385:3rdナイトメア7thデイT-13
「あああぁぁぁ……おぶぅ」
『やられたでチュねぇ』
倒されるにしても、良い倒され方と言うものがある。
と言うわけで、残されるクカタチの事も考えて、出来るだけあの場の白黒陣営のプレイヤーにプレッシャーがかかるように私は倒された。
そして倒されたので、赤陣営の待機部屋に飛ばされ……そこで五体投地である。
うん、脱力。
立ち上がる気力はちょっと起きない。
「ええ、見事にやられたわ……クカタチたちには申し訳ないわね……」
『申し訳ない。でチュか』
「申し訳ない。でちゅよ」
『どうしてでチュか?』
まあ、起き上がる気力はなくとも、ザリチュとの反省会は出来るので、やろう。
「色々とあるわよー。まず単純にクカタチにかかる負荷が一気に増えた。残り時間からして倒されることはないかもだけど、砦を奪うことも出来ないわ」
『でチュね。でもレライエも居るでチュよ?』
中央の砦をクカタチ一人で奪うのはきつい。
レライエの支援があるとザリチュは言ってくれるが……。
「無理。私とザリチュが抜けた時点で、川上の砦への攻撃も激しくなる。レライエは防衛で手一杯になるわ」
『でチュかぁ』
レライエにそんな暇はない。
こう言っては何だが、数でごり押された時に赤陣営で一番きついのがレライエなのだ。
私が居なくなった時点で、先手先手の狙撃で敵を撃つことに専念せざるを得ない。
「スクナ、マントデア、ブラクロへの攻撃も当然ながら激しくなるわ」
『まあ、そうでチュね』
砦の数が同じである以上、何処の砦を奪っても勝利に繋がるのが現状だ。
となれば、スクナ、マントデア、ブラクロを倒す事で拠点を奪う事を考えるプレイヤーは必ず居るだろう。
つまり、この三人は……いや、ブラクロは拠点奪取に向かって動いてくれているか。
だが、マントデアとスクナは防衛に専念しないといけなくなった。
「一番きついのはアイムさんね。私の死に伴って赤の本営は無所属化。無所属になった拠点が再び何処かの所属になる際の裁定ってどうなっていると思う?」
『……。人数でチュか』
「ええそうよ。つまり、アイムさんは私が死んだ時点から、パーフェクトゲーム要求になってしまった。かなりキツイわよ」
アイムさんに至ってはパーフェクト要求のタワーディフェンスゲームの開幕である。
最悪、洞窟を崩して引き籠ると言う手段も使えるが、難易度が高いのは確かだ。
「他にも呪詛濃度の件とか、邪眼のばら撒きとか、大規模呪術の撃ち落としとか、私が居なくなった事で出来なくなったことは色々とある。これらを総合して考えると……最終日だからと言って私は前線に出ず、川上の砦辺りで後方支援に専念しておいた方が良かったんじゃね? と、思わなくもないのよねぇ……赤陣営の勝利を目指すとしておきながら、この結果は申し訳ないわよ」
『まあ、赤陣営の勝利。と言う事だけを考えるなら、それが最善手だったかもしれないでチュねぇ……』
うん、こうしてみると反省点は多々ある。
ぶっちゃけ、本気で勝利を目指すのであれば、もう少し戦略のエグさを上げるべきだったし、五日目六日目も積極的に動くべきだった。
七日目なんて、迎えさせないつもりで動くべきだったのだろう。
そうすれば、赤陣営の勝利は揺るがなかったに違いない。
『ちなみに赤陣営ではなくタル個人としては今回のイベントはどうだったでチュか?』
「勿論、大満足に決まっているわ」
とは言えだ。
