447:ヒートビートDウッド-1
「ログインっと」
「来たでチュね」
大学から帰って来た私は『CNP』にログインする。
そして私のログインと共に、ザリチュの化身ゴーレムも起動して、立ち上がる。
「まずは検証でチュかね?」
「ええ、そうなるわ」
では、早速となるが、『路削ぎの片手剣』ズワムロンソの検証からだ。
私とザリチュは第四階層の人目が付かない場所へ移動する。
で、様々な条件の下で剣を振らせてみた。
結果。
「ざりちゅが使う分には問題なさそうでチュね」
「そうね。ザリチュが使うなら大丈夫だと思うわ」
装備者の左右と言うのは、剣を持っているものの顔の向きで判定されている事が分かった。
なので、化身ゴーレムの頭を90度回した状態で正面に向かって剣を振ると、それでも剣の刃の長さが3倍になる。
また、頭は正面を向いた状態で固定して、回転切りを行うと、途中までは奇麗な弧を描くが、効果範囲に入った途端に切られた跡の長さが伸びると言う、面白い痕跡が出来上がる。
私の視界や他のゴーレムの視界を利用するのが問題なしと言うのは、とても大きい。
なにせ、普通のプレイヤーでは殆ど視界に入らない位置に剣があっても、正確に振ることが出来るのだから。
「呪術への抵抗は……1割くらいかしら?」
「どうでチュかね? たるうぃの邪眼術を1割の確率で返せるなら、普通の呪術は2割とか3割の確率で返せることになるんでチュけど」
「私の邪眼術だと、剣に当てられているかの判別が難しいのよね……」
「そこでチュよねぇ」
次に剣と盾にある呪術への抵抗と、抵抗に成功した際の反射光球だが……こちらはよく分からなかった。
とりあえず発動している光景自体は見れた。
発動すると、剣が仄かに光った後、光球として光が放出され、術者である私に飛んでくるのだ。
ダメージについては敢えて防御せず、急所である頭部に直撃させても、100未満のダメージだった。
だが、怯みと言うか、仰け反り効果と言うか、行動阻害効果は威力の割に大きいように思えた。
発動確率も考えると……発動したらラッキーくらいに考えておくべきだろうか。
「とりあえず盾の検証もしておくわよ」
「分かったでチュ」
ついでに盾の……ボーテックスバックラーの攻撃の余波が盾より後ろに飛ばないと言う効果も検証もしておく。
と言う訳で、第五階層に移動し、適当な容器に『ダマーヴァンド』の毒液を汲むと、盾を構えた化身ゴーレムに向けて毒液を浴びせてみる。
「チュラッハァ!」
「おおっ、これは面白いわね」
私が飛ばした毒液は空中で大きく広がり、化身ゴーレムの体全体を包み込むように飛んで行った。
飛んできた毒液に対して化身ゴーレムは盾を突き出し、化身ゴーレムの体の中で最初に天敵であるはずの液体に触れた。
すると、その瞬間に盾の縁から先に見えない壁のような物が発生。
盾で守れない範囲にあった液体が壁に触れて、止まり、化身ゴーレムの体に触れることなく床にまで落ちた。
「盾の状態は?」
「まったく問題なしでチュ」
で、その後何度か試してみたところ、幅や厚みがある攻撃の場合、その端に盾を掠らせただけでも、攻撃を止められるようだった。
だが、見えない盾の部分で攻撃を弾いた際にもしっかりと衝撃が来るようなので、この仕様については使うタイミングをしっかりと考える必要があるだろう。
あまりにも大きい攻撃を受け止めようとしたら、吹き飛ばされる危険性もあるからだ。
「じゃあ、確認作業はこれくらいかしらね」
「でチュね。それで、これからどうするでチュか? ズワムの毛皮で雪山用のコートでも作るでチュか?」
「それもいいけど、実戦での馴らしも兼ねて回収しておきたい素材があるのよね」
「素材でチュか」
では、今日の活動を本格化させよう。
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「チュブラガァ……」
「やっぱり空戦にも使えたでチュね」
「そうね」
いつもの確認を終えた後に、私とザリチュは『熱樹渇泥の呪界』へと向かう。
『熱樹渇泥の呪界』は幾らかプレイヤーが帰ってきたようだったが、空戦メインのプレイヤーを除けば、相変わらず用意された足場内での狩りに終始しているようだった。
で、そんなプレイヤーたちの姿を認識しつつ、私たちはいつも通りに足場を離れ、とりあえず遭遇した毒頭尾の蜻蛉呪は化身ゴーレムが切り刻んで始末した。
刃渡り3メートルと言うリーチは空戦でも有効に働いたようだ。
「んー……『出血の邪眼・2』習得の影響は出ていないようね」
「確かに見た感じでは変化は出ていないでチュね」
『熱樹渇泥の呪界』に『出血の邪眼・2』習得に伴う変化は見られない。
習得に使った素材の内容からして、変化が生じるなら『熱樹渇泥の呪界』の何処かだと思うのだが……出血と言う状態異常の特性上、表には出づらいようになっているのかもしれない。
まあ、出ないなら出ないで好都合なので、問題はない。
「さて……居たわね」
「熱拍の幼樹呪でチュか。あー、もしかしてそういう事でチュか?」
「ええ、そういう事よ」
さて、そうして確認作業をしつつ進んでいると、私たちの視界に熱拍の幼樹呪の姿が見えてくる。
だが目的は熱拍の幼樹呪ではなく、熱拍の変異樹呪の素材である。
それもただの熱拍の変異樹呪ではない。
「感染蔓を乗せずに『禁忌・虹色の狂眼』を撃ち込めば、丁度いいはずよ」
「ま、やるだけやってみるでチュか」
『禁忌・虹色の狂眼』に対応するように変異し、各状態異常に対して強くなった熱拍の変異樹呪だ。
そして私は『禁忌・虹色の狂眼』を熱拍の幼樹呪に向かって放った。




