434:ドライセルイール-2
「さて解体ね」
「でチュねー」
自分のセーフティーエリアに戻ってきた私は、全長5メートルほどの乾電の鰻呪の死体を毛皮袋の外へと出す。
乾電の鰻呪との戦闘?
確かに乾電の鰻呪は自分を中心とした直径数メートルの電気の球体を作り出し、迂闊に接近したものを電撃によって痺れさせる力を持っている。
が、乾電の鰻呪はそれだけだ。
変電の鰻呪のような速さも、非実体とぬめりと言う物理耐性も有していない。
対してこちらはザリチュ操る化身ゴーレムと言う電気が効かない前衛と、私と言う相応の機動力と火力を持った後衛の組み合わせであり、レベルも上。
苦戦する要素なんてないのである。
「戦闘そのものよりも回収の方が大変だったと言うのは初めての経験だったでチュねぇ」
「本当にそれよね……」
むしろ苦戦したのは回収の方だった。
飢渇の泥呪の波に死体が飲み込まれたのが二回。
喉枯れの縛蔓呪によって死体を横取りされたのが二回、しかも片方は複数方向から蔓が伸びてきたせいで、五体バラバラに引き千切られた。
そして、今私たちの前にあるのがようやくマトモに回収出来た5体目の乾電の鰻呪である。
うん、大切に解体しなければ。
「よっと……あー、血は生け捕りにしないと駄目そうね」
「血でチュか?」
「鰻の血には毒があるらしいのよ。だから乾電の鰻呪の血にも毒があるかもしれない。そう考えて出来れば回収してみたかったんだけど、既に体の中で完全に固まっているわね」
私は乾電の鰻呪のネズミの頭部分と鰻の胴体部分の境目に包丁を入れて、放血させる事を試みた。
が、血は流れ出ない。
どうやら血が欲しいなら生け捕りにする必要がありそうだが……毒縛のボーラで簀巻きにして動きを止め、その場で回収するなどすれば、回収できるのだろうか?
『毒の邪眼・2』強化の為に、デンプレロ素材を扱えるレベルになったら、挑んでみてもいいかもしれない。
「とりあえず他の部位を取りましょうか。citpyts『出血の邪眼・1』」
「じゃ、手伝うでチュよ」
では解体を本格化。
『呪法・方違詠唱』、『呪法・増幅剣』を乗せた『出血の邪眼・1』も活用して、乾電の鰻呪の体をバラバラにしていく。
取れたのは……毛皮、肉、皮、骨、前歯の5種類。
なお、先述の通り、乾電の鰻呪の表皮にはぬめりがない。
おかげで、鰻の名を持っているが、捌くのは非常に簡単だった。
「さて、鑑定していきましょうか」
「何に使えるでチュかね?」
では、鑑定の時間である。
△△△△△
乾電の鰻呪の毛皮
レベル:22
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:15
乾電の鰻呪の頭と腕を守る毛皮。
乾燥に強く、並の刃物では決して切れない。
▽▽▽▽▽
△△△△△
乾電の鰻呪の肉
レベル:22
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:19
乾電の鰻呪の肉。
カースの肉は呪いの塊と言ってもいい、こんなものを食べても大丈夫なのは、同じカースくらいだろう。
注意:異形度19以下のものが食べると8%の確率でランダムな呪いを恒常的に得て、異形度が1上昇します。
▽▽▽▽▽
△△△△△
乾電の鰻呪の皮
レベル:22
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:15
乾電の鰻呪の胴体を守る皮。
表層部分は金並みの導電性を有し、その下の層はほぼ電気を通さない絶縁性を有している。
▽▽▽▽▽
△△△△△
乾電の鰻呪の骨
レベル:22
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:15
乾電の鰻呪の体を支える骨。
呪詛を取り込むことで電気を発生させると共に、操る力を有している。
▽▽▽▽▽
△△△△△
乾電の鰻呪の前歯
レベル:22
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:15
乾電の鰻呪の大きな前歯。
傷つけた相手に効率よく電気を流し込むことが出来る。
与ダメージ時:電撃属性の追加ダメージ(電源は別に用意する必要あり)
▽▽▽▽▽
「ふむ、なるほど」
毛皮は乾燥と斬撃に強いのか。
手触りも悪くはない。
なお、ズワムの毛皮の方がほぼあらゆる面で上位互換だが、そこはレイドボスと一般カースの差なので、仕方がない。
肉は復活に関わる部位らしく、呪詛を吸い始めている。
と言う事で、とりあえずは呪詛支配で吸収を停止し、逆に抜き出していく。
垂れ肉華シダに頼った方が効率的に呪詛を取り除けると思うが、呪詛の扱いの訓練代わりである。
あ、危険物なのが確定したので、今後はきちんと処理をしなければ、『熱樹渇泥の呪界』の外へ持ち出すのは禁止となる。
皮は……これで全身を覆う服を作って身に付けたら、デンプレロの落雷を完全に防げるのかもしれない。
金並みの導電性を持つなら、他にも悪用出来そうな気はするが……今は置いてこう。
骨は粉状にして、適当な容器に入れれば、乾電池のように使えるかもしれない。
名は体を表すと言うか、変電から乾電になっても電源と言う運命からは逃れられないと言うか……私が気にする事ではないか。
前歯は骨と一緒に上手く加工すれば、電撃属性の武器として加工出来るかもしれない。
毒頭尾の蜻蛉呪の毒歯、炎視の目玉呪の蛇牙、ズワムの歯、これらのアイテムと組み合わせて武器を作ってみるのも面白いかもしれない。
上手くいけば、属性と状態異常が特盛の武器になるかもしれない。
「結構いい感じね。使い道がちゃんとありそうだわ」
「でチュねぇ」
鑑定終了。
同時に肉から呪詛を吸い出すペースを上げて、無毒化を進めていく。
そうして十分に吸い出し、再びの鑑定で無毒化されたのを確認したところで、焼いて食べてみる。
「うん、ちゃんと鰻ね」
味はちゃんと鰻だった。
作り手が素人なので、普通の鰻の白焼きだが、いい感じに脂も乗っており、現実の旬からずれているのにそういう物だからと食べるような鰻よりも遥かに美味しい。
しかも元のサイズが、本物の鰻とは比べ物にならないサイズであるため、いくら食べても問題がない量がある。
うーん、米が欲しくなる。
かば焼きのタレも欲しくなる。
とりあえず肉の一欠片も残すことなく、きっちり食べきっておこう。
「ふぅ……。これなら今後は鰻が食べたくなったら、『CNP』の中で食べればよさそうね」
「でチュか。それは良かったでチュね」
そうして十分に堪能したところで私は配信を停止して、ログアウトしたのだった。
02/18誤字訂正




