431:デンプレロアフター-1
「では改めてお疲れさま。そしてありがとう。タル。特に中盤の時間稼ぎとラストの柱から落とすのと、『禁忌・虹色の狂眼』は本当に助かったわ。アレが無かったら敗北していたかもしれないから」
「私は私に出来る事をやっただけよ。ザリアたちも火力貢献に取り巻き処理ありがとう。あの取り巻きたちの感じからして、私一人では勝ち目はなかったでしょうね」
とりあえずザリアとお互いに労をねぎらう。
実際、ザリアたちが居なければ、デンプレロには絶対に勝てなかっただろう。
私一人では取り巻きの処理……特に演奏の蠍呪の撃破が間に合わず、バフとデバフが重ねられて、詰まされていた可能性は極めて高い。
ただ、ザリアの発言に一つ訂正を入れるなら、最終段階で『重石の邪眼・2』使用後にデンプレロが岩の柱から落ちた件。
あれは私個人の成果ではない。
「ああでも……」
そのことをザリアたちに伝えようとしたところ、デンプレロが落ちる直接の原因となった、足への攻撃を行った当人……レライエの姿が遠くに見えた。
しかも、話すなと言う感じのジェスチャーをした上で。
「ああでも?」
「いえ、何と言うか今回は数でのゴリ押しで、ギミックの類をだいぶ無視していたんじゃないかなと思っただけよ」
ぶっちゃけ、私が黙っていても、運営編集のPVで晒される気はするが、まあ、本人が黙ってほしいと言うなら、勝利の立役者の一人の頼み事なのだし、黙っていよう。
と言う訳で、若干無理やりではあるが、話の方向性を反省会の方へ変える。
「ギミックって……そんなのあり得るの?」
「個人的にはあると思うわよ。糞ざ……カロエ・シマイルナムンの時は聖女様の助力による弱体化があった。ミミチチソーギ・ズワムの時も最も重要な状態異常である小人は『熱樹渇泥の呪界』に突入した時点で使えた。で、今回のデンプレロの暴れ方を考えると……何かあった気はするのよ」
半分くらい口から出まかせである。
そんなものがある保証なんて何処にもない。
「確かにありそうでチュねぇ。電源的なのを引っこ抜くことで、色々な能力を使えなくさせるとか。このエリア全体の話を精査して、調べたら、何かあったかもしれないでチュね」
「「「……」」」
と、思っていたところにザリチュのこの言葉である。
これ、もしかしなくても『悪創の偽神呪』辺りからのダメ出しではないだろうか……。
何処かに変電の鰻呪の安定版が居たりしたのではないだろうか?
「ん? 聖女様の五寸釘は弱体化ギミックじゃないのか?」
「いや、アレはタルが素材を渡したからよ。それにギミックの方向性としては弱体化ではなく、保険だったし。今回の件とは無関係でしょうね」
「そう言えばそうか」
まあ、深くは追及しないでおこう。
今は反省会優先だ。
「まあでも、今回の件で一番の反省点は……放置していた事よね。本当にごめんなさい。そして協力感謝するわ」
「まあ、そこだよな……まさか、イベント直前だから自分たちの強化優先とか、底上げをして人数が揃ったら挑もうとか、そうやって後回しにしている間に、あんなことになるとは思わなかった」
「そうだな。敵対しているカースは放置厳禁。それが今回分かったことの中では、一番重要な点かもしれない」
「私たちも他人事じゃない感じだよねぇ」
「そうだな。俺たちが普段メインで戦っている場所でも、同じような事になる可能性は十分あると思う。わざと暴走させた奴らだって、BANされたわけじゃないんだからな」
「アウトロープレイを運営は許容。レベル2の悪創が入るだけ」
「そうですね。今後もわざとやるプレイヤーは出て来ると思います」
ザリアの言葉をきっかけに、一気に反省会が進む。
まあ、一番の反省点は全員共通。
敵カースの放置、ダメ絶対。
これに限る。
私の管理する『熱樹渇泥の呪界』だって例外ではない可能性があるし、今後も注意はしておくとしよう。
あ、『鎌狐』については見事にしてやられたので、見つけたら褒め称えた上で毒漬けにしよう。
デンプレロを倒して直接の仇は討ったが、『鎌狐』の連中も仇には違いないのだから。
