463:ジュゲムオーシャン-5
「……。雪に埋もれつつある廃村でいいのかしらね……」
『たぶんいいと思うでチュよ』
『理法揺凝の呪海』、雪山エリア、そこで泡沫の世界を鑑定し、生存可能であると表示されたところへ入った私を待ち受けていたのは、雪が降る人気がない村だった。
気温は零下20度前後、かなり寒いが、ジタツニと懐炉札があれば問題はないようだ。
なお、ザリチュの化身ゴーレムは大量の雪に耐え切れる感じがなかったので、生存を諦めている。
「鑑定っと」
その後、この泡沫の世界を鑑定し、出口を見つけ、脱出した。
他に何か言う事はないかと言われれば、何もなかった。
多少のモンスターと回収物はあったが、砕いてDCにして、『ダマーヴァンド』に貯蓄しておくしか使い道がない感じだった。
「次の泡沫の世界に行きましょうか」
『でチュね』
そうして次の泡沫の世界に行き、更にその次の泡沫の世界に行き、更にさらにその次の泡沫の世界に行き……
「虚無るわ……」
『何の! 成果も! 得られなかったでチュ!!』
結果として得るものは何もなかった。
どうやら、雪山エリアの泡沫の世界はあまり美味しいものではないらしい。
何処も雪だらけ、氷だらけの廃墟で、しかも使えそうなものはまるで見つからなかった。
いや、私にとって美味しくないだけで、他プレイヤーにとっては有用な何かがあったのかもしれないが、とりあえず私には雪山エリアの泡沫の世界だからこそ得られるものでは、特に得るものはなかった。
「いや、一応成果はあったじゃない」
『まあ、伏呪の仕様は今の内に知れてよかったものではあるでチュね』
なお、別の成果はあった。
と言う訳で、『ダマーヴァンド』に戻り、毒頭尾の蜻蛉呪相手に改めて検証。
「『毒の邪眼・3』」
「チュブゴッ!?」
まず、伏呪付きの『毒の邪眼・3』を幾つかの呪法付きで毒頭尾の蜻蛉呪にぶち込む。
入った状態異常は『呪法・感染蔓』無しでも毒(2,545)と言うかなりのスタック値なのだが、これはまあ置いていておくとしてだ。
「10秒ー」
『ゴギゴッ!?』
10秒経過。
毒頭尾の蜻蛉呪に毒のダメージが入ると共に、灼熱(21)が付与される。
伏呪の効果はきちんと入っているようだ。
「『出血の邪眼・2』」
「チュブラガァ!」
伏呪付きの『出血の邪眼・2』が入る。
すると私の感覚としては、伏呪の内容が切り替わったと感じた。
「20秒ー」
「チュブゴッ!?」
そして毒のダメージから10秒経過して、毒のダメージが入ると共に出血が発動する。
毒頭尾の蜻蛉呪の体から血が噴き出すと共に、毒頭尾の蜻蛉呪に入っている状態異常の中で、毒と灼熱のスタック値が上昇する。
『出血の邪眼・2』の伏呪はきちんと作用しているようだ。
なお、この時吹き出した血には触れないこと。
普通に私にも毒と灼熱が入ってくる可能性があるので。
「30秒ー……」
「チュブラゴッ!?」
で、これで終わりだった。
一応、相手が倒れるまで観察は続けるが、『毒の邪眼・3』の伏呪は消えてしまっている。
そして伏呪を含まない『出血の邪眼・2』も撃ち込んでみたが、こちらが伏呪の効果を示す事はなかった。
と言う訳で一回目の検証終了。
その後、何度か相手や状況を変えて検証を繰り返した。
では、伏呪の仕様をまとめよう。
「んー……やっぱり伏呪は重ね掛け不可みたいね」
『でチュね。二つ目を掛けると、上書きされてしまうようでチュ』
その一、重ね掛け不可。
伏呪はどうやら最後に使った一つだけが残る仕様らしい。
気になるのは私以外の存在が伏呪をかけた際にも上書きされるかだが、こちらの検証は私以外のプレイヤーが伏呪を使う時が来るまでは分からない。
分からないが……上書きされると思っておこう。
「で、対象状態異常が途切れると解除される」
『伏呪だけ残ると言う事はないようでチュね』
その二、伏呪は残らない。
毒のスタック値が0になった後、伏呪無しの毒を撃ち込んでも伏呪が発動せず、毒のスタック値が残っている間に打ち込んでも、別枠表記になって合算されない、なのでこう判断した。
ただこれは、『毒の邪眼・3』の伏呪の場合なら毒、『出血の邪眼・2』なら出血、という風に、私の伏呪には発生する条件がある事が影響しているのかもしれない。
なんにせよ、伏呪に合わせて放った状態異常が解除されると、伏呪も一緒に解除されると考えておこう。
なお、二種類の毒が並べて表記されているところで、出血の伏呪を乗せると一つに統合され、その後に再度毒の伏呪を乗せても、分離はせず、一つに統合された毒はそのまま通常の毒として働くのみである。
「伏呪は呪法の影響を受けない」
『受けたら強すぎると思うでチュよ。いや、感染蔓は影響を受けるべきだったと思うでチュけどね』
「一律の処理、運営に感謝ね」
『次の対人戦が今から怖いでチュねぇ……』
その三、呪法による強化は無し。
どうやら伏呪そのものは呪法による強化を受け付けないらしく、乗せられるだけの強化を乗せても、『毒の邪眼・3』の伏呪によって与えられる状態異常のスタック値が増える事はなかった。
これでヤバくなったのは『呪法・感染蔓』だろうか?
伏呪が呪法の影響を受けないのだが……それは弱体についても同じであるため、一体に集中させようが、ばらけさせようが、全員に同じレベルの伏呪が入る。
なので、毒本体は微毒程度なのに、付随する状態異常はエグイと言う状況に出来てしまいそうだった。
「なんにせよ、一つの戦闘で使う伏呪は一種類に絞った方が強いかもしれないわね」
『まあ、一回当たりのコストも重くなるでチュから、絞った方がいいのは同意でチュね』
とりあえず仕様は分かったので、今後は少し考えて運用しよう。
と言う訳で、これを成果として、私はログアウトしたのだった。




