420:テリブルデイ-6
「さて、ちょっと確認しておきましょうか」
呪詛濃度21の空間を維持してプレイヤーの選別を行いつつ、私は自分に『鑑定のルーペ』を使う。
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『虹瞳の不老不死呪』・タル レベル26
HP:1,037/1,250
満腹度:142/150
干渉力:125
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の達人』、『灼熱の名手』、『沈黙使い』、『出血の達人』、『淀縛使い』、『恐怖の名手』、『小人使い』、『暗闇使い』、『乾燥使い』、『魅了使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『3rdナイトメアメダル-赤』、『七つの大呪を利する者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『偽神呪との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』、『海侵入許可証』、『いずれも選ばなかったもの』、『呪海渡りの呪人』、『泡沫の世界の探索者』、『悪創:変圧の蠍呪Lv.0』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・2』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・2』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『魅了の邪眼・1』、『石化の邪眼・1』、『重石の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・原始呪術:
『不老不死-活性』、『不老不死-抑制』、『風化-活性』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』、『化身』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『渇鼠の帽子呪』ザリチュ、『太陽に捧げる蛇蝎杖』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール、呪詛貯蓄ツール×5設置
システム強化
呪怨台参式・呪詛の枝、BGM再生機能、回復の水-2、結界扉-2、セーフティ-2
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『悪創:変圧の蠍呪Lv.0』
効果:『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツの所在と状態が分かる
条件:『悪創の偽神呪』が付与する
『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツは世界を一度滅ぼした。
その事実はなかったことにされたが、これほどのカースを放置する事はもはや許されない。
故に、この呪いは『変圧の蠍呪』デンプレロ・ムカッケツが一度死ぬまで消える事はない。
それはそれとして、敵を目の前に呆けるとはいい度胸だなぁ。
次に情けない姿を晒したら、『禁忌・虹色の狂眼』の剥奪も考えなければいけないので、頑張るように。
▽▽▽▽▽
「……」
『なんかすごく私的なメッセージが混ざっているでチュね……』
まさかこんな所に個人的なメッセージが仕込まれているとは思わなかった。
流石は『悪創の偽神呪』と言うべきなのかもしれないが、とりあえず頑張る理由は増えてしまったようだ。
「タル? どうかしたの?」
「何でもないから大丈夫よ」
私はザリアに何でもないと返しつつ、選別の様子を見る。
今のところは順調で、呪詛濃度21の空間に入ったプレイヤーは全員問題なくその先の空間に抜け、対策装備を手にすると、20人一組程度の集団になってから砂漠へと駆け出していく。
まあ、此処に来る時点で掲示板できちんと情報を収集している上に、今回の件に対する危機感を抱いているプレイヤーなので、当然の結果か。
文句を言ってくるプレイヤーも予想に反して現状では一人も出ていない。
「ならいいけど。それと確認だけど、タルは現地に直接飛べるのよね?」
「ええ、試してないから絶対ではないけれど、問題なくいけるはず。この後に一度試してみるから、その時ついでに聖女様お手製の釘も刺して、安全も確保してくるわ」
私の移動については『理法揺凝の呪海』を経由して直接乗り込む予定。
乗り込む際には釘も使い、これでもしも釘が『理法揺凝の呪海』に残るなら、私以外にはまず釘を抜けなくなるので、安全は完全に確保されるだろう。
なお、釘の対象には私も含まれるが、境界を超えるのが難しくなるだけで不可能ではないので、少々の無茶で境界を越えたり、釘の回収が出来る事は確認済みである。
「確か、デンプレロの領域には結界扉もあるのよね?」
「あるわ。私も使った事がある。ただ、貰った動画を見る限りでは、戦闘開始と同時に消え去って、出ることは出来ても、入る事は出来なくなるようだけど」
そう言うとザリアは今回の作戦会議用に立てられたスレにて、名前を出しているプレイヤーによって上げられた一本の動画を再生し始める。
動画の撮影者は『かませ狐』の一人であり、デンプレロを活性化した張本人たちの一人でもある。
が、彼の『悪創』はLv.1に収まっている。
と言うのもだ。
「この動画。フェーズ1でデンプレロがどう動くかを示してくれる貴重な資料だけど、それ以上にLv.2以上の『悪創』持ちがどういう人間かもよく表しているわよね……」
「そうね。Lv.3持ちがなんでLv.3持ちにされたのかもよく分かるわ」
撮影者の彼はデンプレロを活性化させたが、活性化後にはとても真面目に、懸命に戦っていた。
結果こそ敗北ではあったが、それでも彼はあの時の私と違って、諦めずに戦い抜いた。
デンプレロの危険性を察し、その後も悔いて、だからこそのLv.1だった。
ではLv.2持ちは?
まだ更生の見込みはあるのだろう。
仮に更生する気はなくとも、状況次第では一緒にゲームをしたいと思える。
詳細は省くが、そんな感じだった。
と言うかLv.3持ちになった連中が酷過ぎる。
わざとのFFや、仲間を囮にすると言った行為どころではない。
懸命に戦っているプレイヤーに対する罵倒に嘲笑、運営への暴言、その他諸々ハラスメント行為に抵触しそうな言動の数々。
一言でまとめるなら、他人に冷や水を掛ける事で愉悦に浸る救いようのないクズ共だった。
正直、彼らの言動を見聞きしているだけで、気分が悪くなってくる。
Lv.3持ちは誰もあれ以降ログインしていないそうだが、二度と『CNP』にログインしないでくれと言うのが、大多数のプレイヤーの意見になるだろう。
ぶっちゃけ、『悪創の偽神呪』と運営グッジョブと称賛を送りたい。
「ま、奴らについては無視しましょう」
「そうね。重要なのはデンプレロの攻略方法よ」
「とりあえずだけど、念のために沈黙の状態異常回復手段は用意しておいて」
「え? なんで? 有効なんでしょう?」
「何日か前の事だけど、有効だからと言ってとある状態異常を付与したら、酷い目にあった事があるのよ……」
「ああ、なるほど……」
やがて作戦はまとまり、選別も済んだ。
挑むプレイヤーの予定数は2,000人弱。
決行は明日の朝10時から。
そして私は『理法揺凝の呪海』へと向かった。
02/08誤字訂正