「で、敵カースの放置厳禁はいいとして、他の地方の進捗具合はどうなの?」
私の質問にそれぞれから答えが返ってくる。
「火山は恐らく後二週間ぐらいで、挑めるのではないかと言うところだろうな。ただ、件の連中の件もあって、このまま進めていいのか悩ましいところではある」
「私たちが火山のカースを倒したら、そのままサクリベスに来て、良くない事をしそうな感じなんだよね。もしかしたら、そのまま戦争みたいになるかも」
「そうだな。だから、火山の攻略は一時停止になるかもしれない」
火山については例の状況次第では簡単に盗賊になりそうな遊牧民の類がネックのようだ。
皮肉と言えば皮肉な事だが、火山のカースはある種の防波堤になっているようだ。
ただ、『理法揺凝の呪海』で得た情報を合わせて考えると、遊牧民の話を抜きにしても、二週間では到達できない気もする。
「雪山も後二週間くらい……なのか? 正直なところ、どれぐらい進んでいるのかはよく分からん。とりあえず俺を主とする拠点は出来て、装備も整ってきてはいるな」
「雪山のダンジョンは雪で埋まった場所の下にある事もある。だったか? 面倒らしいな」
「実際面倒だ。まだまだ防寒対策が十分とは言い切れなくてな……今回のように外から援軍を招くならその分だけ装備も要るし、今回の件で備蓄も出してしまったしでな……」
「う……その、出来る協力はさせてもらうわ」
雪山も二週間なのか。
倒した後の事を考える必要がなく、『理法揺凝の呪海』で得た情報も合わせて考えると、次は雪山になるかもしれない。
とは言え、二週間より早くなることはなさそうか。
「海については、検証班として得た情報を言わせてもらうならまだまだですね。ようやく船が出来て、本格的な調査が始まったくらいですから」
「海かぁ……深海とかにもダンジョンってあるの?」
「あると言われていますね。ついでに言えば、海中に漂う形でダンジョンが存在している事も確認されています。おかげで、探索範囲は三次元的な物となっており、はっきり言ってまだまだ見通しは立ちませんね。場合によっては次のイベントが終わってもまだボスに辿り着けていないかもしれません」
海はまだまだ先と。
当然なので、特に言う事は無し。
「砂漠の先についての情報。『光華団』が把握している限りでは、壁のような山と深い谷があるのは分かってる。ただ、谷と砂漠の間には、『試練・砂漠への門』のような境界があるみたいで、当分は攻略できなさそうだった」
「なるほど。まあ、第三マップに手を伸ばすよりも前に。と言う事でしょうね」
西の第三マップの話もまだなし。
第三マップについては、もしかしなくてもまずは南の遊牧民からかもしれない。
他と違って情報も既に出ているわけだし。
「ふうん、なるほどね。そうなると、暫くはきちんとした自己強化に努める時間がありそうね」
「え? タルってまだ強くなんの?」
「レベルも装備も呪術も足りないのよ。未だにズワム素材は殆ど使えていないし」
「ざりちゅの装備品も間に合わせでチュからねぇ……」
さて、反省会と今後についてはとりあえずはこんなところか。
ザリアたち以外に私と話をする気があるプレイヤーは居ない様だし……聖女様特製の五寸釘を回収したら、『ダマーヴァンド』に帰るか。
「じゃ、私たちはこの辺で失礼させてもらうわ」
「分かったわ。今日は本当にありがとうね。タル」
と言う訳で、私はザリアたちに別れを告げると、聖女様の五寸釘を刺してある場所まで飛行。
で、それを引き抜くと、結界扉まで帰るのも面倒なので、その場に『理法揺凝の呪海』に通じる門を作成して飛び込む。
「……」
「どうしたの? ザリチュ」
「いや、ザリアたちに見せてよかったのかなと思っただけでチュ」
「……。ああ。ま、ヒントみたいなものとしていいんじゃない。知ったところで私ほど気楽に使えるわけじゃないでしょうしね」
そうして私は無事に『ダマーヴァンド』へ帰還。
疲れたので、ログアウトしたのだった。
私が自由度の高い転移手段持ちなのはバレたが、そちらについては今更なので問題はないだろう。
02/15誤字訂正




