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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
7章:『理法揺凝の呪海』

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424/1000

424:デンプレロ・ムカッケツ-2

本日よりしばらくの間、一日二話更新となります。

こちらは二話目となります。

etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』……む」

『蜃気楼でチュね』

「ー!」

 戦闘開始から5分経過。

 私は呪詛の槍が重なったタイミングで『毒の邪眼・2』をデンプレロに放ったのだが、その瞬間にデンプレロの体が霞んで、私の攻撃はすかされてしまった。

 まあいい、あの時と違って使ったのは『毒の邪眼・2』だし、現状でも状態異常は5万を超えている沈黙と、2千を超えている毒と十分なスタック値なので、一度すかされた程度なら特に被害はない。

 それよりもだ。


「ザリチュ。カウント開始」

『分かっているでチュ』

 私の邪眼術を発動してから回避できるなどと言う強力な回避能力が、ノーリスク、ノーコスト、ノークールタイムで使えるわけがない。

 前二つはプレイヤー視点では分からないかもだが、最後の一つについては絶対にある。

 だから、ザリチュに頼んで、次に発動するまでの時間は計測してもらう。


「効果時間は3秒」

『その間はあちらからも攻撃は出来ず。移動も出来ない感じでチュかね』

 肝心の蜃気楼化の性能そのものは3秒間、あらゆる攻撃を無効化する代わりに、あちらからも攻撃できず、移動も出来なくなると言うところか。

 突起からの風と砂による攻撃が止んだ。

 とりあえず掲示板に情報は流しておこう。


「ーーーーー!」

「じゃ、一度これを撃ち込んでおきましょうか。pmal(プマル)暗闇の邪眼・2(タルウィダーク)』」

 蜃気楼から実体に戻ったデンプレロが再始動。

 が、蜃気楼になった時に吸い込んだ砂や空気もなくなったのか、吸気からやり直しのようだ。

 と言う訳で、その隙を突く形で呪詛の星を放ち、『暗闇の邪眼・2』を発動。

 直接的なダメージと暗闇(464)か、ダメージについては属性的に微々たるものだろうが、暗闇は……


「ーーーーー!?」

「おっ、弾幕が薄くなったわね」

『でチュねぇ』

 効果あり。

 突起から放たれる砂も空気も明らかに狙いが甘くなり、見当はずれの方向に飛び始めた。

 だが、デンプレロの体の動きなどから察する限り、視覚以外の手段でも私の位置を把握しているらしく、大きく狙いが外れる事はないようだ。

 と、このタイミングでデンプレロの尾が吸気を始めたか。


「……ーーー!」

「ビーム。狙いは……甘いわね」

『ビームのカウントは386でチュね』

「了解。でも6分じゃなくて5分間隔で見ておくわ」

 デンプレロの尾から私目掛けて紫色のビームが放たれる。

 だが、暗闇の影響で狙いは大きく逸れ……それ故に当たるを幸いに尾を大きく振り回す。

 三次元的に動ける私はそんな攻撃を受けたりはしないが、他のプレイヤーたちは……ああうん、何人か巻き込まれたのが眼球ゴーレムの視界に映った。

 まあ、うまく対応していただきたい。

 距離による減衰が結構あるのか、遠くの方で直撃しそうになったプレイヤーは盾で防ぎ、無事だったりするし。


「さて、ザリアたちは……そろそろ来るわね」

 では、周囲の状況。

 集団ごとに差はあるが、大きな被害も出さずにもぎりの蠍呪を倒したプレイヤーたちは、影法師たちを仕留めつつ、こちらに向かって来ている。

 最初に到達しそうなのはザリアたち。

 ようやく戦闘本番になりそうだ。

 と言う訳で『死退灰帰』服用。

 すると増えた私の異形度に反応するように、眼下の砂地からもぎりの蠍呪が三体出現する。

 掲示板に報告して放置で。

 どうせ、この後の攻撃に巻き込まれて消し飛ぶ。


「アオオオオォォォン!!」

「せいやぁ!」

「風よ!」

「おらぁ!!」

「ーーー!?」

 ザリアたちが到着。

 デンプレロの後方から弾幕をかいくぐって接近し、ブラクロのバフを受けてから、それぞれの攻撃を後ろ脚とその周囲へと叩き込んでいく。

 で、それに巻き込まれる形で、今出現したもぎりの蠍呪も予定通り消し飛んだ。


「ーーー……」

etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』……流石にヘイトは奪えないか」

『流石に人数が100倍近い相手に火力で勝つのは無理でチュよ』

 強力な不意打ちにヘイトがザリアたちに移ったらしい。

 デンプレロがザリアたちの方を向くべく、踏みつけによる攻撃も試みながら、方向転換を始める。

 こうなると私の火力では『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』に『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』を重ねないとヘイトは奪えないだろう。

 しかし、当初の予定通りなので、私はこれから状態異常付与ともう一つの仕事に専念すればいい。

 そして、ヘイトはザリアたちに向き続けるわけではない。


「ボルトハンマー!」

「ぶっ潰せぇ!」

「うおらぁ!!」

「ーーー!?」

 マントデア率いる普段は雪山で活動しているらしいプレイヤーの一団が到着。

 マントデアの巨体と、マントデアに比べれば小さいが、他プレイヤーの倍はありそうなプレイヤーたちを盾にする事で接近し、ザリアが攻撃したのとは逆の足へと攻撃を叩き込んでいく。

