430:デンプレロ・ムカッケツ-8
本日二話目です。
明日からは一話更新に戻ります。
「「「勝ったぞおおおぉぉぉ!!」」」
「「「ヒャッハアアアァァァ!!」」」
「「「カースを倒したぞおおぉぉ!!」」」
「「「悪創消えたああぁぁ!」」」
「「「デンプレロザマアアアァァァァ!!」」」
「「「いやっふうううぅぅ!!」」」
千人を超える人間が歓喜の声を上げ、空気が激しく震える。
両手を上げて喜びを表現する者が居れば、友と抱き合って無事を分かち合う者が居る。
気が抜けて座り込む者も居れば、宙に視線をやることで得た報酬を早速確認する者も居る。
中には悲しそうにしている者も居るし、悔し涙を流しているように見える者も居るが、概ねデンプレロの討伐を喜んでいるようだ。
≪『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツが討伐されたため、リアル時間で24時間、『笑み乾く行進の呪地』にモンスターは出現しません≫
「とりあえず範囲縮小と着地っと」
「でチュね」
私は『呪圏・薬壊れ毒と化す』の範囲を半径10メートルほどにまで縮小すると、周囲にプレイヤーが居ない場所に着地する。
モンスターが出現しないとは言え、誰もが疲労困憊の状態なので、不意に薬や食料が毒化してしまうと面倒なことになるからだ。
そして私自身のHPと満腹度も危ないので、とりあえず斑豆を食べて満腹度は回復しておく。
「さて、確認ね」
近くに居るプレイヤーとの話が終われば、ザリアたち辺りは私に近づいてくるかもしれない。
と言う訳で、その前に今回の戦闘で得たものの確認をしておく。
△△△△△
『沈黙の名手』
効果:沈黙の付与確率上昇(小)
条件:沈黙(1,000)以上を与え、沈黙の効果が残っている間に生物を殺害する。
私の沈黙捌きは如何かな? 悲鳴一つどころか、息をする事もままならない。まだ先もあるんだけどね。
▽▽▽▽▽
「はいテンプレ」
「知っていたでチュ」
『沈黙の名手』はテンプレ称号。
ただ、デンプレロに与えたスタック値だけを見れば、『沈黙の達人』を獲得してもおかしくはなかったはず。
なのに獲得出来なかったとなると、スタック値以外の条件を満たせなかったと言う事になるか。
まあ、飛ばして得てしまうと悲しい事になるので、獲得せずに済んで良かったと思おう。
△△△△△
『重力使い(増)』
効果:重力増大の付与確率上昇(微小)
条件:重力増大(100)以上を与え、重力増大の効果が残っている間に生物を殺害する。
私の重力増大の力を見るがいい。
▽▽▽▽▽
「こっちもテンプレ。ただ、増大に限った称号と言うあたり……」
「まあ、減少方向もあると思うでチュよ」
『重力使い(増)』もテンプレ称号。
ただ、わざわざ括弧付きで増の表記がある辺り、重力減少のような状態異常があり、そちらにも同様の称号があるのだろう。
私がそちらの称号を取得したら、括弧が取れるだけの気もするが。
「『悪創:変圧の蠍呪Lv.0』は傷跡の類として残る事もなく完全消滅なのね」
「残っていても邪魔なだけだと思うでチュよ」
『悪創:変圧の蠍呪Lv.0』は表記通りにしっかり消えている。
やはりペナルティとしての側面が大きいからだろうか。
「さて……」
では問題児のターンである。
何故修得してしまったのかは分からないが、修得してしまった以上はきちんと確認をしなければいけない。
△△△△△
『転写-活性』
レベル:1
干渉力:100+発動者のレベル
CT:なし
トリガー:思考発動
効果:『七つの大呪』の一つ、『転写』の呪いを活性化させる。
『転写』の呪いとはこの世を為す七つの呪いの内の一つである。
強固な想いを写し取り、対象に刻み込む事を手助けするための呪いであり、新たなる呪いを生み出す事を容易とする。
だがこの呪いは、この世に在らざる力あるいは極限定的な力を求めた者たちが、己の欲を満たさんがために生み出した強欲の呪いであり、僅かでも自分の求めるものと違えば諦めると言う、行き過ぎた分別の思想に囚われた集団のものでもあった。
四番目の大呪であり、混沌、始原、変化、様々な要素に繋がり、肥大を続けるが、唯一だけはない。
▽▽▽▽▽
「……」
新たなる呪いを生み出す事を容易にする、か。
もしかしなくても呪怨台と同じような事が出来るのだろうか?
そうなると色々と悪用出来そうな気がするが……まあ、『七つの大呪』なので、迂闊に利用すると酷い目に合うのだろうけど。
「どうしたでチュか? たるうぃ」
「まあ、有用そうではあるわね」
とりあえず今回の『禁忌・虹色の狂眼』での使われ方としては、私の意思を『禁忌・虹色の狂眼』に刻み付け、強化。
その結果を受けて、修得をしたのだと思う。
で、『転写-活性』の効果が如実に表れたのが『呪法・感染蔓』の蛇のようになった蔓であり、絡み貪るような動きだったのだろう。
エフェクトの変化もそうかもしれないが。
えーと、となれば、普段使う分には邪眼術の発動前に、発動する邪眼術の内容に合わせたイメージをして、放つ呪いにその念を込める、と言うところか。
強化率がどの程度かは分からないが、きちんと使えば有用なのは間違いない。
「アイテムについては……詳細は『ダマーヴァンド』に戻ってからでいいわね」
「でチュねー」
デンプレロの素材については目録こそ見たが、詳細については後回し。
その後の鑑定もあるので、安全な場所でじっくりとやりたい。
とりあえず、それなりの量はあったし、名前からして有用そうなものもあった。
「タル! お疲れ様!」
「ザリア。お疲れ様」
さて、ザリアたちに……スクナたち、マントデア、ストラスさん、ライトリがやって来たか。
単純にお互いを労うだけで終えてもいいのだけど……少しだけ他の話もする事になりそうだ。
02/15誤字訂正