427:デンプレロ・ムカッケツ-5
本日一話目です
「結実せよ。ブラッディフルーツ!」
「コケアアアアァァァァァ!!」
「ガブガブ行くよおぉぉ!」
「ぐまあああぁぁぁ!!」
「ようやくの攻撃チャンスだけあって、みんな景気よく叩き込んでいくわねぇ……pmal『暗闇の邪眼・2』」
「ーーー!?」
マントデアの不意打ちを皮切りに、デンプレロの正面以外の方向からプレイヤーが接近。
次々に大技を叩き込んでは、反撃を受けたり、巻き添えを食らったりしないように離脱していく。
だがデンプレロもただ殴られるだけではない。
突起からの風噴射の弾幕は濃く、八本ある脚による踏みつけも強力。
電気のチャージさえ終われば、直ぐに周囲への電撃も放ってくる。
「ーーーーー!」
「のんきに話をしていないで、ざりちゅの手助けをするでチュよ! たるうぃ!」
「そう言われても、沈黙と暗闇はしっかりかけているし、フェアリースケルズでの回復ぐらいしか出来る事はないわよ」
しかし、落雷と言う威力も範囲も優れた技をザリチュの化身ゴーレムによって防がれているのは癪に障るのだろうか。
最も多くの攻撃が向かって来ているのは、デンプレロの頭上で避雷針として待機し続けているザリチュの化身ゴーレムへの攻撃であり、紫色のビーム含めて、上方向への攻撃はだいたい化身ゴーレムに向かっている。
おかげでザリチュは化身ゴーレムの操作に専念せざるを得なくなっている。
「ーーー……」
「全員に通達。鋏攻撃が来るわよ」
まあ、ザリチュがネズミゴーレムを弄って、私の言葉を自動で真似してくれるようになったので、ザリチュの役割の一部は私がすればいい。
とりあえずデンプレロが包囲状態から脱する事も狙って、超音速の鋏攻撃を正面方向に放とうとしているのを他プレイヤーに伝える。
デンプレロの正面に居るプレイヤーは……数人居るか。
助けられないので、何もしない……
「!?」
「は?」
「チュアッ!?」
信じがたい事が起きた。
デンプレロは鋏を振りかぶり、全身の突起から勢いよく空気を噴出しつつ、前方に突き出した鋏を閉じる事で、超音速の攻撃を行う。
これは喰らえばマントデアでも即死するような威力と、厚いプレイヤーの壁でも粉砕する突破力を併せ持つ極めて強力な攻撃であり、物理的に止めることは不可能だと思われていた。
勿論、デンプレロのサイズと耐性的に、状態異常で止める事も不可能と全員判断していたので、正面には立たないと言うのが、いつの間にか鉄則になっていた。
「ふぅ……流石に重いな」
が、そんな攻撃を放ったデンプレロは、何故か攻撃を放つ前と変わらない位置で、攻撃を放つ前よりも大きく仰け反っていた。
そして、デンプレロの正面には、巨大な剣を振り抜いた姿勢で止まっているスクナの姿があった。
「だが、挑戦した甲斐はあった。ちゃんと弾けるらしい」
つまりその……うん、スクナは四本の腕でなければ扱えないような大剣を使う事で、デンプレロの鋏攻撃をパリィしたらしい。
「総員攻撃ぃ!」
「「「!? うおおおおおおおおおぉぉぉ!!」」」
たぶん、何重にもバフを重ねて、特殊な呪術を使った結果だとは思う。
が、体格的にワンチャンスありそうなマントデアではなく、体格そのものは人並みであるはずのスクナがそういう事を出来るとは……まさかだった。
いったい成功要因の何割くらいが本人の技量なのだろうか……。
とりあえずパリィされた為なのか、デンプレロは電撃のチャージも、突起からの風の噴出も止まって、完全に硬直していたようだったので、一斉攻撃を仕掛けていく。
攻撃の主体はクカタチの攻撃がよく効いていた事から、水を利用したものであり、外ならば虹でもかかりそうなくらいに大量の水飛沫が舞う。
「通達! 巨大呪術入るわよ!」
「ーーー!?」
そして何度目かになる巨大呪術もデンプレロの直上にて炸裂。
確実にデンプレロの体力を削り取っていく。
さて、この分ならそろそろか。
「たるうぃ」
「ザリチュはそのまま化身ゴーレムを飛ばしておいて。何が来てもおかしくないわ」
流石に負荷が大きかったのか、スクナは四辻さんと思しき男性に担がれて後方に向かっている。
他のプレイヤーたちも、警戒を露わにしている。
「ーーー……。ーーーーー!!」
デンプレロが動いた。
気温が急激に下がり始めると共に、バズーカ砲のような物を担いだもぎりの蠍呪がエリアに出現し始める。
そして……
「地面が!?」
「気を付けろ! 流砂だ!!」
「砂が揺れて!?」
地面である砂地が動き出す。
それも乗っている人物ごと横にスライドするような単純な動きだけでなく、海の波のような上下動をしたり、足を取られたものを巻き込む気満々な蟻地獄も発生している。
「此処に来て、足場を奪いに来るとはね!」
「いや、それだけじゃないでチュよ! たるうぃ!」
急激な変化にプレイヤーたちが動揺している間にもデンプレロは動く。
全身の突起から空気を吸引し、蓄えている。
これまでの風の噴出によって砂を吐き出すのとは別格の何かをしようとしている。
「ーーーーー!」
「「「!?」」」
「うげっ……」
「チュアッ!?」
デンプレロの口から大量の砂が混ざった暴風が放たれる。
私とザリチュ、化身ゴーレムは居た方向が良かったので巻き込まれなかったが、巻き込まれたプレイヤーたちは全身を風と砂によって引き千切られて、例外なく死に戻りさせられた。
そして、放たれた風は消滅するのではなく、遠く離れた場所で渦を巻く形で保持され……砂の竜巻となってゆっくりと移動を始めた。
当然の権利として、進路上に居たプレイヤーの体を引き裂きながらだ。
「い、一気に攻撃が凶悪化しすぎでしょう!?」
「砲撃が飛んで来るでチュよ! たるうぃ!」
一気に阿鼻叫喚の状況になった。
暴風を放ち終わったデンプレロはこれまでと同じ攻撃を放って暴れ回る。
遠距離攻撃手段を得た取り巻きたちは、遠くからでも他プレイヤーたちに攻撃を仕掛け、空に居る私たちに対しても容赦なく攻撃が飛んでくる。
足場である砂地が動いて、プレイヤーたちは体勢を崩し、蟻地獄に飲まれたプレイヤーは大方の予想通りに即死する。
「まずは立て直しよ。デンプレロは私とザリチュが抑えるから、他のプレイヤーは数を揃えて!」
「連絡あり。分かった。だそうでチュよ!」
推定デンプレロ第四段階。
それはまるで、此処からが本番であると言わんばかりの暴れ方だった。
私はデンプレロの暴れ方に苦笑しつつも、注意を惹くように動き始めた。
02/13誤字訂正




