392:ニューヒートサースト-3
「チュブラガァ!」
さて、足場から離れること暫く、リアル時間的には最後に戦ってからそんなに時間は経っていないのだが、主観的には久しぶりに戦う事になる毒頭尾の蜻蛉呪が鳴き声を上げつつ、私に向かってくる。
どうやらやる気満々のようだ。
「チュブラガ!」
「んー……etoditna『毒の邪眼・2』」
毒頭尾の蜻蛉呪は噛みつき、翅の斬撃、足による捕獲、毒尾による攻撃、とにかくどれか一つでも決まればいいと言わんばかりに突進をしてきた。
なので私はそれを回避しつつ、呪詛の剣を毒頭尾の蜻蛉呪へとすれ違いざまに飛ばして切り付け、詠唱キーと動作キーで邪眼術を発動。
発動した邪眼術は『毒の邪眼・2』、『恐怖の邪眼・3』、『重石の邪眼・2』で、目の数はいずれも四つずつ。
与えた状態異常は毒(195)、恐怖(330)、質量増大(2)、重力増大(39)。
「チュブ……ラ……アッ……」
「んー」
『戦闘勘、鈍っているでチュ?』
「かもしれないわね」
毒頭尾の蜻蛉呪の体は恐怖で震えると共に、重量が増えたことによって明らかに動きが鈍くなっている。
その為、空中で切り返す動きはゆっくりと言うか、失速による墜落寸前であるように見えるし、すれ違った後に上昇した私の動きについていくのもやっという感じだ。
これならば、もうこの毒頭尾の蜻蛉呪は脅威と言えないだろう。
それはいいのだが……毒の量を絞り過ぎたせいで、与えるダメージが微妙な物になってしまっている。
「んー……ちょっと戦闘勘を取り戻さないといけないわね。PvEとPvPじゃ、入れるべき状態異常の量と種類が違うのもそうだし、立ち回りも別物だから」
『分かったでチュ』
「チュブラ……ガゴァ!?」
毒頭尾の蜻蛉呪が噛みつこうとしてくる。
が、あまりにも緩慢な動きだったので、少し後ろに羽ばたいて口が噛み合わされたところでネツミテを振り下ろしてカウンターを決めると言う動きが難なく決まった。
えーと、毒の追加と干渉力低下が少しばかり、灼熱も一応入ったか。
「じゃ、追撃のetoditna『毒の邪眼・2』」
「ッ!?」
目八つ分の『毒の邪眼・2』を『呪法・増幅剣』、『呪法・方違詠唱』込みで撃ち込む。
これで毒(585)にまで増えた。
えーと、毒頭尾の蜻蛉呪のHPは12,000ちょっとだったはずだから、手早く倒すならもう少し重ねて、節約するなら後は逃げ回るだけでいいか。
「チュブラァ……」
「よし、時間かけましょうか。此処から先はネツミテで殴るだけにしましょう」
『あ、酷いことになるでチュね。これっチュああアアアァァァ!?』
戦闘勘を取り戻す事を考えるなら、時間をかけた方が丁度いいだろう。
『重石の邪眼・2』の効果が少しずつ消える事で、相手の動きが良くなるのも好都合だ。
と言うわけで、他の毒頭尾の蜻蛉呪を引っかけないように気を付けつつ、私はしばらく戦闘勘を取り戻すための追いかけっこに興じるのだった。
なお、変な事を言ったザリチュの事も久しぶりに抓っておく。
----------
「これでよし、と」
さて、毒頭尾の蜻蛉呪とのスパーリングを終えた私は、毒頭尾の蜻蛉呪の死体を丸ごと毛皮袋に収めた。
そこから上昇して、炎視の目玉呪を強襲し、遠距離戦のやり方を思い出しつつ、こちらも仕留め、回収。
続けて下降、飢渇の泥呪の回収もしつつ、喉枯れの縛蔓呪と綱引きをしつつ戦って仕留め、これも回収。
飢渇の泥呪の跳ねてこない位置にまで移動した。
戦闘勘は……だいぶ戻って来たと思う。
「んー、いい感じの回収具合ね」
ちなみに、此処までに私以外の飛行能力持ちプレイヤーの姿も、六人一組になって行動、毒頭尾の蜻蛉呪と戦っているのを一度見かけている。
私以外でズワムや熱拍の樹呪に手を出すとしたら、まずは彼らになるのだろうか?
まあ、毒頭尾の蜻蛉呪相手に苦戦している内は無理だとは思うが、少し気になる。
『あ、原始呪術は使っていないでチュよね』
「そりゃあそうよ」
なお、今回の戦闘勘を取り戻す戦いは、経験値稼ぎも兼ねているので、経験値に影響が出る原始呪術は使っていない。
おかげで、結構HPの消費が激しい事になっている。
「うーん、いずれ最大HPを増やすと言うか、呪術でのHP消費を肩代わりしてくれるアイテムの開発とかも考えた方がいいのかしらね?」
『まあ、考えてもいいんじゃないでチュか?』
私は一度広場に戻ってくると、結界扉の中に入り、そのまま『ダマーヴァンド』第五階層に移動。
カースの復活に関わる部位を持ち出せないと言う『熱樹渇泥の呪界』にかかっている制限は私にはかけていないので、問題なく移動できるのだ。
「これでよし、と」
そして第五階層に移動した私は、手に入れたカースの死体を早速解体。
危険な物は『灼熱の邪眼・2』で焼却するか、安全な状態になるように処理しつつ、アップデートに必要な素材の対象が木材でない道具類のアップデートを進めていく。
『次はどうするでチュ?』
「熱拍の幼樹呪を狩りに……いえ、折角だからあっちの検証もしましょうか」
『ああ、あの検証でチュか。まあ、ほぼ間違いなく、たるうぃの予想通りになると思うんでチュけどね』
作業が終わったところで再び『熱樹渇泥の呪界』へと思ったが……折角なので、あの件について確かめておくとしよう。
と言うわけで『飢渇の毒砂』を集めてある部屋に移動。
「『化身』」
「ん、問題なく成功でチュね」
イベントで作成した時と同じ姿をしたザリチュの化身ゴーレムを作成して、それから『熱樹渇泥の呪界』へと向かった。
01/13誤字訂正




