382:3rdナイトメア7thデイT-11
本日二話目です
≪砦3-1を赤の陣営が獲得しました≫
≪砦1-1を赤の陣営が獲得しました≫
「「「!?」」」
イベント終了まで残り2時間。
素晴らしいタイミングで砦奪取のアナウンスが入った。
これで三陣営の砦所有数はいずれも4つであり、必然的に此処と川下にある砦が一番の激戦区になるだろう。
だがそれ以上に素晴らしいのは、これで私は増援を呼べると言う事。
『何時でもいいでチュよ。たるうぃ』
「『化身』!」
スクナと一緒に居た化身ゴーレムが崩れ落ちる。
渇砂操作術のチャージは完了済み。
私は躊躇わずに詠唱キーを唱え、周囲の砂が素早く一か所に集まって人の形を成す。
「チュラッハァッ!」
「くっ!?」
「あははははっ!」
「!?」
そして出現した化身ゴーレムは迷わずライトローズさんに蹴りかかって、壁へと叩きつける。
その間に私も行動開始。
状況の推移に呆けていた白陣営のプレイヤーの頭部をネツミテでぶち抜いてやる。
「さあ、もう一度だけ言ってあげる。第二ラウンドよ」
「此処からは二人がかりで行かせてもらうでチュよぉ」
正直に言えば状況は悪い。
今イベント中三度目の『化身』使用によって、私のHPは最大値の70%近くが削られ、満腹度も60%、干渉力も20%落ちている。
ここまで戦闘能力が落ちると、もはやマトモに立ち回って戦う事は難しい。
だからこそ私は笑みを浮かべて、周囲を威圧する。
「や、やってやらああぁぁ!」
「ザリチュ……」
「分かっているでチュよ!」
戦闘のメインはザリチュだ。
飛び込んできた白陣営のプレイヤーを一撃で切り伏せたザリチュの背中に私は立つと、周囲の状況を確認。
同時に復活に伴って消えていた呪詛の剣を自分の周囲に十数本生成して浮かばせておく。
「一度倒したならやれるはずだ!」
「ンな事わかってらぁ!!」
「ふふふふふ」
『呪法・増幅剣』込みの『毒の邪眼・2』、『淀縛の邪眼・1』、『魅了の邪眼・1』を周囲のプレイヤーへと動作キーでの発動を主体にして撃ち込んでいく。
満腹度を消費する邪眼は今の私にはコストが重いので、使いどころは見極めなければいけない。
「コギャッ!?」
「オンドリアの奴が魅了されたぞおおぉぉ!」
「ぶっ倒せ! 黒陣営なんだから元から敵だ!!」
しかし、私自身のステータスが落ちても、立ち回りはだいぶ楽になった。
残り時間と砦の奪取数的に『魅了の邪眼・1』を使いやすくなったのが一つ。
もう一つは……
「チュラッハァ!」
「くっ……毒が効かない上にこの攻撃力は……!」
やはりザリチュの存在が大きい。
ザリチュのステータスは万全で、私ともクカタチともタイプが大きく違うのが功を奏している。
おかげで、私対策もクカタチ対策も通じず、確実に敵を削り、私への負荷を軽くしてくれている。
今もライトリと切り結び、盾の内側に回り込んで切りつけ、致命傷を与えてくれた。
「むんっ!」
「うおっチュ!?」
む、砦にリスポーンする形でドージが来たか。
不意打ちの掌底は盾で防いだが、ドージの周囲は浄化術によって呪詛濃度が大きく下がるため、私の援護がしづらいだけでなく、ザリチュの動きも僅かにだが鈍る。
切りどころか。
「ザリチュ。合わせなさい」
「合わせるのはたるうぃでチュよ!」
「何をする気かは知らないが受けなければ問題は……っ!?」
ザリチュの剣に重ねる形で呪詛の剣を生成する。
ザリチュがドージに接近して切りつける。
ドージはその攻撃を後退する事で回避しようとするが、ザリチュも砂の体を生かして体をスライドさせて浅くだが刃を届かせる。
「ezeerf『灼熱の邪眼・2』」
「っ!?」
そして届きさえすれば問題はない。
私の『灼熱の邪眼・2』が発動して、ドージの体を焼く。
スクナと言う剣の達人の動きを再現できるザリチュの剣に合わせて動いたことで『呪法・増幅剣』の効果は大きく増し、爆炎がドージの体を包み込む。
ドージの体は大きく吹き飛ばされて、茹った川が見える穴の近くにまで行く。
よし、これでドージは倒した。
「このて……っ!?」
「がぶあっ!」
だってそこにはクカタチが居るのだから。
と言うわけで、クカタチがドージの事を噛み砕きつつ私たちと合流。
「範囲攻撃で……ぎゃっ!?」
「タルさんの状況は?」
「第二形態ってところかしらね。そっちは?」
「まだ大丈夫です。ちょっとキツくなってきましたけどね」
周囲の敵に対処しつつ情報交換。
クカタチはまだ『死退灰帰』を使っていないと。
他の赤陣営メンバーは……ブラクロがしばらく前に『死退灰帰』を使わされたようだ。
だが、私以外はまだまだ元気で、それぞれの役割をこなしてくれている、と。
「うーん、こうなってくるとやっぱり実力不足と言うか、近接戦闘能力の不足を痛感するわね……おっと、『重石の邪眼・2』」
「タルさんの場合は仕方がないと思いますよ。おっと!」
「助かったでチュよ。クカタチ」
各地の砦へ白黒両陣営から大規模呪術による攻撃が飛ぼうとしたので、『重石の邪眼・2』で潰しておく。
だがこれで眼球ゴーレムもほぼ全部壊れてしまったので、打ち止めか。
そしてその間も戦闘は行われ、ザリチュ対策を持つプレイヤーが現れて水球を放ってくる。
攻撃はクカタチが防いで、攻撃を放った隙を突く形でザリチュが攻撃、そのプレイヤーを倒してくれたが、危ないところだった。
「さあ、此処が踏ん張りどころね。中央砦、取らせてもらうわよ」
「はいっ!」
「やってやるでチュよぉ」
「負けるな! 赤陣営だって無敵じゃないんだ!」
「南で味方が頑張ってんだ! ここでやらなきゃ何時やるんだよ!」
私たちは再び敵への攻撃を開始した。