤーを横目にしつつ、足場から飛び立った。
△△△△△
『虹霓瞳の不老不死呪』・タル レベル32
HP:285/1,310 (-390)
満腹度:67/150 (-45)
干渉力:131
異形度:21 (+4)
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓、(Expブースト、死退灰帰)
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の王』、『灼熱の名手』、『沈黙の名手』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『重力使い(増)』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『竜狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹霓瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・3』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・2』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』、『転写-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』、『禁忌・虹色の狂創』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』、『呪法・呪宣言』、『呪法・極彩円』、『呪法・呪晶装填』、『呪法・逆残心』
所持アイテム:
『路竜の包帯服』ジタツニ、『渇鼠の騎帽呪』ザリチュ、『太陽に捧げる蛇蝎杖』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2
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03/20誤字訂正