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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
7章:『理法揺凝の呪海』
423/1000

423:デンプレロ・ムカッケツ-1

本日よりしばらくの間、一日二話更新となります。

こちらは一話目です。

「……」

『気合は十分と言う感じでチュね』

 金曜日。

 私は開戦予定時刻リアル10分前にログインした。


「ちゃんと待てているようね」

『そりゃあそうでチュよ。個人でどうにか出来るなんて、誰も思っていないでチュ』

 前日に『笑み乾く行進の呪地』の各所へ配置した眼球ゴーレムの状態は問題なし。

 私の視界に昨日と変わらない様子のデンプレロが映っている。

 今回の戦闘に参加するリーダー格のプレイヤーに持たせておいたネズミゴーレムたちも問題なし。

 彼らは既に『笑み乾く行進の呪地』に入り、襲ってくる影法師たちを倒しつつ、100人程度を一塊として、戦闘の開始を待っている。


「じゃあ行きましょうか」

 『笑み乾く行進の呪地』に入った私はその場で飛び上がると、デンプレロの方へと真っ直ぐに飛んでいく。

 カースである私は影法師たちから攻撃対象に見られていないので、道中に問題はない。

 そうして私自身の目で捉えたデンプレロの周囲には、プレイヤーが三集団居る。

 恐らくだが彼らが最初にメインで戦う事になるだろう。

 見知った顔は……ザリアたちとマントデアが居るか。

 なら、前線は任せて大丈夫だろう。


『時間でチュ』

「全員に通達。仕掛けるわ。ysion(イシオン)沈黙の邪眼・2(タルウィセーレ)』!」

 時間だ。

 私は事前の打ち合わせ通り、呪詛の星と種を放ち、それがデンプレロに重なったところで『沈黙の邪眼・2』を発動。

 『呪法(アドン)方違詠唱(ハイキャスト)』、『呪法(アドン)破壊星(ミーティア)』、『呪法(アドン)感染蔓(スプレッド)』を乗せた一撃はデンプレロに直撃し、橙色の蔓がデンプレロの全身へと絡みついていく。


「!?」

≪超大型ボス『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツとの共同戦闘を開始します。現在の参加人数は1,832人です≫

 与えた状態異常は沈黙(58,115)。

 流石にこれほどのスタック値となると、状態異常だけでも攻撃と認識されるのだろう。

 デンプレロが私の存在に気づくと同時に戦闘開始を告げるアナウンスが流れる。


「全員構えなさい!」

「奴らが来るぞ!」

「冷静に進めていくぞ!!」

「ーーーーー!」

 そして直ぐにデンプレロは声にならない叫び声を上げ、『笑み乾く乾燥の呪地』全域に変化が生じる。


『呪詛濃度の上昇。湿度の低下。気温の上昇を確認でチュ』

 一つはザリチュが観測した通り。

 デンプレロの全身についている突起から空気の吸入と排出を行って、空気を変化させていく。

 だが、沈黙の状態異常が効いているのか、超大型ボスのカースがやっているにしては変化のスピードが遅い。

 いや、スタック値が五万を超えるような沈黙……空気を動かす事を阻害する状態異常を受けているのに、空気を動かせる時点で十分規格外か。

 それと私たちには関係ないが、『砂漠のお守り』もたぶん、このタイミングで無効化されている。


「「「ーーーーー!!」」」

「もぎりの蠍呪だ!」

「1集団につき500は出て来ると踏んでおけ!」

「デンプレロ本体はこいつらを仕留めてからよ!」

 二つ目の変化。

 各プレイヤーの周囲の砂地から、四本腕、六本足の蠍の尾を持った人型のカース……もぎりの蠍呪が大量に出現し、最初からいる影法師たちと一緒に、近くに居るプレイヤーに向かって突撃を始める。


『乗り切れるでチュかね?』

「乗り切ってもらわないと困るわ」

 私はもぎりの蠍呪の遠距離攻撃手段が貧弱なので放置するが、他のプレイヤーたちがデンプレロと戦うためには、まずは奴らを危なげなく処理してもらわなければならない。


「ーーー!」

「さあ来るわよ」

『でチュね』

 そして三つ目の変化。

 デンプレロの戦闘行動の開始。

 デンプレロは尾の先端付近に付いている突起から大量の空気を吸い込んで力を溜め、針の先端を私に向けている。

 前回の蹂躙劇で私の上半身を消し飛ばした攻撃だ。


「ーーー!」

 デンプレロの尾から紫色のビームが放たれる。


「そう簡単に受ける気はないわ!」

 私はそれを素早く飛び回る事で避ける。

 そして、ある程度距離が出来たところで呪詛の槍を生成してデンプレロに飛ばす。


etoditna(エトディトナ)毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』!」

「ーーー!」

 デンプレロに与えた状態異常は毒(483)。

 デンプレロは毒耐性を持っているし、十分な数字だろう。

 ただ、衝撃も何もないから、デンプレロは変わらず紫色のビームを放ち続け、私はそれを避け続ける。

 そうして10秒ほど経ったところで、ようやく紫色のビームが止まり、私も一呼吸つく。


「状況は……まだまだかかりそうね」

『500近い数のカースを10秒で殲滅なんて出来る方が少ないでチュよ』

 状況確認。

 他のプレイヤーたちはまだもぎりの蠍呪と戦闘中と言うか、ちょうど開戦。

 デンプレロは……突起から強烈な風を乗せて砂を吹き出し、私への攻撃を狙っているが、沈黙の効果もあって回避は容易。


「しばらくは毒と沈黙、可能なら暗闇を重ねていく方針で動くわよ」

『分かったでチュ』

 これならば予定通りに動けばいいだろう。

 現状の私の役目は他プレイヤーが着くまでは攻撃回避を主体として、適度に状態異常を打ち込み、この場にデンプレロを留める事だ。

 なにせ今回戦うデンプレロは大量の取り巻きを従えているモンスターであり、相応の質と数が必須の相手。

 私一人で戦えるようなカースではないのだから。

02/11誤字訂正

02/12誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] まだここまでしか見てないけど、タルがすべきだったのはクラゲの時みたいに安定したデバフと行動阻害、毒による蓄積、全体の大まかな指示。で、毒殺とかで倒せたワームが例外ですよね?あとカウンター防止…
[気になる点] >紫色のビームを放ちつ受け、私はそれを避け続ける。 放ち続け、の誤字っぽい? [一言] 連続更新お疲れ様です。
[一言] もしも狐が横槍を入れてくるなら、タルがザイゲリマンを放つ瞬間かカース討伐まであと少しという時にだろうな。 片方は、悪創様にタルが土下座してたから何かしら切り札と関係があって次外せば面白い事に…
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