398:サンダーアンドアイアン-2
「よいしょっと」
私は崩れた鉄塔の中から、毛皮袋に収まるサイズの鉄骨を選び出すと、毛皮袋の中に収めていく。
『この状況でよくそんな事をしていられるでチュね……』
「折角だもの。採れるものは採っておくべきよ」
そして、砕けた鉄塔の欠片を拾うと、『鑑定のルーペ』を向ける。
何処に脱出のヒントがあるか分からない以上、鑑定の機会は見逃さない方がいい。
△△△△△
鉄骨
レベル:10
耐久度:32/100
干渉力:110
浸食率:100/100
異形度:5
建材として加工された鉄骨。
大量の呪いが含まれており、通常の鉄よりも堅く、電気を適切に流しやすい。
▽▽▽▽▽
「んー?」
触れた感じでは呪界並の素材と感じていたのだが、鑑定結果が微妙な感じだ。
フレーバーテキストもそうだが、レベルと干渉力が低い。
「ちょっと撒いてみて……」
私は呪詛支配領域を狭める代わりに精査をしてみる。
すると、鉄骨の場所によって周囲の呪詛を拒否したり、吸い取ったり、何も反応が無かったりと、反応が分かれているようだった。
「なるほど。一部だけなのかしらね」
『この反応の不均一具合も、このダンジョンが成立できなかった原因の一つかもしれないでチュねぇ』
とりあえず、一つずつ鑑定してみる。
何も反応がないのは先程の鑑定結果。
他のは……
△△△△△
鉄骨
レベル:1
耐久度:27/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:1
建材として加工された鉄骨。
呪いを弾く性質を持つが、他はただの鉄である。
▽▽▽▽▽
△△△△△
鉄骨
レベル:14
耐久度:45/87
干渉力:113
浸食率:100/100
異形度:7
建材として加工された鉄骨。
大量の呪いを吸い込んで一部としたが、耐久度などに劣化が生じている。
▽▽▽▽▽
「んー、見事に不均一ねぇ……」
これはザリチュの言う通りかもしれない。
鉄骨一つでも場所によってこれほどの差があるのでは、耐久度などにも差が生じる事になる。
となれば、場所によってはすぐ壊れるを何度も繰り返す事になるだろう。
それはそのままダンジョンを維持するために必要な呪詛を浪費する事に繋がる。
それでも収入を増やせば、維持は出来たのだろうが……それも上手くいかなかったからこそ、今の状態なのだろう。
「とりあえず呪いを弾く鉄は積極回収で」
『その心は?』
「聖女様に売れそうじゃない?」
『また媚を売るんでチュかぁ……』
「媚を売るんじゃなくて、安全を買うのよ。向こうがどれほど私の事を嫌に思っていても、為政者として冷静に判断したら手を出せない。そういう風に持っていくのが適切よ。それに……」
『それに?』
「船の転覆が起きないようにするためには、こういう素材は重要だと思うのよね。予想だけど」
『でチュかぁ』
私はさっき毛皮袋に入れた鉄骨を出すと、どういう鉄骨なのかを確認。
呪いを弾くタイプだったので、再回収。
そして呪いを弾くタイプの鉄骨を、もう数十キログラム分は確保しておく。
「おっ、なるほど。これが私にとっての当たりね」
『呪いを纏う。でチュか』
私の視界に呪いを纏うようになっている鉄骨が入った。
ただし、鉄骨の全てではなく、一部だけだ。
重さにして数キログラム分と言うところか。
「ezeerf『灼熱の邪眼・2』」
『呪法・増幅剣』、『呪法・方違詠唱』の発動には成功。
どうやら、これぐらいの呪詛ならば集めても問題ないらしい。
そして、発動した『灼熱の邪眼・2』によって、元々耐久度が下がっていた鉄骨は難なく焼き切られた。
≪残り時間が9:15:47に短縮されました≫
「うげっ」
『呪術の使用は控えた方がいいでチュね。たるうぃ』
が、焼き切ると同時に残り時間短縮のアナウンス。
どうやら『灼熱の邪眼・2』程度の消費ですら影響が出てしまうほどに、この世界は限界が近いらしい。
「でも、使わないと回収が出来ないのよねぇ……ezeerf『灼熱の邪眼・2』」
『まあ、そうなんでチュが……』
≪残り時間が9:05:02に短縮されました≫
最初は10時間もあるから余裕だと思っていたが、原因排除にも呪術を使う事を考えると、これは案外余裕がないのかもしれない。
とりあえず回収した鉄骨の詳細を見ておこう。
△△△△△
呪鉄骨
レベル:25
耐久度:120/120
干渉力:125
浸食率:100/100
異形度:15
建材として加工された鉄骨。
導電性、耐久性、呪いの効率、いずれの面においても極めて優れた鉄であるが、呪詛を纏う姿から一般人には忌避されるものでもある。
大量の呪いを帯びた鉄は時には呪鉄とも呼ばれる。
▽▽▽▽▽
「うん、やっぱり当たりね」
『このダンジョン的にはこれが成功作だったんでチュかねぇ』
「恐らくはそうでしょうね」
数キログラム分しかないが、まあ、各種用具のアップグレードに使うだけなら、何とかはなるだろう。
『で、脱出のためのヒントは見つかったんでチュか?』
「そっちは……まあ、いずれ見つかると思うわよ。たぶん」
では探索再開。
呪詛支配領域を再び広げる。
それと同時に『ダマーヴァンド』から少し呪詛を引き出して周囲に開放してみるが……駄目か。
崩壊が決定づけられた時点で、先延ばし策はもう効かないと見ておこう。
『脱出できなかったら、今手に入れたアイテムも失うんでチュからね。急ぐでチュよ』
「分かっているから大丈夫よ。こういう時こそ慌てず騒がずでいかないとね」
おや、送電ケーブルに配電盤を発見。
ちょっと見に行ってみようか。
私はそちらへとゆっくり飛んで行った。




