437:バブルワールドシーク-3
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泡沫の世界
レベル:25
生存の可否:可
残り時間:07:58:04
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≪注意! このダンジョンは崩壊直前です! 崩壊に巻き込まれた場合、このダンジョン内で得た全てのものはなかったことになります! 残り時間は07:57:59です≫
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暴れ続ける灰の谷
喧騒が鳴りやまない。
生きているものなど居ないはずなのに喧騒が鳴りやまない。
どちらにもなれなかったのだ。
呪詛濃度:13 呪限無-浅層
[座標コード]
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≪ダンジョン『暴れ続ける灰の谷』を認識しました≫
「うーん……火山エリアの泡沫の世界は、駄目かもしれないわね。さっきに比べたら天国みたいなものだけど」
「地上と言うか本筋の影響を受けているんじゃないでチュか? クカタチから地上の話を聞いているでチュよね」
気温は60度前後。
地面や崖は見渡す限り灰で覆われており、私たちが居る場所は谷の底から数メートルほど浮いた場所になる。
で、そんな私たちの足元では……
「「「ーーーーー!」」」
何十何百と言うモンスターが叫び声を上げながら、ひたすらに殴り合い、蹴り合い、噛みつき合い、殺し合っている。
ぶっちゃけ、非常にうるさい。
なお、モンスターの姿は人型だけでなく、四足獣型……犬、猫、牛、豚、羊、サイ、象も含まれている。
「地上ねぇ……地上は火山。ダンジョンの中は溶岩、温泉、鉱山系統が多いんだったかしら? マップのフレーバーテキストには力を蓄えているなんて話もあったかしらね」
「でチュね」
「で、これとどう繋がるのかしら? 温泉が砂漠の遊園地と同じレジャー施設だって言うなら、また話は変わってくるけど」
「さあ? そこまでは分からないでチュ」
しかし、このダンジョンの特徴は地表を覆う灰や、とにかくうるさい事ではないだろう。
その証拠に……首が折れて死んだはずの人型のモンスターが起き上がって、他のモンスターに襲い掛かっている。
そして、死んだ人型モンスターと同じ種類の人型モンスターが現れ、こちらもまた他のモンスターへと襲い掛かる。
以下ループで……こうしている間にも足元では大量のモンスターがゾンビ化し、リポップし、身動きを取る事すら難しくなるほどに数が増えていく。
うん、これは泡沫の世界になっても当然だ。
恐らくだが、『七つの大呪』の内、反魂と再誕が暴走している。
「えーと、検証班の掲示板で……やっぱりね。ゾンビ化は呪怨台で呪わない限りは数日かかるわ」
検証班曰く。
死体をそのまま放置する事で反魂の呪詛が起動し、ゾンビになって動き出すには、数日かかるらしい。
しかも、動くには最低でも肉、神経、骨は残っている必要があり、肉だけ、骨だけと言った状態では動き出す事はないようだ。
つまり、ゾンビとして意志は持っても、動くにはきちんとした肉体が必要なようだ。
しかし、眼下では……腕一本になっても動いていたり、顎の骨だけが敵に噛みついたりしている。
やはり暴走しているようだ。
「再誕についても、こんな頻繁にやっていいものではないでチュよねぇ」
再誕の呪詛についてはモンスターのリポップに関わっているらしいが、検証班ではそこまで詳しい事はよく分かっていない。
では私視点ではとなると……『ダマーヴァンド』での再誕の呪詛の活動ログを見る限りでは、倒され、解体されたカースの復活に関わっているようだった。
ただ、一日の呪詛の使用量上限が決まっているらしく、眼下の光景のように片っ端から復活させるようなことはない。
ちなみに毒ネズミたちの増殖には、再誕はほぼ関わっておらず、自然繁殖をしているらしい。
「で、これからどうするでチュか?」
「うーん、どうし……ザリチュ!」
ダンジョンについてのとりあえずの考察は此処まで。
そう思った時だった。
私は背後から谷の底にあるものを一掃するように炎の壁が迫ってくるのを目視し、急いで飛び上がる。
そして私の動きに合わせてザリチュも飛翔。
「「「ーーーーー!?」」」
直後、私たちの眼下に超高温の炎が到達。
谷の底に居たモンスターたちを全て焼き払い、灰へと変えていく。
その後、炎が過ぎ去った後には、モンスターたちだった灰だけが残され……直ぐにモンスターたちがリポップし始めた。
それから、それが当然だと言わんばかりにまた殺し合いを始め、増殖も始まった。
「やっぱり泡沫の世界ね……」
「でチュねぇ……」
どうやらこのダンジョン、暴れ続ける灰の谷のギミックは、暴走する反魂と再誕の呪詛、それと巻き込まれれば灰になるまで焼かれることになる炎の壁の二つであるらしい。
どちらも燃費が悪いなんてものではないし、まあ、安定なんてするはずもない。
「とりあえずダンジョンの核かボスが何処かに居るはずだから、それを探し……っう!? こ、これ以上は飛び上がれないのね」
「まるで見分けがつかないでチュが、よく見たら絵でチュね。これ」
頭をぶつけた。
谷の深さは見た目500メートルほどあるが、どうやら実際の高さは200メートルほどしかないらしい。
目の前で見てもなおそうだと分からないように描かれた絵が天井としてあった。
「谷そのものは……円状みたいね」
「でチュね」
谷そのものは直径が3キロメートルぐらいある円状のようだ。
で、例のギミックが谷の底で暴れ狂っている、と。
「まあ、核かボスを見つけ出しましょうか。何処かにあるはずよ」
「分かったでチュ」
とりあえず雑魚モンスターや灰に素材としての価値はなさそうなので、何処かにあるはずの核かボスを探し出して、回収するとしよう。
先程の『臭泡溜まった鍋の底』と同じで、それは推奨レベル25相当の何かであるはずだ。