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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
7章:『理法揺凝の呪海』
425/1000

425:デンプレロ・ムカッケツ-3

本日一話目です。

「アバアアァァ!」

「急な範囲攻撃とか、アアアァァァ!」

「メギョ!?」

「オブ、オボガァ!?」

 さて、冷静に一つずつ起こった変化を処理していこう。

 まずデンプレロの全身の甲殻に刻まれている文様が発光するようになった。

 で、周囲数メートルに放たれた電撃だが、どうやら電撃そのもののダメージ量は僅かだが、気絶の状態異常が付与されるものであるらしい。

 気絶したプレイヤーが突起から放たれた砂によって次々に撃ち抜かれている。


『温度、急激に下がっているでチュ。このままいけば、氷点下になるのは確定でチュ』

「じゃあ、懐炉札を使っておきましょうか」

 変化その二、気温の低下。

 70度近かった気温が、1秒につき1度のペースで下降中。

 ザリチュの報告通りなら、恐らくは夜の砂漠と同じレベル……氷点下30度くらいまでは気温が低下するだろう。

 と言う訳で、懐炉札を使用して、体温の維持を図る。

 氷点下だと『死退灰帰』が発動しないので、立ち回りにはこれまで以上に注意が必要か。


「敵についての報告は?」

『もうしてあるでチュ。近くに居るプレイヤーに対応を頼んでいるでチュよ』

 変化その三、新種の取り巻きの出現。

 基本的な見た目はもぎりの蠍呪と変わらないが、手にしているのは武器ではなく楽器である。

 そして流れてきたのは、あの時の戦いでBGMとして聞いているのだと思っていた音楽によく似たもの。

 うん、楽器持ちの時点で広域バフデバフの使い手ではないかと思っていたが、予想通りだったか。

 数は……見える範囲でも800体前後。

 だいたいは固まっているが、はぐれも居る。

 これの処理は手を焼きそうだ。


「ーーーーー!」

「おっと、etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』」

 状況確認終了。

 総合的に判断して、超大型ボス、デンプレロとの戦闘は第二段階に入ったと判断して良さそうだ。

 とりあえずデンプレロから飛んでくる攻撃を回避しつつ、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』を乗せた『毒の邪眼・2』を撃ち込んでおく。


