456:タルウィベーノ・3-5
本日は五話更新となっております。
こちらは三話目です。
「さて、今この場にあるものは……」
私は周囲を見る。
闘技場にあるのは、私、化身ゴーレム、敵であるドラゴン、観戦者である『悪創の偽神呪』といつの間にか来ている紫球の偽神呪。
地面を構成する土、空気、呪詛闘技場の外壁である石材。
他、私がいつも持ち歩いている各種アイテムが幾らか。
うん、邪眼術を強化できるようなものは呪詛くらいしかない。
「原始呪術は……使えないか」
「マジでチュか」
原始呪術は使用不可。
これも『鑑定のルーペ』と同じで、私の力では無い扱いなのだろう。
まあ、『風化-活性』、『転写-活性』が使えないのはどうでもいい。
使えないなら、使えない前提で調整をされているだろうから。
『不老不死-活性』による回復が出来ないのが、厄介ではあるが。
「ヂュブラガァ!」
「おっと」
「チュラッハァ!」
ドラゴンが突っ込んで攻撃を仕掛けてくる。
私は距離を取って避け、化身ゴーレムは剣で嫌がらせ程度の攻撃をしつつ、少しずつ距離を離す。
この時間を使って私は思考する。
「んー……呪法しかないわね」
こうなってくると、邪眼術の強化に使えるのは呪法くらいか。
だが、『呪法・増幅剣』、『呪法・貫通槍』、『呪法・破壊星』は併用不可。
『呪法・感染蔓』による多段ヒットは相手の耐性を難なく抜ける前提の呪法なので、今回は厳しい。
『呪法・方違詠唱』には可能性があるが、位階を1つ上げるほどの詠唱となると、相当の長さとHP消費が見込まれるので、これ単独では厳しい。
つまり、今この場で新たな呪法を生み出すしかない。
アイデア自体はあるが……まあ、やるしかないか。
「etoditna」
では、正面から打ち破りに行こう。
私は闘技場内の呪詛を支配すると、『呪法・方違詠唱』に従って詠唱。
それと同時に二つの干渉を周囲の呪詛にする。
「ヂュブッ!?」
「チュアッ!?」
一つは色の変化。
赤と黒と紫が基本色である呪詛の霧を、円形闘技場の外にある霧のように虹色に変化させ、その上でさらに調整して深緑色に変化させる。
もう一つは形状の変化。
深緑色になった呪詛を、邪眼術を覚えるためのアイテムを呪怨台で作る時に見ている幾何学模様に似せた形でまとめていく。
「ヂュラガァ!」
「させないでチュよ!」
私の行動に危機感を覚えたのか、ドラゴンがこちらに向かって来ようとする。
だが化身ゴーレムが剣を叩きつけ、気を引こうとする。
その間にも私は周囲の呪詛を変化させていく。
幾何学模様を光らせた状態で円形に近づけ、そのまま維持する。
その数は13個で、それぞれの幾何学模様は私の目を中心に直径にして5メートルほどあり、展開後は私が体を動かしても動かない。
直感的にこの幾何学模様の外には出るべきではないと私は判断する。
「ヂュブラガァ!」
「ぬぐぐぐぐ……ぶっちゃけ、きついでチュよぉ!?」
幾何学模様の円が安定すると共に、私はもう一つ別の呪法を編み出して重ねる。
『etoditna』の文字を呪詛の霧で描き、それを手でまとめ、潰して、一つの結晶体にし、それをこの後放つ予定で作成、待機させている呪詛の剣に取り込ませる。
「eniccav htlaeh |ssenihtlaeh |citerypitna |tnasserpeditna |yrotisoppus」
『呪法・方違詠唱』と並行して、新たな呪法を進めていく。
文字を描き、まとめ、潰し、結晶体にして、呪詛の剣で取り込ませていく。
『呪法・方違詠唱』の効果によってHPが、新たな呪法の効果によって満腹度が減っていく。
「ヂュブラガァ!」
「たるうぃ!」
遂に化身ゴーレムを無視してドラゴンが突っ込んでくる。
大きく口を開き、私の体を噛み砕こうとする。
「『毒の邪眼・2』」
「!?」
私はそれを紙一重で、周囲に展開した幾何学模様……いや、魔法陣の外に出ないように避けつつ、大量の呪いを取り込んだ呪詛の剣を振るい、切りつける瞬間に『毒の邪眼・2』を放つ。
だが、直感的にこのままではドラゴンの守りを貫けないと私は感じた。
「ふぅ……」
「何をやって……」
「……」
だから呪詛の剣を振り抜き、ドラゴンの翼と尾を避け切ったところで、わざと気を抜き、全ての目を瞑り、隙だらけの姿を晒す。
するとほんの僅かな時間ではあるが、追加の呪いをドラゴンに注ぎ込めるような感触がしたので、遠慮なく、周囲にある全ての呪詛をドラゴンに向けて注ぎ込み、毒へと変化させる。
「ーーーーー!?」
直後、ドラゴンが悲鳴にも似た声を上げ、私は目を開く。
どうやらドラゴンはこちらへと向き直り、隙だらけの私へと何かを仕掛けようとしていたようだが、その前に毒のダメージが入って、予期せぬダメージに叫び声を上げてしまったようだ。
与えた毒は……毒(422)か。
どうやら無事に3の位階相当の邪眼に出来たようだ。
まあ、無理やり押し上げているために、相手の耐性の影響をもろに受けている感じはあるが。
「あらあら、たかだか400ちょっとのダメージなのに、随分と情けない声を上げるじゃない。予防接種の注射とかで大泣きしそーう」
攻撃は通せたが、これから冷静に対処されると詰むのが容易に想像できるので、とりあえず煽りは入れておく。
「ドラゴンなのに恥ずかしくないんでチュかぁー? あ、顔的に一応だったでチュねー」
ザリチュも意図を察したらしく、化身ゴーレムで剣と盾を打ち合わせて鳴らしつつ煽る。
「……。ヂュブラガアアアァァァ!!」
そして私たちの挑発に切れたらしいドラゴンは尾を勢いよく振り上げた。
ドラゴンの尾に付いている無数の歯から、私たちに向けて赤い折れ線が伸びていく。
「おっと」
「拙いっチュね」
その意図を察した私と化身ゴーレムは即座に赤い折れ線と被らない位置に飛ぶ。
「ヂュブラララララアアァァ!!」
直後。
赤い折れ線が示した通りの軌道で白い何かが飛んでいき、地面に着弾したそれらは、高さ数メートルに及ぶ巨大な砂柱を生じさせた。
03/08誤字訂正




