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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
8章:『悲しみ凍る・怒り飲み込む呪地』

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464:ジュゲムオーシャン-6

「今日は海エリアに行きましょうか」

「これで一通りになるんでチュかね?」

「サクリベス周辺には泡沫の世界がないから、そうなるわね」

 木曜日である。

 マントデアからは連絡なし。

 アイムさんからは感謝のメッセージ。

 他は特に異常はない、と。

 では、新しい化身ゴーレムも作ったので、『理法揺凝の呪海』、海エリアの泡沫の世界に踏み込んでみよう。


「鑑定っと……んー?」

 と言う訳で、海エリアの泡沫の世界の鑑定をしてみたのだが、これまでに見て来た泡沫の世界とはだいぶ違うようだった。



△△△△△

泡沫の世界

レベル:30

生存の可否:可

残り時間:23:59:59

▽▽▽▽▽



「レベルが高いでチュね」

「そこはどうでもいいわね。問題は残り時間の方よ。一切減ってないわ」

 鑑定結果には残り時間が表示されているのだが、こうして鑑定結果を見ている間に減る事もなく、固定されている。

 これは……海エリアの泡沫の世界に、何かしらの特殊な事項があると考えるべきか。

 念のために他の泡沫の世界にも鑑定を仕掛けてみたが、鑑定結果は同様だった。


「入ってみましょうか」

「分かったでチュ」

 これ以上は入ってみなければ分からない。

 そんなことを思いつつ、私は星に触れて、泡沫の世界に入る。


「「「カジノ『アンダシ』へ、ようこそ! お客様!!」」」

「は?」

「……」

 そうして広がったのは、ディーラーあるいはバニーガールの衣装を身に着けた、頭部だけがリアルな各種海産物のモンスターたちが、私と化身ゴーレムに向かって礼儀正しくお辞儀する光景。

 また、モンスターたちの背後には、何台ものスロットマシーンと、交換所ですと言う雰囲気を漂わせているカウンターがある。


「当カジノは初めてございますね。お客様。説明は必要でございますか?」

 このモンスターたちの代表なのか、頭がマグロのディーラーが私の方へと近づいてくる。

 敵意の類はない。

 そして、『CNP』にしては非常に珍しい事に、私の目の前にシステムウィンドウが出現している。

 どうやら、運営公認のカジノであるらしく、基本的な説明が載っている。

 とりあえず、客を騙したり、嵌めたりすることはないらしい。


「……。そうね、説明をお願いするわ」

「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」

「えーと、大丈夫なんでチュか? たるうぃ」

「大丈夫みたいよ。ま、最悪逃げ出すだけよ」

「ご安心を。人を呪わば穴二つではありませんが、真っ当な接客を行うことによって、我々の安全を確保しているのが当カジノでございます。公正公平である事は当然です」

 では、カジノの説明である。

 私はカウンターに座って、説明を受け始める。

 なお、マグロディーラー以外は自分の仕事に戻り始めている。


「当カジノでは、まず最初にお客様がお持ちになられたDCをSC……セピアカースに変えていただく必要があります。SCからDCに戻すことは出来ませんので、お気を付けください」

「レートは?」

「DCの質によります。お客様のDCならば、20DC=1SCですね」

「なるほど」

 お金をコインに変える必要があるのは、この手のカジノでは良くあるシステムだ。

 私の手持ちのDCは……現状だと50万DCくらいあるか。

 いつの間にか案外貯まっている。

 それにしてもSC……セピアカース……色褪せた呪い……よりはイカ墨の呪いかしらね。

 海のカースは蟹だと思っていたのだが……ちょっとかまをかけるか。


「質問だけど、ここで遊んだからといって、支配人である烏賊呪が強くなる、なんてことはないわよね?」

「烏賊ではなく蛸ですよ、お客様。質問の内容についてですが、ご安心を。ここで幾ら遊んでも当カジノの支配人である『浸食の蛸呪』様がお強くなられることはありません。また、当カジノの景品を使って『浸食の蛸呪』様に挑んでも、不利になるようなことはありません。さらに言えば、『浸食の蛸呪』様に何かあっても、当カジノは問題なく運営され続けます。先ほど述べた通り、公正公平であるからこその当カジノですので」

「そう。それなら安心できるわね」

 なるほど、海エリアの底の星に居るカースは『浸食の蛸呪』と言うらしい。

 こうなると……もしかして海エリアの攻略順序は、第二マップで船を作ったら素通りし、第三マップに先に行く事なのかもしれない。

 で、第三マップを終わらせ、深海に行く方法を見つけたら、改めて第二マップに挑むと。

 うん、後で検証班に情報を送って、探ってもらおう。


「まあ、DCが足りないからと借金をして、返しきれない程の負債を抱え込んだら、話は変わってきますが、その件については、その時まで気にされなくても大丈夫かと」

「なるほどね」

 とりあえずマトモに遊ぶ分には、本編とは関係のない、ただの娯楽施設で遊べるという事のようだ。

 借金はする気がないので、世話になる事はないだろう。


「さて、DCをSCに変えていただき、その後遊んでいただく訳ですが、勝てば当然SCが増えていきます。そして増えたSCは景品と交換する事が可能です」

「商品のラインナップを見せてもらう事は?」

「1SC以上を保有していれば可能です」

「分かったわ」

 私は20DCを払って、1SCを手にする。

 なお、SCは店外に持ち出せず、他プレイヤーに渡すことも出来ず、退店時には自動回収、次回入店時に自動で手元に戻ってくると言う仕様になっているようだ。


「こちらが商品のラインナップになっております。非常に種類が多いので、検索機能を活用されることをお勧めします。また、中にはお客様に効果がない商品もございますので、フィルタ機能を有効にされることをお勧めします」