「ーーー……」

「む……」

『カウント停止。967でチュ』

「分かったわ。15分で再使用可能と見ましょう」

 しかし、蜃気楼によって攻撃は回避された。

 が、蜃気楼中はデンプレロからも攻撃不可能で、蜃気楼後も攻撃は準備からやり直しと言う事で、この間に、状況の変化をさらに詳しく精査していく。


「掲示板、メッセージ、眼球ゴーレム、ザリチュ……」

『伝えるでチュ』

 現在、プレイヤーの数は1,500程度。

 デンプレロに攻撃を加えられる集団は二つほど。

 復活についてはもぎりの蠍呪対策の為にルールを決めているのだが、それは規律正しく行われている。

 他の集団は楽器持ちの蠍呪……正式名称、演奏の蠍呪の処理に追われている。

 その演奏の蠍呪だが、戦闘能力は低めだが、周囲にバフデバフをばら撒き、時間経過でそれが強まっていくようだ。

 つまり、とっとと処理をしないと、フェーズ2の悪夢再来。

 うーん、はぐれ演奏の蠍呪が厄介か。


「「「ヒャッハアアァァ!」」」

『ザリアから連絡でチュ。ザリア分隊ではぐれについては対処するらしいでチュよ』

「みたいね」

 そう思っていたら、ゾンビ馬に跨って砂地を駆けるモヒカン集団が現れて、はぐれ演奏の蠍呪を始末していく。

 また、巨大呪術を使える二つのグループが遠距離攻撃を使う事で、どこの集団からも離れている演奏の蠍呪を攻撃してくれているようだ。

 これならば、基本的には任せていいか。


「ーーーーー!」

「と、思考タイムは終わりね」

 デンプレロが攻撃再開。

 紫色のビームが私に向かって飛んでくるのでそれを回避、続けて飛んできた砂の弾丸も丁寧に避けていく。

 そうしている間に、眼球ゴーレムの一体の視界にて、砂地から演奏の蠍呪が一体だけだが新たに湧いてくるのを確認。

 どうやら無限湧きのようだ。

 となると適宜処理しつつ、戦闘をとっとと進めるしかないが……。


「あのはぐれは私が止めておくか。ysion(イシオン)沈黙の邪眼・2(タルウィセーレ)』」

 私は呪詛の槍を眼球ゴーレムの視界を繋いで一直線に飛ばす。

 そして、周囲にプレイヤーも他の蠍呪も居ないからと放置されていた個体に突き刺さったところで『沈黙の邪眼・2』を発動して、演奏を強制停止させておく。

 いや、演奏の停止どころか、呼吸が出来なくなって倒れたか。

 どうやら演奏の蠍呪は呼吸が必須らしい。


「ーーーーー!」

「そんな攻撃は……っ!?」

 私の体全体に重圧がかかる。

 目に見えない壁のような物によって押されて、体が吹き飛ばされる。

 なるほど、デンプレロの突起から砂を含まない形で風が吹き出されたのか。

 そして、吹き飛ばされる先にあるのは岩の柱。

 この勢いで叩きつけられれば、大ダメージは免れない。


「甘いわ」

「!?」

『ん? デンプレロが驚いたでチュ?』

「そっ。etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』」

 が、私は空中で姿勢を制御。

 岩の柱に足から接地し、『空中浮遊』の呪いによって上方向のベクトルを得て、吹き飛ばされる勢いも上方向に捻じ曲げていき、岩の柱を滑るように上がって、衝撃を大幅に和らげる。

 そして反撃の『毒の邪眼・2』を撃ち込んでおく。


「ちょっと危なかったわね」

『でチュね』

 それから攻撃をかいくぐって、再び定位置にまで飛行。

 その途中でフェアリースケルズを使ってHPの回復もしておく。

 と言うのも、岩への叩きつけは回避したのだが、デンプレロの攻撃はそれだけではなかったからだ。


「氷結属性の風はキツイわね……」

『見えない上にダメージはしっかり入るんでチュからねぇ』

 デンプレロの突起から放たれる風。

 その風がただの風ではなく、気温の低下に合わせるように氷結属性のダメージが含まれるようになっていた。

 懐炉札があろうとも、氷結属性は私にとって弱点の属性。

 死にはしないが、無視も出来ない程度にはダメージが出ている。


「とは言え、第二段階の変化はこれぐらいかしらね」

『っぽいでチュね』

 デンプレロの甲殻の文様が明滅し始め、鋏が振り上げられる。

 そして振り下ろされると共に再び電撃が発せられ、近くに居たプレイヤーはその後に続く冷気を含んだ砂の攻撃によって倒されていく。

 正面に立てば超音速の鋏攻撃が行われ、紫色のビームはおおよそ5分に一度放たれる。

 踏みつけ、噛みつきも放たれ、攻撃が直撃したプレイヤーは消し飛んでいく。

 反撃は出来ているが……犠牲者の数も確実に増えている。


「後はどれくらい時間がかかるかだけど……」

『演奏の蠍呪のせいで、全員忙しいでチュからねぇ……』

 加えて、影法師、もぎりの蠍呪、演奏の蠍呪の処理は順調だが、そちらに手を割かれる分だけデンプレロへの攻撃が少なくなる。

 第一段階では代わる代わる攻撃を仕掛けられたが……第二段階では攻撃のペースは落とさざるを得ないようだ。

 取り巻きの処理を終え、状態を整え、デンプレロの電撃が来るかどうかの確認をして、それから突撃となると、当然の結果ではあるが。


「ま、私は私の仕事をするしかないわね」

『でチュね』

「ーーーーー!」

 まあ、私のやることに変わりはない。

 私を撃墜しようと、砂入りと砂無しの風を使い分けて撃ち始めたデンプレロの攻撃を回避しつつ、邪眼術を撃ち込んでいくのみである。

 沈黙で風を弱め、毒でHPを削り、暗闇で攻撃の精度を落とす。

 手が空いていれば、はぐれの演奏の蠍呪を狙い撃って落とす。

 『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』の高すぎる威力に伴う懸念もある以上、これが今の私に出来る事である。


「ーーーーー!」

 そうして第二段階開始から20分、戦闘開始から40分ほど経った頃。

 次の変化が生じた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 頑張ってパラパラと読んでみたけど面白く無い。 タルによるタルのための物語?物語にもなってない気がするけど。 ただ一人都合良く強くなって、一人ワンパターンにただただ筆者のペースで書いてるだけか…
[一言] なんでゲイザリマン使わないのかと思ったら、カウンターの類いを警戒してたのか
[一言] 乾燥、焦熱、疾風、砂嵐、蜃気楼……これに変電の電撃。これに追加されるとしたら……流砂と鉄砲水辺りが追加されそうと予測してみる
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