 なお、見るからに暑そうな格好をしているが、今の70度近い気温にも対処しているので、対策はちゃんとされているようだ。


「俺らも続けぇ!」

「うおっしゃぁ!」

「やったらぁ!!」

「ーーー……」

 そこへ更に第三の集団が到着。

 マントデアの斜め前辺り、他の方向に比べると弾幕が薄い場所から接近し、攻撃を仕掛ける。

 仕掛けるが……うん、まずい。

 デンプレロが片方の鋏を持ち上げていて、しかも大量に空気を吸引、おまけに持ち上げた鋏は開かれている。


「ザリチュ。警告は?」

『送ったでチュ。が……』

 デンプレロが動く。

 距離があってもなお俊敏と感じるスピードで踏み込み、鋏を突き出しつつ閉じ、軌道上に居たプレイヤー、70名近くを切断……否、粉砕した。


『アレ相手に回避を間に合わせるのは無理があると思うでチュ』

「まあ、そうよねぇ……」

 そして、完全に粉砕が終わったところで、強烈な破裂音が周囲に鳴り響き、それと同時に発せられた衝撃波によってザリアたちは吹き飛ばされ、マントデアたちも巨人数名を除いて吹き飛ばされる。

 うん、これはネズミゴーレムで情報を送っても無理がある。

 あの集団に持たせておいたネズミゴーレムも見事に破壊されたし。

 と言うか、たった一撃で戦線を崩壊させないでいただきたい。


「とりあえず近場のネズミゴーレムを送っておいて」

『分かったでチュ』

「それとザリアたちは一時後退」

『もう始めているでチュよ』

 この攻撃にザリアたちは堪らず後退を開始。

 ただ、背中に突起からの砂噴射を受けて死にかけたり、倒されたりしているプレイヤーたちの姿を見る限り、逃げて態勢を整えるのも一苦労のようだ。

 しかし、今回の私たちの戦力はこれだけではない。


「突っ込め!」

「全員行きましょうか!」

「ーーーーー!?」

 と言う訳で、ザリアたちに追撃を仕掛けようとしていたデンプレロの背後から『エギアズ』と『光華団』が突撃。

 強烈な物理攻撃と呪術による攻撃が重なって、デンプレロの足を強制的に止める。

 この間にザリアたちは離脱を完了。

 すると当然のようにヘイトは残っている『エギアズ』と『光華団』へ向かうわけだが……


「ふははははっ! 蠍など孔雀のように喰らってくれるわ!」

「孔雀じゃなくて鶏なのです!?」

「今更だろうが!」

「ふははははっ! 大物! 斬り甲斐がある!!」

「あははははっ! 行くよ! マナブ!」

「言われなくても!!」

「ーーーーー!?」

 今度はそのタイミングでオンドリアを含む集団とスクナ率いる集団が後ろ足へと襲い掛かる。

 特に効果が大きそうなのはスクナの斬撃と、鮫に変形しつつマナブの背負う籠から飛び出したクカタチの攻撃か?

 傷が深い感じがある。

 そして、度重なる後ろ足への攻撃にデンプレロの足にも負荷がかかったのか、足が止まるだけでなく、一時的に痺れたようになっている。

 ダウンの類だろうか。

 であるならばだ。


「ダウン確認。支援砲撃よろしく。ただ、念のために着弾時間は3秒以上ずらしてで」

『どちらからも了承の返事でチュ。避難指示も送ったでチュよ』

 ザリチュを介して伝えられた私の合図によって、遠くの方から巨大な呪術の塊が二つ放たれる。

 同時にスクナたちもデンプレロの傍から急いで離れる。

 そして、それはデンプレロの上で実体を持つ現象に変換された。


「ーーーーー!?」

 一つ目は巨大な熱球。

 爆発と熱がデンプレロの胴体の上で発生して、その体を焼く。

 二つ目は大量の金属製の槍。

 デンプレロの体のサイズからすると一つ一つは小さな針かもしれないが、関節と関節の隙間に突き刺さるだけでなく、単純な質量によるダメージも稼げているようだ。

 言うまでもなく、第三回イベントでも使われた大型術式の類である。


「ーーー……」

 そうして、大型術式の攻撃が終わったタイミングで、また別の集団が接近して攻撃を仕掛け始める。

 デンプレロはどの集団を優先して攻撃すればいいか分からずに、当たるを幸いに攻撃を繰り返すようになっている。

 これならば、この後もこの形を基本として、攻撃を続ければいいだろう。

 毒、沈黙、暗闇の状態異常については私が維持し続けるし。


『チュ?』

「来たわね」

 が、超大型ボスたるものがこれだけで倒せるほどに甘いと言う事はあり得ない。

 その証拠が示すべく、戦闘開始から20分ほど経ったタイミングで、デンプレロが両方の鋏を持ち上げる。


「ーーーーー!!」

『温度の変化を確認。低下を始めているでチュ』

「新種の蠍呪の出現を確認。恐ろしい事に楽器持ちよ」

「「「ーーーーーーー!?」」」

 そして、鋏が振り下ろされると同時にデンプレロの全身から電撃が発せられ、更にはマップ全域を対象とする形で幾つもの変化が生じた。

02/12誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] >>こうなると私の火力では『禁忌・虹色の狂眼ゲイザリマン』に『呪法アドン・感染蔓スプレッド』を重ねないとヘイトは奪えないだろう。 ・・・多分「鑑定のルーペ」使えば何をしてようが最優先でヘイト…
[一言] 空気が破裂するパンチとかシャコかな? 楽器だと蔓で沈黙かけても意味なくねやばくね
[一言] >距離があってもなお俊敏と感じるスピードで踏み込み、鋏を突き出しつつ閉じ、軌道上に居たプレイヤー、70名近くを切断……否、粉砕した。 >そして、完全に粉砕が終わったところで、強烈な破裂音が周…
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