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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
7章:『理法揺凝の呪海』

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405/1000

405:タルウィスタン・2-1

「さて、帰って来たわね」

『でチュね』

 『ダマーヴァンド』に帰ってきた私は早速今回の探索の成果を毛皮袋の外に出す。

 そして、生産設備の一部……金属を使っている部分に対するアップデートを呪鉄骨で開始する。


『呪いを弾く鉄骨についてはどうするでチュか?』

「後でザリアに渡して、聖女様に届けてもらうわ」

 ザリアにメッセージを送る。

 返信は……直ぐにはなさそうなので、あるまで待つとしよう。


「ザリチュ」

『チャージは終わっているでチュよ』

「よろしい。『(ザリチュラット)』」

 では次。

 渇砂操作術の『鼠』を発動して、ネズミ型ゴーレムを作成。

 第四階層に行ってもらい、この後に使う素材の回収を進めてもらう。


「クールタイムが明ける度に『眼球(ザリチュサイト)』と『(ザリチュラット)』を使って、どっちも20ぐらいまでは量産していくわよ」

『『化身(ザリチュアバタ)』はどうでチュか?』

「今日はもう戦闘をする気はないから無しで」

『まあ、それなら仕方がないでチュね』

 その後もネズミ型ゴーレムと眼球ゴーレムを作成。

 眼球ゴーレムの一部については『ダマーヴァンド』の各所……『熱樹渇泥の呪界』や各階層の入り口と言った要所に設置しておく。

 なお、設置場所はそう簡単には見つからないような位置にしておく。

 見つかって壊されるならまだいい方で、呼び出しベルのような使い方をされると面倒だからだ。


「さて、加工を始めましょうか」

 では、久しぶりの動画撮影を始めつつ、変電の鰻呪の骨片の加工も始めよう。


「まずはこの粉砕機ね」

『早速のイベント報酬でチュね』

 骨片を適当な大きさかつ頑丈な器に投入し、少量の毒液を一緒に入れる。

 その状態で粉砕機……金属製のハンマーを自動で繰り返し振り下ろし、器の中の物を砕いていく機械にかけて、骨片を粉状になるまで砕いていく。

 なお、この粉砕機含め、イベントで得た機材の大半は大気中の呪詛を取り込んで稼働するので、非常にローコストである。


『たるうぃ。花を集め終わったでチュよ』

「ありがとうザリチュ」

 骨片を砕いている間に、ネズミ型ゴーレムで集めた花を処理する。

 花をある程度の大きさになるぐらいに刻み、刻んだそれをミキサーにかけて細かくしていく。

 そうして花弁、がく、花の蜜、花粉等々が混ざり合った液体を容器に移していく。


『確か舐めると気絶(1)が付与されたり、舌が痺れたりする花の蜜でチュよね』

「ええそうよ。と言う訳でこれで遠心分離器にかけます」

 容器に移したそれを遠心分離器にかける。

 これでそれぞれの重さに分かれる形で、花の構成物を分けることが出来る。

 いや、重さだけではなく、呪いの量の差も分離に当たっては影響が出そうか。

 とにかくやってみよう。


「さて、骨片は骨粉になったわね」

『でチュね』

 遠心分離には時間がかかるので、その間に骨粉の処理を進める。

 粉砕機を止めて器を回収。

 粉になった骨に対して、『呪法(アドン)貫通槍(ピアース)』の強制変換込みの『毒の邪眼・2(タルウィベーノ)』を撃ち込み、骨粉を毒液へと溶かしていく。


『遠心分離が終わったでチュね』

「そうね。じゃあ回収」

 遠心分離が終わった花を静かに機材から取り出す。

 うん、ちゃんと固形物、複数種類の液体と言う感じで分かれている。

 と言う訳で、それぞれの液体ごとに別の容器に移し取って、それぞれの性質を確かめていく。


「これがそうね。一番甘いし、痺れた。何より呪いが濃い」

『でチュか』

 やはり構成物だけでなく、含んでいる呪いの濃さによる影響も受けてそうだ。

 明らかに一つだけ濃い液体があった。

 と言う訳で、この液体を使用。

 他の液体と固体については、廃棄に回しておく。


「じゃあ、骨粉と蜜と……『死退灰帰』も一回分混ぜましょうか」

『マジでチュか』

「マジでチュよ。あ、スパイス系統も幾らか混ぜるわね」