「ありがとう。……。ちょっと真剣に読み込むわ」

 さて肝心の商品ラインナップだが……うん、はっきり言おう。

 ヤバい。


「使用できるのは自分自身に対してのみ……」

 まず全ての商品に共通する仕様。

 ・使用できるのは、取得した本人のみ

 ・素材にはできず、正しい使用方法以外だと、僅かに傷がついただけでも使い物にならなくなる


「景品は大別すると二種類……」

 景品は大きく分ければ、『浸食の蛸呪』の呪詛薬シリーズと○○ブースターシリーズに分けられる。

 前者が恒常的な効果をもたらすアイテムであり、後者が一時的な効果をもたらすアイテムだ。


「キャラクリのマニュアルで使えたのはだいたい使えそうね」

「基本的な物であれば全種類ございますよ。特殊なのも少量であればございます。無いのは、お客様がご自分で後から付けられたような、特殊な呪いぐらいでございます」

 呪詛薬は……追加の呪いを得るためのものになりそうだ。

 マグロディーラーの言う通り、キャラクリのマニュアルで使えた呪いは全種類ある。

 『遍在する内臓』、またはそれに類する呪いも数点だがある。

 『呪圏・薬壊れ毒と化す(ダマーヴァンド)』の類は流石に無し。


「値段に結構差があるわね……」

「お客様の状態に合わせて調薬する必要がございますので。そこはご了承ください」

 呪詛薬の交換に必要なSCは最低でも5,000SCから。

 『遍在する内臓』のような強力な呪いであれば、それだけ必要なSCの量は増える。

 そして、使用者の異形度が19以上であると、それでもSCの必要量が増える。

 具体的に言えば、さっき言った最低額の呪詛薬でも、異形度を19から20に上げる時に使うものなら必要額が50,000SCに跳ね上がり、異形度が20以上ならば60,000SC、DCに直すなら120万DCと言う恐ろしい額が必要になる。

 うん、この時点で呪詛薬の交換は諦めた。

 キャラロストの可能性なく異形度を上げられるし、ゲームの内容次第ではあるが、この額ならば自分で作った方が速いし楽だ。


「ちなみに一時的に増やす呪詛薬なら、リーズナブルな価格となっております。また、異形度や呪詛親和度を減らす呪詛薬もございます」

「そうねー」

 一時的に増やすのはお試し版で、恒常版の5分の1ぐらいの額であるが、効果時間はリアル時間23時間ほど。

 異形度減らしは……価格の跳ね上がりの都合で、私が使えるものではない。

 レベルダウンに至っては、何の意味があるのだろうか?

 まあ、どれも使う予定はないが。


「ヤバいのはブースターね」

 ブースターは一時的な強化アイテムと言うところか。

 効果時間はまちまちだが、共通仕様として、リアル時間で23時間につき一本しか使えず、二本以上使うと、二本共効果が失われるという仕様がある。

 では肝心の強化内容だが……HP、干渉力、満腹度の低下スピード、筋力、特定の属性の強化、高温環境適性、深海環境適性など、だいたいのものは揃っている。

 私が使うものとなると……呪術強化、火炎属性攻撃強化、状態異常強化、氷結属性耐性強化、浄化属性耐性強化、呪詛干渉強化、この辺は考えても良さそうだ。

 価格も一本1,000SC程度と、場合によってはDCとの直接交換を考えてもいい額だ。

 だがヤバいのはこれら一般的なブースターではない。


「普通は課金アイテムよ。これ……」

「お高いですが、効果は保証いたしますよ」

 ヤバいのはExpブースター……取得経験値量増加の効果を持ったアイテムである。

 価格は一本10,000SCと決して安いものではないが、一本でゲーム内23時間効果を発揮するこのアイテムは、確実にヤバい。

 なにせVRになってもMMOと言うゲームのエンドコンテンツ付近では、大量の経験値を稼ぐ必要があるのだから。

 それはレベルがそこまで重要ではない『CNP』でも変わらない部分だろう。

 そんな部分を少しでも楽にできるのなら、大枚をはたいてでも入手する価値はあるだろう。


「……。ゲームの説明をしてもらってもいいかしら」

「どうぞこちらへ。お客様」

「たるうぃがカジノ沼に足を踏み入れた気がするでチュ……」

「踏み込むべき沼なら突っ込むわよ。私は」

 残る問題は、このカジノのゲームが本当に公正公平であるかだ。

 もしも本当に公正公平なら……挑む価値はある。

なお、カジノ『アンダシ』の景品は全て自分で作る事も原理上は可能となっております。


03/13誤字訂正

03/19誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] FF始まったな
[一言] >>カジノ『アンダシ』 ・・・アンダー・シー・・・「海の底」かな? どっちかというと「沼の底」か「底なし沼」で破産したら「奈落の底」になるんだろうけどw >>ディーラーあるいはバニーガール…
[一言] >念のために他の泡沫の世界にも鑑定を仕掛けてみたが、鑑定結果は同様だった。 海エリアの他の泡沫の世界にはどんな施設があるのか気になりますね。 海だから競魚場?とかありそう。 >ヤバいのは…
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