412:サーチデザート-2
「なんか城の尖塔っぽいものがあるでチュね」
「っぽいじゃなくて、事実として城があったらしいわよ」
「そうなんでチュか?」
「ブラクロが言っていたじゃない」
さて、怪しげなプレイヤーの後を追うが、急ぎはしない。
雑魚を適当に処理しつつ、気になるものを見つつだ。
どうせ隠れて追うなんて呪詛濃度の都合で出来ないし。
「ブラクロが……ああ、イベント中に話していた奴でチュね」
「そうそう」
さて、折角なので『皆乾かしの砂漠』について少し振り返るとしよう。
『皆乾かしの砂漠』は、第一マップの西に存在し、『試練・砂漠への門』を超えて入るのが通常ルートとなる。
マップの全域に乾燥を促進させる呪いが蔓延していると共に、昼夜の変化に合わせて、南の火山から熱気を、北の雪山から冷気を取り込んで広げ、適性と対策がないものを殺傷する仕掛けがある。
また、呪いではなく単純な物理の話として、砂の足場は足を取られて移動がしづらいし、時折吹く強風によって砂が巻き上げられて視界を制限してくると言う厄介な面がある。
「『皆乾かしの砂漠』のダンジョンの一部は、まるで遊園地のアトラクションのようである。これが当初攻略組が抱いていた感想だが、実際はアトラクションのようではなく、アトラクションだった。だったでチュか」
「ちゃんと覚えているじゃない」
そんな『皆乾かしの砂漠』の表面を覆うのは一面の乾いた岩と砂。
正確に言えば、『試練・砂漠への門』近くには岩を主体とした砂漠が多く、西に進むほどに砂を主体とした砂漠に変わっていく。
そして、私たちが居る辺りにまで来ると、まるで海の水のようにサラサラとした砂に変わった部分が出てきて、迂闊に足を踏み入れるとそのまま砂の底に引きずり込まれたりするらしい。
地表から数センチとは言え、空を飛んで移動する私とザリチュには無関係の話だが。
「そう。ザリチュの覚えている通り、砂漠のダンジョンの一部はアトラクションだった。かつてこの地に存在し、けれど今となっては砂の海の下に沈んでしまったけれど、この地には遊園地があった。そして、砂漠のダンジョンの一部は遊園地のアトラクションを基にしたダンジョンだったのよ」
砂の海に適応した魚型モンスターが飛びかかってくる。
が、ザリチュが切り裂いて、『風化』の呪いによって大きめの鱗一枚だけが残され、一応回収する。
なお、此処までにも似たような感じで襲われているが、どれもザリチュが一蹴している。
「つまり『岩山駆ける鉄の箱』はそのままジェットコースターでチュか」
「ついでに言えば『稲妻走らせる鉄塔の森』は発電所だったわけね」
ただまあ、遊園地と言ってもそんなに明るいものではない。
『CNP』世界の滅びた前文明……呪いと言うものの利用を考え出した文明が作り出した遊園地なので、遊んでいる者たちにとっては楽しいものだったかもしれないが、陰の部分は現実よりもはるかに暗い。
「そして変電の鰻呪は発電機の一部と言うか最重要パーツだった」
「そう言えば、そんなことを言っていたでチュねぇ」
具体例としては変電の鰻呪だ。
変電の鰻呪の基と言うか、根幹になっているのは、あの発電所で燃料のように使われていた人間だ。
他人が楽しそうにしている事へ嫉妬し、妬み、怨み、負の感情を生み出して放出する人間を、負の感情を電気に変える檻に閉じ込め、そんな人間に自分が作った電気で人々が楽しんでいる光景を見せて更なる電気を得る。
サクリベス地下の聖浄区画で行われていたものと同じで、非人道的でありつつも効率だけは良さそうなシステムである。
私は気に入らないタイプの効率さだが。
「ブラクロは詳細を敢えてぼかしていたけど、結構直接的な物とか、文章でしっかりと書かれた物とかもあったみたいね」
「あのぼかしはたるうぃの未知好きに配慮してって感じだったでチュけどね」
まあ、そんなわけでだ。
地上は正に乾ききった砂漠と言う感じの『皆乾かしの砂漠』だが、ダンジョンと言う形で砂の中に潜れば、当時を思わせる光景が広がっている事があり、そう言った光景が広がっているダンジョンからは更なる奥地へ……蠍型の超大型ボスがいる領域へと進むことが出来るらしい。
なお、その領域には超大型ボス以外にも小型のカース……『熱樹渇泥の呪界』の雑魚カースに比べるとかなり弱く、実際にはカースモドキあるいはカースになる前の私のような高異形度存在と呼ぶべきモンスターが居て、イベント前に最前線組が狩っていたのがこの辺であるらしい。
たぶん、カロエ・シマイルナムンの時で言うところの、完全に異形と化していた人間のようなものだろう。
「さて、この辺だったわね」
「この辺でチュか」
そんな感じに情報を思い返している内に目的地に到着。
上から見ていた時には、確かにこの辺に怪しいプレイヤーが居た。
「何もないでチュねぇ」
「足跡は風で消されちゃったし、目に映る範囲には姿もダンジョンもなし。匂いは?」
「んー……微かには残っているでチュが、追えるほどではないでチュね」
が、辿り着いたそこには何もなかった。
一応、呪詛支配を強める事で、周囲に呪いに関わる何かがないか精査もしてみるが、引っかかるものは特になし。
匂いがあったことからして、本当に何もなかったわけではないだろうが、イベントの類ではなかったようだ。
「折角だから、毛皮袋いっぱいに砂を回収していったらどうでチュ? 飢渇の毒砂だと逆に良くない状況とかもあるかもしれないでチュよ」
「そうね。邪眼術補助用の眼球ゴーレムなら飢渇の毒砂で作る必要性もないし、そうしましょうか。ああでも、袋に入れるのはゴーレムの形にしてからね。砂のまま回収は面倒だし」
「分かったでチュ」
とりあえずせっかくここまで来たのだからと言う事で、周囲の砂を『眼球』で眼球ゴーレムに変えつつ、私たちは移動を再開する。
そうしている間にダンジョンの外にまでキャンプが広げられている場所を見つけたので、私はそちらへと近づいていった。