『てか、スパイスよりも遥かに拙いものが混ざっているんでチュけど!?』

 これまでに作った二つの液体、一回分の『死退灰帰』、幾らかのスパイス、これら全てを混ぜ合わせた上で、電極を投入。

 高圧電流によって煮詰めていく。

 うん、いい感じのトロトロ具合である。


「んー……飢渇芋ね」

『マジでチュか』

「二回目よ」

『たるうぃが悪いんでチュよ』

 では次。

 飢渇芋を適度な大きさに刻み、ズワム油で炒めてカリッとさせる。

 サツマイモではなくジャガイモに近い食べ物だが、まあ大丈夫だろう。


「この二つを混ぜ合わせてー、良く絡めてー、『灼熱の邪眼・2(タルウィスコド)』」

『匂いはいい感じでチュね。後、さらっと邪眼術を混ぜるのはどうなんでチュか……』

 はい、さっき作った蜜と炒めた飢渇芋をよく絡め、『灼熱の邪眼・2』によって加熱していく。

 そうして出来上がったものを皿に乗せる。

 見ての通り、大学芋モドキである。


「さて呪いましょうか」

『そう言えば、本番はある意味此処からだったでチュね……』

 大学芋モドキの粗熱が取れるまでに、これまでに使った機材の掃除や洗い物を済ませておく。

 では呪怨台である。


「私は第一の位階より、第二の位階に踏み入る事を求めている」

 割と久しぶりな気がするが、油断なく進めていこう。

 集まってくる呪詛の霧に干渉して、転写と蠱毒の呪いが中心になるようにする。

 経験値? 新たな邪眼の為なら捨てますとも。


「私は、私がこれまでに積み重ねてきた結果生まれてきたもの、気絶を扱う生ける呪いの力、それらを知る事で歩を進めたいと願っている」

 さあ、未知を得るために足を進めよう。


「私の気絶をもたらす鮮やかなる黄の眼に変質の時よ来たれ。望む力を得るために私は稲妻を食らう。我が身を以って与える雷を知り、喰らい、己の力とする」

 レモン色の幾何学模様が生じ、稲妻が周囲に放たれ、空気が弾ける音が響き渡る。


「どうか私に機会を。意志あるものも、意思なきものも切り裂いて、刹那を空白で埋める。更なる輝きを得た気絶の邪眼を手にする機会を」

 最後の言葉と同時に私は距離を取り、『呪法・貫通槍』を乗せた『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』を撃ち込む。

 するとまるで雷が落ちたかのように閃光が迸り、空気が割れ、周囲に焦げ臭い匂いが漂う。

 そして、それと同時に呪怨台を覆っていた呪詛の霧は晴れ、後には呪怨台に乗せる前よりも表面のつややかさが増した大学芋が乗っていた。


「よし完成ね」

『みたいでチュね』

 では動画の記録を終えて、鑑定。



△△△△△

呪術『気絶の邪眼・2』の大学芋

レベル:25

耐久度:100/100

干渉力:120

浸食率:100/100

異形度:17


呪われた蜜が絡まった大学芋。

覚悟が出来たならば、口へと運ぶがいい。

そうすれば、君が望む呪いが身に付く事だろう。

だが、試されるのは覚悟だけではなく、君自身の器もである。

さあ、十分に腹を満たしてから挑むといい。

▽▽▽▽▽



『そう言えば、飢渇芋を使っているから、食べるとむしろ腹が空くんでチュね』

「そうなるわね。折角使った以上は何かプラスの作用でもあればいいんだけど……まあ、それは食べてからにするべきね」

 問題なく出来上がったようだ。

 と言う訳で、フレーバーテキスト通りに満腹度はきっちり最大値まで回復しておく。

 その上で周囲に危険物がないことを確認し、倒れても大丈夫な状態にしてから、口へと運ぶ。


「あまう……」

 そして一口食べて、感想を口に出そうとした瞬間。

 脳裏に閃光のような物が瞬いたかと思ったら、私は精神世界へと移動していた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 洗い物ってどうやって洗ってるんだろう。毒液で毒洗いだろうか。ズワムの油と灰から石鹸作れそう、路削ぎの力で汚れがキレイさっぱり消滅しそう
[良い点] 更新乙い [一言] >>たるうぃが悪いんでチュよ まちかどでは会いたくないなぁ まちかどにいるだけで、ハザードだしなあ
[一言] ≫意志あるものも、意思なきものも切り裂いて、刹那を空白で埋める もうスタンってレベルじゃないなそれw かゆうま もといあまうま?
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