「六日目までは改めて言うまでもなく。七日目に至っては白も黒も全力で勝ちを取りに来てくれた! ザリアに至っては私に何度倒されても諦めることなく、終いには敢えて呪いを利用しないただの化粧でもって私の目を誤魔化し、此処までの戦いで一度も見せた事のない呪術によって私を一度殺して見せたのよ! ああ素晴らしい! 素晴らしい未知だわ! 見た事がない呪術、呪法、アイテム、戦術、戦略、世界は見た事がないもので溢れている!!」
私個人の戦果に限れば大満足の結果である。
五体投地の姿勢から跳ね上がりつつ、回転、自分の事を抱きしめ、悶え、口がにやけてしまう程度には。
『歪みないでチュねぇ……』
「反省はするわ。それは新たな未知を見出す為に必要な物だもの。でも、この程度で後悔をして足を鈍らせる気はないわ。後悔をするのは、取り返しのつかない事をしてしまった時よ」
うん、反省はこれくらいにしておいて、今回のイベントのリザルトを確認してこう。
ポイントは……これまでの積み重ねの影響と、私以外の面々が頑張ってくれているおかげか、現在進行形で増え続けている。
まあ、今ある分だけでも、八割ほど消費するが、私が欲しいものはだいたい全部交換できるか。
「さて確認っと」
他の確認事項としては『魅了使い』の称号と『不老不死-抑制』の詳細か。
と言うわけで鑑定。
△△△△△
『魅了使い』
効果:魅了の付与確率上昇(微増)
条件:魅了(100)以上を与え、魅了の効果が残っている間に生物を殺害する。
私の魅了の力を見るがいい。
▽▽▽▽▽
「魅了はテンプレっと」
『たるうぃの使う魅了は正確には魅了(畏怖)でチュけど、変わらないんでチュね』
『魅了使い』はいつも通りと。
重症化の効果が本人以上に動きが良くなる感じだったので、今後も使えそうなときは使うとしよう。
では、問題児。
△△△△△
『不老不死-抑制』
レベル:1
干渉力:100+発動者のレベル
CT:なし
トリガー:思考発動
効果:『七つの大呪』の一つ、『不老不死』の呪いを抑制化させる。
『不老不死』の呪いとはこの世を為す七つの呪いの内の一つである。
呪人を呪人とする為の呪いであり、この呪いの保有者でありながら、この呪いを抑えようなど不忠、傲慢以外の何物でもない。
故に汝に出来るのは己の楔を緩める事と引き換えに、他者の楔を緩める謙虚な振る舞いまでである。
最も新しき大呪であり、維持と変化、相反する要素を兼ね合わせる。
▽▽▽▽▽
「ま、そうよね」
『明らかに経験値を吸われていたでチュからねぇ。でも以前にも似たようなことをしていた気がするんでチュけど?』
「たぶん、邪魔の仕方の問題なんでしょうね。『不老不死』の呪いを持っていない相手へ新たに働くのを止めるのと、既に持っている相手の呪いへ干渉するのは別物なんでしょう」
『でチュか』
やはり経験値は吸われていたらしい。
まあ、何処かで使い道はある事だろう。
「さて、そろそろイベント終了ね」
『クカタチたちは死に戻りせずに終わりそうでチュね』
確認終了。
これで残るはイベントの結果となるが……
≪赤の陣営、ブラクロが討伐されました。これ以上の復活は出来ません≫
「あいだぁっ!?」
「ブラクロェ……。いや、頑張った結果だけど」
『ブラクロェ……。まあ、五つ目の拠点確保に向かった結果でチュからねぇ……ざりちゅたちには文句は言えないでチュよ』
≪タイムアップ! イベント終了です! 獲得した拠点数が三陣営とも同じであるため、引き分けとなりました≫
五つ目の砦を手に入れるべく黒陣営へ単身突っ込んでいたブラクロが死に戻りしてきたところで、イベントは終了となったのだった。
しかし、ブラクロに対しては、何故ここまで頑張ったにも関わらず、なお微妙な感想を抱きたくなるのだろうか? 謎である。