465:ジュゲムオーシャン-7
「まず初めに。当店にあるのはスロットのみです。別の遊戯に挑みたい場合は、店の外に出て、他の泡沫の世界にお入りください」
「分かったわ」
私はとりあえず10万DCをSCに変換、5,000SCを手にして、スロットマシンに座る。
「また、これはどの遊戯にも共通する事ですが、既定の手段以外で遊戯の機材に干渉する事は禁止とさせていただきます。行った場合には、相応の処置を取らせていただきますので、予めご了承ください」
「ん? 私の『呪圏・薬壊れ毒と化す』とかは大丈夫なの?」
「ご安心を。パッシブ系の呪いならば、当カジノ側で行ってある防護処置で防げますので」
「なるほど」
まあ、機材に干渉してのイカサマはするなと言う話なのだろう。
マグロディーラーの話を聞く感じ、自己バフ系ならば許容されそうな気配がある。
私は使えないので、関係……景品のブースターを使えば行けるのか、ちょっと考えておこう。
「じゃ、とりあえず遊んでみましょうか」
「後ろで見ているでチュ」
では、遊んでみよう。
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「んー……これは中々に嵌まるわねぇ……」
「でチュかぁ……」
と言う訳で遊ぶこと3時間ほど。
海エリアの泡沫の世界に十数回出入りして、とりあえず一通りは遊べたと思う。
なので、カジノ『アンダシ』の遊戯の内容、基本ルール、感想を並べていこう。
・スロットマシーン
3つのリールで流れる絵柄を真ん中で揃えるタイプのスロット。
目押しが可能。
だが、掛けた金額と揃えようとしている絵柄に応じて、リールの回転速度と止めるボタンを押してからの滑り具合が変わってくる。
しかし、ボタンを押してから急にリールの回転速度や滑り具合が変化するようなインチキ挙動や演出の類はないので、これならば得ようとしている対価に合わせて難易度が上昇しているだけと言えるだろう。
結論、自己バフで動体視力や反射神経を強化できるなら、荒稼ぎできる可能性あり。
・ポーカー
使うカードは1セット53枚(トランプの4つの絵柄で1~13+ジョーカーが1枚)。
5枚のカードを貰い、1度だけの交換を経て、役が揃えば、役に応じた倍率でSCを得られる。
そして得たSCを基に、ダブルアップとしてハイアンドローに挑むことが出来る。
とまあ、この手のカジノ系コンテンツで良くあるポーカーだ。
変わっている点はカードの1セットがリセットされるタイミングで、離席時、役の成立時、そしてカードが21枚以上消費された後にゲームが終了した時なのだ。
このため、それまでに消費されたカードの内容次第では、絶対に揃わない役が出て来るが、逆に普段よりも高確率で特定の役を狙うことも出来るようになる可能性がある。
結論、確率計算を出来るなら、時間はかかるが、普通にあり。
・ルーレット
0~27の数字の何処に球が入るかを予想して賭けるゲーム。
賭け方には特定の数字だけを狙うものから、偶数・奇数、幾つかの数字をグループにしてまとめて賭けられるものなど幅広く、複数個所に同時に賭けることも出来る。
なお、球の入る位置は完全なランダム。
幅広くやって手堅く稼ぐことも、一点狙いで一気に稼ぐことも出来る感じだ。
結論、無難に稼ぎたいなら、これ。
・ビンゴ
結論、虚無。
真面目に述べるなら、5×5のマス目が描かれ、マス目に1~30の数字がランダムに記載されたビンゴシートがまず渡される。
中央については、ビンゴの定番通り、最初から穴が開いている。
で、抽選機から1~30の数字が描かれた球が出て来るので、その数字通りにビンゴシートに穴を開け、一列分の穴が開けば、ビンゴとなり、抽選機から出て来ていた球の数に合わせてSCが得られる。
なお、10個の数字が抽選されてもビンゴが揃わなかった場合は、SCは得られない。
最短ビンゴ……球4つでのビンゴで返ってくるSCは中々の量だが、完全な運任せである上に、演出が割と長めなので、私的には遊ぶ価値のない遊戯だった。
故に結論は虚無である。
・闘技場(観戦)
普通に遊ぶ場合には、闘技場に入れられた複数体のモンスターの内、どれが勝つかを予想して賭けるだけのものである。
戦闘の時間は10分、複数のモンスターが生き残っている場合は残りHPの割合が最も多いモンスターが勝利となる。
強力なモンスターはそれだけ配当も低めになるし、中には物理反射呪いを所有するネズミのように波乱の展開を招くダークホースが紛れ込んでいたりもするが、見た事がないモンスターを見ることも出来て、結構楽しい。
結論、個人的には一番好み。
・闘技場(出場)
で、この闘技場には選手として参加する事も可能。
ルールは観戦時とほぼ変わらないが、一点だけ違いがある。
それは出場に当たっては手持ちのSC全てを強制的に賭けることになり、負ければ全損、勝てば大量のSCと言う一攫千金が確定した遊戯になっている。
なお、出現するモンスターは賭けるSCの量が多ければ多い程強力な物になっていく。
ちなみに素材、経験値の類は得られない。
結論は……今回は挑まなかったので保留。
・ゾンビレース
簡単に述べるなら、虚無のビンゴに対して、混沌のゾンビレースである。
内容としては5体のゾンビがレースをして、順位を当てるものであり、賭け方としては単勝だけでなく、3連単や3連複の類もある。
当然、当てづらい役ほど、配当も多い。
だが問題はそこではない。
問題は……まず、レースのコースが複数種類あること。
コースの形は直線、蛇行、トラックetc.
コースの表面を覆うものも芝生、ダート、ぬかるみetc.
コースの傾斜も平面、下り、上り、断崖etc.
コースの長さは100、1,000、10,000etc.
だが、これだけではない。
出場するゾンビの種類がとにかく豊富なのだ。
種族は人間、馬、トラ、ネズミ、蛸、ウサギ、ウナギなど、実質何でもあり。
しかも同じ馬であっても、腐敗している部位、欠損している部位などがまるで違うので、その辺をきちんと見極めなければ、トラックコースで目玉無し馬ゾンビを選んでしまったために、ゴールすらできないゾンビを選んでしまう事がある。
極めつけに四肢が骨で走れないと思っていたら、骨部分がゴーレムのサイボーグゾンビであることもあったし、お尻から火を噴いてジェット噴射で飛んでいく亀のようなトンデモが混ざっている事もある。
賭けにマトモに勝つならば、膨大な量の知識と、知識を現実とすり合わせられる力を求められる事だろう。
確実に闘技場の観戦側で賭けるよりも当てる難易度は高い。
結論、やってて楽しいが、これ一つで一本のゲームが作れる程度にはボリュームがあるので、挑むなら覚悟して挑むこと。
「とりあえず3万SC稼ぐか、底をつくまでは闘技場観戦で遊びましょうか」
「海エリアの懸念事項については検証班に伝えたでチュか?」
「伝えたから大丈夫よ」
その後、私は3万ちょっとのSCを稼いだところで満足して、Expブースターを一本交換してからログアウトした。
どうやら本当に公正公平で、プレイヤーを稼がせてくれるタイプのカジノだったらしい。
今後も暇な時の時間潰しを兼ねて、時々挑むとしよう。